【ハイライト動画あり】プレーオフの再戦予感させるライバル対決。ワイルドナイツが規律正しく粘り勝つ

ダミアン・デアレンデ（埼玉ワイルドナイツ）

優勝を争う好敵手と認め合うからこそ一歩も引けない。闘志あふれる戦いだった。首位を走る埼玉ワイルドナイツ（埼玉WK）と、3位で追う東京サントリーサンゴリアス（東京SG）の戦いは、2月17日、午後2時30分に始まった。熊谷ラグビー場には12,030人の観衆が集い、ライバルのぶつかりあいを見守った。

東京SGのFBチェスリン・コルビのキックオフのボールは埼玉WK陣深いタッチライン際に飛んだ。いきなり東京SGのWTB江見翔太が力強いタックルを見舞う。「江見が好調なので起用した」と、田中澄憲監督は江見先発、松島幸太朗リザーブの理由を語った。その言葉通り、江見は攻守に躍動した。

　

両チームは立ち上がりからボール争奪戦で激しくプレッシャーをかけあった。ラインアウトでは埼玉WKのLOルード・デヤハー、東京SGのLOハリー・ホッキングスという身長206cm同士がスチール合戦。開始2分、東京SG陣深く入った埼玉WKラインアウトでは、ホッキングスがボールを奪う。東京SGはここからボールを展開するも、タックル後のブレイクダウンで埼玉WKのボールハンター、ラクラン・ボーシェーがジャッカルを決めて反則を誘う。SO松田力也が先制PGを決めた。

尾崎晟也（東京サンゴリアス）

互いに譲らぬ攻防の中で先にトライを取ったのは東京SGだった。前半9分、ハーフウェイライン付近の攻撃から江見が抜け出し、SH流大、FL桶谷宗汰らがつなぐ。最後はコルビからパスを受けたNO8ツイ ヘンドリックがタックルを受けながらパスを出し、CTB尾崎泰雅から兄のWTB尾崎晟也につながってトライ。SO高本幹也がゴールを決めて、3－7と逆転した。

埼玉WKも直後のキックオフから反撃。相手キックをキャッチしてハーフウェイライン付近から連続攻撃を仕掛ける。WTBマリカ・コロインベテが縦に走りこんでディフェンスを巻き込むと、CTBダミアン・デアレンデがタックルをかわし、左タッチライン際のCTBディラン・ライリーにパスを送ってトライ。松田がゴールも決めて10－7と逆転する。

松田と高本がPGを決め合い、13－10となるが、両チームともラインアウトの確保がままならずチャンスを広げられなかった。後半5分、ボールを確保して攻め続けながらトライが取れない東京SGは、高本がゴール正面の好機にドロップゴールを決めて13－13。直後、東京SGは高本がカウンターアタックからディフェンスを突破し、桶谷、堀越、中村亮土らがつないでゴールに迫り、中村がトライ。スコアは、13－20。

長田智希（埼玉ワイルドナイツ）

攻勢に出る東京SGだが、埼玉WK陣でのラインアウトを連続でスチールされ、チャンスを逸してしまう。埼玉WKは後半16分、相手ボールのラインアウトを奪うと自陣から攻撃。WTB長田智希が巧みなコース取りで抜け出すと、最後は交代出場のHO堀江翔太が技ありのパスでつなぎ、FB野口竜司がトライ。18－20とする。21分に松田がPGを決め、21－20とした後は東京SGが何度もチャンスを作ったが、ラインアウトのボールを確保できずに追加点をあげることができなかった。終了間際には松田がPGを追加し、埼玉WKが24－20で競り勝った。

「グレート・コンテスト。良いチーム同士の良い競争でした。後半の最後、規律正しくプレーできた」と埼玉WKのロビー・ディーンズ監督。攻め込まれたときに反則せずに我慢強くプレーできたことを勝因の一つにあげた。坂手淳史キャプテンは勝利を喜びつつ、マイボールのラインアウトでのミスが多発したことなど今後の改善点をあげた。

　

東京SGの田中澄憲監督は言った。「（クロスボーダーラグビーの）ブルーズ戦でフィジカル面、ブレイクダウンなどで学びがあった。サンゴリアスの強みは何かをもう一度確認した。（きょうの試合で）戦えないと、この後のリーグワンを戦い抜けないと思っていた。レベルアップできたと思う」と話し、ブルーズ戦の完敗からの復調に手ごたえをつかんでいた。

反則（PK）数は埼玉WKの5に対して東京SGは11。特に終盤の自陣での反則は東京SGの直接の敗因だった。東京SGはキック、パス、ランを織り交ぜて多彩に攻めた。埼玉WKはFB野口を軸に相手キックに対するディフェンスも良く、突破されても素早く戻って失点を防いだ。松田力也と高本幹也のSO対決など注目のマッチアップも含め、観る者の心をつかむ好試合だったが、もどかしいシーンも多かった。両チームともにラインアウトの獲得率は50％。課題はある。再戦があるといすれば、トップ4によるプレーオフトーナメント。さらにスキのないチームになっての激闘を期待したい。