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チェスリン・コルビ(東京サンゴリアス)
リーグワン2023-24開幕節最大の注目カードは思わぬ大差になった。その中心にいたのは、東京サントリーサンゴリアス(東京SG)の新加入選手チェスリン・コルビだ。世界王者南アフリカ代表のトライゲッターは現在世界最高のWTBと表現しても過言ではない。この日はFBとしてフル出場。身長172cmが信じられないほどのハイパントキャッチ、瞬時の加速、自在なステップ、正確なパスを披露。アグレッシブ・アタッキングラグビーを標榜する東京SGの軸になった。
12月10日(日)、秩父宮ラグビー場(東京都港区)には、18,110名の観客が集った。昨季の王者クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(S東京ベイ)のホストゲームとあって、オレンジアーミー(S東京ベイサポーター)が目立ったが、その多くも東京SGに加入したニュージーランド代表キャプテン、サム・ケインとコルビのプレーを楽しみにしていただろう。
午後2時、東京SGでリーグワンデビューとなるSO高本幹也のキックオフで試合は始まった。立ち上がりから勢いよく攻める東京SGは前半3分、S東京ベイのゴール前でFWが縦突進を繰り返し、HO堀越康介がトライをあげる。高本がゴールを決めて、7-0。前半9分、S東京ベイはSOバーナード・フォーリーがPG失敗。直後の東京SGのトライはコルビの好キックから生まれた。
松島幸太朗(東京サンゴリアス)
自陣の中盤でボールを持ったコルビが相手陣のインゴールまでロングキック。これをフォーリーが確保してタッチキックを蹴ると、CTB森谷圭介が左タッチラインギリギリでボールを確保して前進。右オープン展開でSH流大、コルビ、WTB松島幸太朗とパスがわたり、最後は昨季のリーグワン・トライ王の尾崎晟也がトライ。高本がゴールを決めて、14-0とリードを広げた。前半19分、コルビがドロップゴールを狙う。これはチャージされたがそのボールを確保した東京SGが攻め、尾崎晟也がトライ。東京SGが3連続トライで21-0とする。
ジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1
【第1節ハイライト動画】クボタスピアーズ船橋・東京ベイ vs. 東京サンゴリアス
JD・シカリング(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)
S東京ベイが持ち前の強力FWの威力を発揮したのは前半23分だった。神戸スティーラーズから移籍のJD・シカリング(203cm、121kg)の突進、SH藤原忍の密集サイド突破、そして、デーヴィッド・ブルブリング(199cm、113kg)がトライを奪う。ただし、こうした力強いトライは前半この1本だけだった。「スピアーズはリーグ随一の強いFWパックです」と東京SGのHO堀越康介キャプテン。だからこそ、そのFWを背走させるキックを使い、広いオープンスペースを使うことで相手の長所を消した。もちろん、かわすだけではなく、真っ向勝負のスクラム、相手の突進を止めるタックルでも互角以上に戦った。シーズン前に良い準備ができたことを物語るパフォーマンスだった。
35-7で迎えた後半はS東京ベイがPRオペティ・ヘルのパワフルなトライで35-14とし、差を詰めるかと思われたが、この勢いを止めたのもコルビだった。後半4分、ハーフウェイライン付近から流がハイパントを蹴り上げると、これを追ったコルビがスーパーキャッチ。尾崎晟也、森谷が前進してゴールに迫り、最後は流からパスを受けたコルビが、ダミーパスでディフェンスを突破して右タッチライン際の森谷にパス。このトライでスコアは、40-14となり、東京SGの勝利は濃厚になる。
木田晴斗(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)
その後はS東京ベイも連続攻撃を仕掛け、WTB木田晴斗がゴールに迫り、FBゲラード・ファンデンヒーファーが再三突破したが、2トライを追加するにとどまった。東京SGは計8トライの猛攻。そのなかで尾崎兄弟は5トライを挙げた。兄の晟也は3トライで「弟(泰雅)に数で負けなくて良かった」と笑顔。最終スコアは、52-26。S東京ベイは攻守にミスが多く、東京SGの精度の高いプレーが光る快勝だった。
プレーヤーオブザマッチ(POM)はチェスリン・コルビ。リーグワンデビュー戦で緊張感があったのが、受賞が決まると感極まって涙を流した。「デビュー戦を勝利で飾れて嬉しく思います。このチームのスタイルは自分にあっています。大切なことは学び続けること、チームに貢献し続けることです」。
東京SGの田中澄憲監督は「昨年3連敗した相手にリベンジすることができて、やっと始まったという気がします。プランを選手が信じてやりきってくれました。それに尽きます」とコメント。今回はコルビをFBで起用したが、複数のポジションができる選手が多いこともあり、「試合によって変えて行けるのがこのチームの強み」と話した。
敗れたS東京ベイの立川理道キャプテンは、「エリアの取り合いのところで、サンゴリアスがいろいろなバリエーションを使ってきた。自分たちのFWを相手がどう攻略してくるか、しっかり分析して戦いたい」と語った。両者がレギュラーシーズンで再び戦うのは、16節(2024年5月4日)になる。
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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