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ラグビー コラム 2023年10月30日

【ハイライト動画あり】南アフリカ、1点差の勝利で史上最多4度目の戴冠 NZはサム・ケインが退場も14人で戦い抜く

村上晃一ラグビーコラム by 村上 晃一
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2大会連続4度目の優勝の南アフリカ

第10回ラグビーワールドカップ(RWC)フランス大会は、南アフリカ代表スプリングボクス(SA)の2大会連続4度目の優勝で幕を閉じた。エリスカップを掲げたシヤ・コリシは、NZのリッチー・マコウ(2011、2015)に続いて、2度の優勝をリードした2人目のキャプテンとなった。2023年10月28日(日本時間29日)、パリ近郊のサンドニにあるスタッド・ド・フランスには、80,065人の大観衆が集った。試合前には、レバノン出身のアーティストMIKA(ミーカ)によるライブもあり、国歌は両チームのファンが大声をはりあげた。ニュージーランド代表オールブラックス(NZ)のハカをリードしたSHアーロン・スミスの目には涙が浮かんだ。

ともに過去3度優勝し、100年以上の国際交流でラグビー史上最強チームを争ってきた好敵手である。両チームのサポーターも大声援を送った。午後9時、テストマッチ111試合目となる当代一のレフリー、ウェイン・バーンズの笛で激闘の幕は上がった。紙一重の試合が続いた同大会48試合目となる決勝戦もスリリングな展開になる。開始2分、ブレイクダウンの攻防でNZのFLシャノン・フリゼルがSAのHOボンギ・ンボナンビの足に体重をかける危険なプレーでシンビン(10分間の一時退場)となる。ンボナンビはこの怪我で負傷交代。HOとFLをこなすデオン・フォーリーが投入された。前半3分、この反則で得たPGをSOハンドレ・ポラードが決めて、SAが3-0と先制。13分にもポラードがPGを決めて6-0とする。ポラードは2017年からこのスタジアムでプレースキックを外していない。今大会も100%の成功率だ。

ジェシー・クリエル

直後にフリゼルが戻って15人対15人になる。14分、ゴールラインに迫ったNZのCTBジョーディー・バレットが防御背後にショートパントを上げ、NO8アーディ・サヴェアが走り込んだが、バウンドが合わず好機を逸する。連続攻撃で得たPGをSOリッチー・モウンガが決めて6-3。その直後、NZのサヴェアがタックル時に反則をとられ、ポラードがPGを決めて9-3。NZにとっての悪夢は前半27分のことだった。SA陣深くに攻め込んでいたNZのFLサム・ケインがSAのCTBジェシー・クリエルの顔面に肩をヒットさせる危険なタックルでシンビン。バンカーシステム(映像判定)でレッドカードとなり、残りの約50分をNZは14人で戦うことになった。

ラグビーワールドカップ2023 フランス大会 決勝

【ハイライト動画】ニュージーランド vs南アフリカ

両チームがPGを加えて、12-6で前半を終了するのだが、37分にNZのCTBリーコ・イオアネが左コーナーに走り込んだとき、SAのWTBカートリー・アレンゼがボールに手をかけながらトライを防ぐ値千金のタックルを決めた。14人のNZは後半もボールを保持して攻め続けたが、SAの選手たちも力強いタックルで止め続けた。後半4分、アレンゼがインゴール方向にキックされたボールを追い、ボーデン・バレットに競り勝ってボールをかっさらったがインゴールでノックオン。その後、SAのキャプテン、シヤ・コリシがタックルの際にNZの選手の頭部が当たってシンビン。しかし、これは先に肩にヒットしてから頭が当たったとしてレッドにはならなかった。その後のSAは、身長206cmのRG・スネイマンら屈強な控FWを次々に投入する。

ボーデン・バレット

NZは18分、ラインアウトのモールは止められたものの、左オープンにワイドに展開し、左タッチライン際に待っていたWTBマーク・テレアが2人、3人とタックルをかわしてボーデン・バレットにつないでトライ。12-11に迫る。しかし、逆転を狙ったモウンガのゴールはゴールポストをそれた。なおも攻め続けるNZ。白熱の攻防のなかで、NZのパスをSAのWTBチェスリン・コルビが故意のノックオンでカットしたとしてシンビンとなる。退場し顔を覆ったコルビはもう試合を見ることができない。勝利への執念で攻め続けるNZだが、惜しいハンドリングエラーもあって仕留め切れなかった。SAのタックル数は209。NZの倍以上のタックルを決める我慢強い勝利だった。

プレーヤー・オブ・ザ・マッチは出色の運動量だったFLピーター・ステフ=デュトイ。両チーム最多28回ものタックルを決めた。「このチームでプレーできて幸せです。最後の3試合はすべて決勝戦のような気持ちで戦いました。フランスまで応援にきてくれたサポーターにも感謝します」。ジャック・ニーナバーヘッドコーチは「長い道のりでした。2018年からこの日のために準備してきました」とコメント。まさに決勝に勝つために選手のプレー時間のコントロールなど、すべてを逆算してチーム作りをした首脳陣と選手が一体となった勝利でもあった。

敗れたNZのイアン・フォスターヘッドコーチは、「チームを誇りに思います。レッドカードは残念でしたが、最後までよくファイトしました。手の届くところにあった勝利をつかみ取れず残念です」と淡々と話した。NZは5度目の決勝進出だったが、そのうち2度(1995年、2023年)、SAに優勝を阻まれたことになる。選手たちの落胆の表情は痛々しいほどだが、14人で戦い抜いた姿はファンの胸を打った。最終スコアは、12-11。レッドもイエローカードもあった。それでもあきらめずに戦い抜いたサンドニの激闘はRWCの歴史に深く刻まれた。

文:村上 晃一
村上晃一

村上 晃一

ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。

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