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ラグビー コラム 2023年10月14日

歴史的勝利の前哨戦から7週後の再戦。イングランドの雪辱か、フィジーが新たな歴史を創るか。ラグビーワールドカップ2023準々決勝展望

ラグビーレポート by 直江 光信
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8月26日に行われたワールドカップ直前の前哨戦は、フィジーが聖地トゥイッケナムでイングランドから初勝利(30-22)を挙げる歴史的なテストマッチとなった。それから7週間。プールC2位で4大会ぶり3度目の決勝トーナメント進出を果たしたフィジーが、プールDを1位で通過したイングランドに、準々決勝でふたたび挑む(日本時間10月16日00時キックオフ@マルセイユ)。

ワールドカップまで1年を切った時点でのヘッドコーチ交代劇に始まり、トレーニングマッチでの低調なパフォーマンスや、SO/CTBオーウェン・ファレルのレッドカード騒動などネガティブな話題が続いた今回のイングランドだが、大会に入ってからはそうした雑音を振り払うような力強い戦いぶりでプールDを全勝で突破した。底力を証明したのはアルゼンチンとの初戦で、開始早々にFLトム・カリーがレッドカードで一発退場になるアクシデントに見舞われながら、強みであるセットピースとキック、ディフェンスに戦術を絞り込み、27-10で完勝。派手さこそないものの最短距離で勝利にアプローチする堅実な試合運びは、続く日本戦でもおおいに威力を発揮した。

ケガや出場停止でなかなかベストメンバーを組めなかったが、陣容もここにきて整いつつある。HOジェイミー・ジョージにLOマロ・イトジェ、FLコートニー・ロウズ、SO/CTBファレル、CTBマヌ・トゥイランギと要のポジションにワールドクラスの実力者が並び、22歳の新星、196センチ、101キロの大型FBフレディー・スチュアードもすっかり主軸に成長。プレーにおけるキックの割合が68パーセントと並外れて高く(他の8強進出7チームの平均は54パーセント)、“退屈なスタイル”と批判を受けることも多いが、型にはまった時の支配力は圧倒的だけに、対戦相手にとっては厄介なチームだろう。

対するフィジーは「同国史上最強」という前評判通りの実力を披露し、2007年のフランス大会以来となるトップ8入りを成し遂げた。ウェールズとの初戦は26-32で敗れたものの、ラストプレーでトライ寸前まで迫る紙一重の惜敗。続くオーストラリアとの第2戦は22-15の最終スコア以上に差を感じる快勝だった。プール最終戦でポルトガルの渾身のチャレンジに23-24と苦杯を喫し、オーストラリアと勝ち点11で並んだ末に直接対決の結果で辛くも2位で通過するという際どい勝ち上がりとなったが、その苦い経験を薬に準々決勝では引き締まったプレーを見せてくれるはずだ。

フィジーといえば“マジック”とも称される変幻自在のランニングラグビーでおなじみだが、現在のチームはディフェンスや規律の面で統制がとれていることも大きな強みになっている。1試合平均のターンオーバー数(8.0)は、ベスト8進出チームの中でトップ。エロニ・マウィ、ルケ・タンギと130キロ超の大型PRを擁するスクラムの推進力も強烈で、バックローではFLレヴァニ・ボティアが攻守にわたり獅子奮迅の活躍を見せてきた。BKはプレー、メンタル両面の支柱であるキャプテンのCTBワイセア・ナヤザレヴを筆頭に、チャンスメークからフィニッシュまでこなす好ランナーぞろいで、勢いに乗ればどの相手にも勝利できるポテンシャルを秘める。

 

それぞれの登録メンバーを見ていくと、イングランドの前節サモア戦からの先発変更は2人。11番に万能BKエリオット・デイリー、15番にはプレーメイカーのマーカス・スミスが新たに起用され、キャプテンのファレルは10番でゲームコントロールを担う構成となった。ジョー・マーチャントが前週の14番から13番、ジョニー・メイが11番から14番にそれぞれスイッチする。SOファレル、FBスミスのコンビがどのように機能するか注目だ。

 

一方のフィジーは、1週前のポルトガル戦からスターター5人を入れ替える布陣を組んできた。HOはテヴィタ・イカニヴァレがリザーブから繰り上がり、バックローでの起用が多かったアルバート・トゥイスエが右LOで先発。6番レキマ・タンギタンギヴァル、11番セミ・ランドランドラ、15番イライサ・ドロアセセは9月30日のジョージア戦以来2試合ぶりのスタメンだ。また前節11番のヴィナヤ・ハンボシは、右WTBに移ってのスタートとなる。

10月9日発表のワールドラグビーランキングではイングランドが6位、フィジーが10位。8月の対戦時と比較すると、両チームとも当時の先発15人のうち10人を今回のスターターに起用してきた。フィジーとすれば迷いなく挑戦できる状況であり、イングランドは前回敗戦の雪辱に燃えているはず。お互いの意地と気迫がぶつかり合う激戦となりそうだ。

文:直江 光信

直江 光信

スポーツライター。1975年熊本市生まれ。熊本高校→早稲田大学卒。熊本高校でラグビーを始め、3年時には花園に出場した。著書に「早稲田ラグビー 進化への闘争」(講談社)。現在、ラグビーマガジンを中心にフリーランスの記者として活動している。

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