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クロスボーダーラグビー2024で得た勢いが本物であることを証明する勝利だった。連覇を狙うシーズンながら、クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(S東京ベイ)は第6節まで3勝3敗と苦しんでいた。第7節は、2月24日(土)、東大阪市花園ラグビー場に乗り込み、花園近鉄ライナーズ(花園L)と対戦。試合前のコイントスで風上を選択したのは立川理道キャプテン。この日のS東京ベイのテーマは「シンプルに」。前半はキックで地域を進めながら、丁寧にボールをつなぐ一方、ディフェンスでは激しく前に出て、花園Lのワイドアタックを封じた。
先制トライは前半7分、花園Lのゴールライン前中央付近でスクラムを得ると、押しながら右へ展開し、SH藤原忍がCTB立川理道にパス。CTBリカス・プレトリアスがダミーで走りこんだ裏で再び藤原がパスを受け、あらかじめ外に回り込んでいたSO岸岡智樹がトライする。FBリアム・ウィリアムズがゴールを決めて、7-0。続く9分、プレトリアスが相手のパスをインターセプトして約50を走り切ってトライ。その後も攻勢が続き、16分には、岸岡が約40mのドロップゴール(DG)を決めて、15-0とリードを広げた。
「DGの判断はタイミング的にも良かった」と岸岡。もし、あのタイミングで守り切られてトライをされていたら、タイトな展開になったかもしれない。2トライ2ゴールでも追いつかない15点差にしたことは主導権を握るという意味で大きかったということだ。「本来キッカーではないリアムがゴールを蹴っていたので」とも話し、着実にスコアすることが大事だったと説明した。クロスボーダーで高いスキルと冷静な判断を披露した岸岡は、この日も冷静沈着にゲームをコントロールした。
前半18分のトライは両WTBが特色を生かした。自陣中盤のスクラムから左オープンへ展開。左端に位置した左WTB木田晴斗がハーフウェーライン手前でボールを受け、ハンドオフでタックラーを弾き飛ばしながら快走し、一気に22mラインを越える。タックルを受けながら内側にパス。ここに走りこんだのが右WTBの根塚洸雅だった。ボールをかっさらうように確保するとインゴールへ。木田の強さとスピード、右から左に大きく移動しながら最短コースを走った根塚の運動量、判断も光った。根塚以外にも3人がサポートしており、S東京ベイの勢いを象徴するような得点だった。スコアは、22-0となる。
ジャパンラグビー リーグワン2023-24 D1 第7節
【第7節ハイライト動画】花園近鉄ライナーズ vs. クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
S東京ベイは23分にも元ウェールズ代表のウィリアムズがトライを追加。39分には、モールを押し込み元ニュージーランド代表HOデイン・コールズがトライ。39-0として前半を折り返した。後半のS東京ベイは頭からFW第一列を全員交代させた。HO杉本博昭は今季限りの引退を表明したばかり。尊敬し、手本にしてきたコールズからバトンを受けて奮闘した。スタンドには、兄・剛章さん(元三菱重工相模原ダイナボアーズ)、父、甥などファミリーに加え、杉本自身が招待した母校・東生野中学のラグビー部員約70名、出身の布施ラグビースクールの子どもたちの姿があった。
後半3分、岸岡のトライで44-0とするまではS東京ベイのペースだったが、花園Lもボールを保持して反撃を始める。「アタックの時間を多くして、ブレイクダウンをしっかり戦えば、課題の反則も減ってくる」(向井昭吾ヘッドコーチ)。序盤から狙った戦いだが、S東京ベイのディフェンスの圧力にボールを継続支配することができなかった。後半7分、CTBトム・ヘンドリクソンが抜け出し、WTB片岡涼亮が快足を飛ばしてトライ。13分にはSOクエイド・クーパーの素早いパスでWTB木村朋也が右タッチライン際を抜けて、NO8セル ホゼがトライし、44-12として花園の観客席を沸かせた。その後はトライを取りあい、最終スコアは56-19。杉本博昭も後半26分、トライをあげて大歓声を受けた。
勝ったS東京ベイの立川キャプテンは「前半は自分たちのペースで戦えたが、後半、相手ペースになったところに学びがあった」と、前向きに反省した。劣勢のとき、相手にフォーカスしすぎず、自分たちにフォーカスして修正すべきということだ。「ディフェンスは小さなコミュニケーションで直せるところと、システム自体を直すところがあると思うので、ディフェンスコーチと話していきたいです」。フラン・ルディケヘッドコーチは「チーフス戦がきょうの勝利につながっている」と、クロスボーダーラグビーがよいきっかけになったと話した。
S東京ベイは第8節(3月3日)、上り調子の三菱重工相模原ダイナボアーズと対戦。連勝して順位を上げていきたい。7連敗となった花園Lは、第8節(3月2日)、こちらも好調の東芝ブレイブルーパス東京と対戦する。向井昭吾ヘッドコーチにとっては、かつて監督として率いたチームへのチャレンジだ。
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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