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アイザック・ルーカス(ブラックラムズ東京)
こんな日もあるよ。
0-55と無得点で大敗した試合の直後、労いの言葉をかけられたレメキ ロマノ ラヴァ主将は、「こんなのは初めてだよ」と答えた。
5月24日(土)に神奈川・相模原ギオンスタジアムでおこなわれたリーグワンのディビジョン1(D1)とディビジョン2(D2)の入替戦、リコーブラックラムズ東京(D1/10位)×NECグリーンロケッツ東葛(D2/3位)は、一方的な内容となった。
9トライ、55点を奪ったブラックラムズは、キックオフ直後から描いたプラン通りに攻めた。
試合前日、ゲームキャプテンの松橋周平は「今シーズンやってきたことすべてを出し切り、ベストゲームにしよう」と言っていた。その言葉通りだった
グリーンロケッツはその勢いを受け、試合序盤からディシプリンを欠いた。
攻めても攻めてもスコアできず、レメキ主将は「みんな頑張った。でも、タックルしても、タックルしても、起き上がって振り返ったら、相手に走られていた」と振り返った。
中楠一期(ブラックラムズ東京)
黒いジャージーは、キックオフ時から集中力が高かった。3分、ラインアウトからの用意したプレーで、WTB西川大輔が前進。FWでゴール前に迫り、SO中楠一期がインゴールにボールを置いたように見えた。
そのプレーはTMOの結果、キャンセルとなったものの、ブラックラムズの遂行力を示すものだった。
先制機は、その後すぐに訪れた。前半7分、ブラックラムズはPK後のラインアウトからモールを組み、HO小池一宏がトライラインを越えた。
FWのいい結束だった。
その直前のプレーが勝負の行方に大きな影響を与えた。
グリーンロケッツのNO8、アセリ・マシヴォウのタックルがキックレシーブした相手の頭部にヒットし、イエローカードを提示されたのだ。
先制トライは、FWの人数に差がある中で生まれた。
そしてマシヴォウには、ファールプレー・レビュー・オフィシャルの検証を経て、あらためてレッドカードが示された。
ジャパンラグビー リーグワン2023-24 D1/D2入替戦 第2戦
【入替戦ハイライト動画】ブラックラムズ東京 vs.グリーンロケッツ東葛
20分後(前半26分)にヴィリアミ・ルトゥア・アホフォノが代わりに投入されるまでグリーンロケッツは14人で戦い、それまでに17点を失った。
リードを許しただけでなく、相手のモメンタムをより大きくしたことが悔やまれる。
ハーフタイム時には0-31と大きく差をつけられた。
前半を思い通りの時間にしたブラックラムズは、後半も4トライを重ねた。
接点で勝ち、オフロードパスをつなぐ。前へ出てボールを散らすこともあれば、タテに切り裂くこともあった。防御側に「タックルしても、しても……」と言わせたのは、分厚く攻めた結果だった。
SO中楠は、「個々の力を引き出し、結束させたい」と宣言した通りのゲームコントロールをした。
PRパディー・ライアンら重いFWが常に前に出て、防御を押し下げた。CTB池田悠希の強さも際立ち、プレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれたFBアイザック・ルーカスの走りはいつも通りだった。
レメキ ロマノラヴァ(NECグリーンロケッツ東葛)
描いていたプランを何も実行できなかったグリーンロケッツは、CTBに入ったレメキにボールを集めて勢いを出したかったが、圧力を受け、良い状況でパスを渡せなかった。
それでも個人技で突破する局面はあったが、流れを引き寄せることはできなかった。
入替戦初戦に21-40で敗れていたため、「0-19から始まる試合」との意識を強くしてキックオフを迎えた。
ウェイン・ピヴァック ヘッドコーチは、「だからこの試合は、最初からいいスタートを切らないといけなかった。そのためにもクリーンにプレーすべきなのに、規律を守れなかった」と出だしのつまずきを悔やんだ。
レッドカード以外にイエローカードも出て、13人になった時間帯もあった。
レメキ主将も、「みんなイライラして、自分が、自分が、となってうまくいかなくなった」と唇を噛んだ。
完璧な80分を過ごしたブラックラムズの松橋ゲームキャプテンは、ファンの大きな声援を受けて気持ち良さそうだった。
絶対に勝つ。無得点に抑えて勝つことも目指したいといっていたターゲットにも届いた。
「自分たちのプロセスから外れないことが大事だった」と話す言葉から、バラバラになってしまった相手との違いが伝わってきた。
文: 田村 一博
田村一博
前ラグビーマガジン編集長。鹿児島県立鹿児島中央高校→早稲田大学。早大GWラグビークラブでラグビーを始める。ポジションはHO。1989年、ベースボール・マガジン社に入社。ラグビーマガジン編集部に配属される。1993年から4年間の週刊ベースボール編集部勤務を経て、1997年からラグビーマガジン編集長に就く。2024年1月に退任し、現在は編集者、ライターとして活動。
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