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ラグビー コラム 2024年6月21日

2連覇王者「南アフリカ代表」がW杯後初陣!元日本代表アタックコーチ、トニー・ブラウン コーチ参画の影響は?聖地トゥイッケナムで赤竜「ウェールズ代表」と激突!

ラグビーレポート by 多羅 正崇
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南アフリカ vs. ウェールズ

前人未踏のW杯3連覇へ向けて、王者が動き出す。

南アフリカ代表“スプリングボクス”が、6月22日(土)、2023年W杯決勝でニュージーランドを12-11で降し、2連覇の偉業を達成して以来のテストマッチに臨む。

相手はラグビーを国技とする楕円球熱狂国。ウェールズ代表“レッド・ドラゴン”。舞台はイングランド・ラグビーの聖地トゥイッケナム・スタジアムだ。

南アフリカ代表の指揮官は、23年W杯はディレクター職で――しかしコーチボックスで存在感を示していた――19年W杯優勝HCのラシー・エラスムスだ。

その首脳陣に2024年2月に参画したのが、23年W杯まで日本代表アシスタントコーチを2大会務めた「天才戦術家」トニー・ブラウン。奇抜かつ効果的なアタックをデザインする世界的コーチの参加は、南アフリカの戦術にどんな変化をもたらすのか。

さっそく王者の2024年初陣メンバーを見てみると、23年W杯決勝メンバーは10名。そしてリーグワン所属のプレイヤーは、実に7名にのぼる。

まず横浜キヤノンイーグルスのSHファフ・デクラーク(55キャップ)と、CTBジェシー・クリエル(68キャップ)の2人。

そして、この試合で2018年以来のキャプテンを務める、77キャップを誇るトヨタヴェルブリッツのFLピーターステフ・デュトイ(過去2大会で主将を務めたシヤ・コリシが所属クラブ・仏ラシン92の都合で出場不可という)。

さらに、待望の復帰となるリーグワン勢6人目が、クボタスピアーズ船橋・東京ベイのHOマルコム・マークス(64キャップ)だ。

23年W杯期間中に負傷し大会離脱。スピアーズはシーズンを通して出場できなかった現役最高フッカーが、いよいよ闘いの舞台に戻ってきた。

そしてリザーブにいる埼玉ワイルドナイツダミアン・デアレンデ(78キャップ)を入れて、リーグワン勢は7名となる。

他の注目メンバーでは、破壊的スクラムの主軸を担う背番号3、PRヴィンセント・コッホが記念すべき50キャップ目。

サプライズもあった。

戦術遂行のキーマンの一人であるスタンドオフに、代表デビューとなるジョーダン・ヘンドリクセを選出したのだ。スタンドオフ離れした守備力、タックルパワーを持つ新顔はどんなプレー、ゲームメイクをみせるのか。

そのSOヘンドリクセに加えて、ウイング先発のWTBエドウィル・ファンデルメルヴァも代表デビュー組。出場しないチェスリン・コルビ東京サントリーサンゴリアス)らにかわりチャンスを与えられた。

リザーブにも新人が2人。バックファイブ(FW第2、3列)のベン・ジェイソン・ディクソン、UBKのサシャ・フェインバーグ・ムンゴメズルだ。

多民族国家レインボー・ネーションから続々輩出される、次世代選手も注目だ。

23年W杯は逃したFBアフェレレ・ファシ(3キャップ)はラインブレイク能力が傑出。U20代表時代から図抜けていたリザーブのサルマン・モエラット(3キャップ)はボクスFWの系譜に連なるパワフルな突進、ワークレートが魅力だ。

エラスムスHCは2024年初陣を飾るプレイヤーを「エキサイティングなメンバー」と語った。

「代表デビューの選手たちが国際トップレベルでどうステップアップするのか、また、トレーニングで取り組んできたことをどのように実行するのかを見るのが楽しみです」

「エドウィル(先発WTB)、ジョーダン(先発SO)、ベン・ジェイソン(リザーブ)、サシャ(リザーブ)といった未キャップの選手たちは、トレーニングで本当に感銘を与えてくれました。ウェールズのような優れたチームを相手に、存在感を示す力を持っていると確信しています」

「彼らは、ワールドカップ優勝経験者をふくむ経験豊富なプレイヤーに囲まれています。プレッシャーがかかっても、フィールド上で指導を受けながら、役割を果たせるでしょう」(エラスムスHC)

一方で、チャレンジャーと目されているのがウェールズ代表だ。

23年W杯は準々決勝でアルゼンチン代表に17-29で敗戦。2024年の6カ国対抗戦「シックス・ネーションズ」は5戦全敗の最下位。名将ウォーレン・ガットランドHCにとっては再建の第一歩となる。

今回はテスト前にアクシデントもあった。

23年W杯で共同主将を務めたバックロー、ジャック・モーガンが試合前にハムストリング負傷で離脱となったのだ。

しかし同W杯のもう一人の共同主将、HOデヴィ・レイク(12キャップ)は健在。ゴール前の得点力にも定評のある25歳の若きキャプテンが、王者撃破を牽引する。

ウェールズのウイングの片翼といえば、スターWTBだったルイス・リース=ザミットだが、現在は米NFLに挑戦中。スーパーボウル2連覇中のカンザスシティ・チーフスと契約したとの報道もある。

そこに名を連ねているのが、ウェールズ代表メンバー唯一のリーグワン勢でもある89キャップの長身ランナー。昨季クボタスピアーズ船橋・東京ベイに新加入したWTBリアム・ウィリアムズだ。

シーズン離脱だった南アフリカHOマークスとの共演はなかったが、スピアーズのチームメイト同士がトゥイッケナムで対峙することとなった。

ウェールズ代表には4人の新人(先発1名、リザーブ3名)が入った。

先発SHに入ったのはエリス・ベヴァン。経験豊富なガレス・デーヴィス(76キャップ)はリザーブのスタートだ。

残る3人は、センターのエディー・ジェームズ、UBKのジェイコブ・ビーサム、チーム発表の朝に緊急招集されたというジェームズ・ラッティも、リザーブからデビューを狙う。

23年に同代表HCに再任したウォーレン・ガットランドは、「今週はすこし窮地に立たされているが、土曜日の挑戦には興奮している」と、怪我人を念頭にしたコメントを発表した。

「トゥイッケナム・スタジアムで世界チャンピオンと対戦するのは素晴らしい機会。パフォーマンスを発揮する機会を楽しみにしています」

通算対戦成績は南アフリカの33勝7敗1分け。直近10試合では南アフリカの6勝4敗だ。

キックオフは土曜日の夜。J SPORTSでは午後9時50分から生中継、J SPORTSオンデマンドでLIVE配信する。

南アフリカの破壊的スクラム、ラインアウト、モールが炸裂するのか。天才トニー・ブラウンが関わっているであろう、代表デビューの10番が率いるアタックも要注目だ。

スプリング・ボクスの好スタートを決めるのか。それともウェールズの番狂わせか。日本代表×イングランド代表の後、土曜の夜は、トゥイッケナムでのビッグマッチに酔いしれたい。

文:多羅 正崇

多羅正崇

多羅 正崇

スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。

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