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ラグビー コラム 2024年7月8日

【ハイライト動画あり】新たな歴史作ったジャパン・フィフティーン、熱く、賢く、マオリ・オールブラックスから日本ラグビー史上初勝利

村上晃一ラグビーコラム by 村上 晃一
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原田 衛

日本ラグビーのレベルアップを実感する勝利だった。海外出身選手は先発で2名のみ。NO8サウマキ アマナキ、CTBサミソニ・トゥアがパワフルな突進で攻撃に起点になったが、SH齋藤直人、SO山沢拓也がゲームを操り、全員が倒れてもすぐに起き上がり、攻守に仕事をし続けた。気温は30度を超え、まとわりつくような暑さだったが、その戦いぶりは爽快だった。エディー・ジョーンズヘッドコーチ体制2期目の初白星は、日本チームが初めてマオリ・オールブラックス(マオリAB)を破る歴史的勝利でもあった。

7月6日(土)、リポビタンDチャレンジカップ2024 JAPAN XV対マオリAB戦は、豊田スタジアムに14,613人の観衆を集めた。午後6時、マオリABのキックオフで試合は始まった。第1戦は10-36で敗れたJAPAN XVは先発2名のみの変更で第2戦に臨んだ。立ち上がりはSO山沢拓也が相手陣へロングキックを蹴り込み、粘り強くディフェンスしながらチャンスを待った。

サミソニ ・トゥア

先制トライは前半10分だった。山沢のカウンターアタックでチャンスを作り、マオリABのゴールラインドロップアウトを切り返すと、FB矢崎由高が防御背後に好キック。WTB根塚洸雅が俊足を飛ばしてゴールラインに迫ると、反則を誘ってPKから齋藤がすかさずタップキック。左タッチライン沿いのトゥアにロングパスを送ると、トゥアが低い姿勢でインゴールに飛び込む。第1戦はチャンスを作りながらミスで得点できなかったが、最初のチャンスでトライを取り切ったことで、JAPAN XVは勢いに乗った。

「(蒸し暑い)きょうのコンディションでは自陣からフェイズを重ねるとミスが出る。上手くロングキックを使っていた」というエディー・ジョーンズHCの言葉通り、山沢は自陣からは原則ロングキックを選択し、攻め込むと防御背後へのキックを使いながらマオリABを後ろへ走らせた。スクラム、ラインアウトは安定し、ディフェンスも粘り強かった。パワフルなマオリABの突進をダブルタックルで押し戻し、一線を突破されてもすぐに戻ってロングゲインを許さなかった。

リポビタンDチャレンジカップ2024 ラグビー日本代表強化試合

【ハイライト動画】JAPAN XV vs. マオリ・オールブラックス

前半22分、山沢がPGを追加して8-0としたあとは、互いに攻め合い、守り合う互角の攻防が繰り広げられる。マオリABのCTBクイン・トゥパエアがジャッカルでボールを奪い返せば、JAPAN XVのHO原田衛もジャッカルでピンチを防ぐ。前半終了間際には交代出場のPR竹内柊平が相手の攻撃を反則でスローダウンさせたとしてシンビン(10分間の一時退場)となったが、前半はマオリABを無得点に抑えた。

後半序盤はマオリABの反撃を受ける。ラインアウトからモールを押し込まれ、HOカート・エクランドにトライされ、8-7と1点差に迫られた。しかし、JAPAN XVは冷静だった。10分に山沢がPGを決め、13分には矢崎のカウンターアタックからの連続攻撃で交代出場のNO8ティエナン・コストリー、CTB長田智希がゴールに迫り、ラックサイドから竹内が素早くボールを持ちだしてトライ。18-7とリードを広げた。

矢崎 由高

後半27分、再びモールからトライを返され、18-14と4点差に迫られたが、30分、山沢に代わって立川理道が登場。第1期エディージャパンの主力だったベテランがゲームを落ち着かせる。33分には山沢からプレースキッカーを引き継いだ矢崎がPGを決めて、21-14とし、交代出場のHO佐藤健次がモールの最後尾からトライをあげてダメを押した。早稲田大学在学中の2人が勝利を決める得点をあげ、最後は34歳の立川がボールを蹴り出してノーサイド。若手とベテランが一丸となって戦った試合を象徴する幕切れだった。

FL山本凱は先頭に立ってタックルを続け、桑野詠真小瀧尚弘の両LOほかFW陣は全員が献身的に働いた。BKもディフェンスで粘った。とくにCTB長田智希がスペースを埋める幅広い動き、無尽蔵のスタミナは目を見張るものがあった。スーパーラグビーで活躍するニュージーランドの精鋭に対して一歩も引かずに戦う日本の選手たち。その姿は日本ラグビー全体のレベルアップを感じさせるものだった。ジョーンズHCは会心の笑顔を見せた。「強いチームになっていくには、目の前の状況に順応することが大切です。きょうは、それがよくできていました。超速ラグビーはコンセプトであり、ボールをキープして攻め続けるなど一つのスタイルにこだわるものではありません」。

 

先発SH齋藤直人は言った。「きょうは80分間オンの状態でいられたのが良かったです。マオリの偉大さを知りながら新たな歴史を作るチャンスだと奮い立ちました」。熱く、賢い勝利にジョーンズHCはこの勝利の価値について問われると、「試合に勝つと自信がつくし、さらなるハードワークができます」と、今後のチーム作りにとって大きな勝利だと話した。

冬のニュージーランドからやってきたマオリABの選手たちにとっては過酷な環境だったが、共同キャプテンを務めたCTBラメカ・ポイヒピキャプテンは「たしかに暑かったのですが、イコールコンディションですし、その中でJAPAN XVがより良い試合をしたということです」と潔く語った。そして、試合後のロッカールームではマオリABとJAPAN XVの選手たちがビールを酌み交わして健闘をたたえ合った。

文:村上 晃一

村上晃一

村上 晃一

ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。

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