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ラグビー コラム 2023年5月1日

2011年はラグビー王国NZ初の単独開催。2015年は日本代表が初戦で南アフリカ代表を破る快挙!

村上晃一ラグビーコラム by 村上 晃一
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2011年ニュージーランド大会 決勝 フランス vs. ニュージーランド

2011年の第7回ラグビーワールドカップ(RWC)は、ラグビー王国ニュージーランドが単独で初のホスト国となった。国民が約430万人(当時)という小さな国での世界一決定戦は、国がひとつのスタジアムになったかのように盛り上がった。100年を超えるラグビーの歴史上すべての国との対戦成績で勝ち越す唯一の国代表オールブラックスは優勝を義務付けられていた。

その凄まじいプレッシャーの中で勝ち進んだオールブラックスは、準決勝でライバルのオーストラリア代表ワラビーズと戦う。ワラビーズのHB団は、現在、花園近鉄ライナーズでプレーするウィル・ゲニアとクエイド・クーパーだ。対するオールブラックスのHB団は、ピリ・ウィップーと、現在、東京サントリーサンゴリアスのアーロン・クルーデン。ダン・カーター、コリン・スレードが相次いで怪我をしたための代役SOだった。

ここを切り抜けたオールブラックスの決勝の相手は準決勝でウェールズ代表と激闘を繰り広げたフランス代表。キャプテンのFLティエリー・デュソトワールがオールブラックスの前に立ちはだかる。あまりの緊張でウィップーのプレースキックが入らない。どうなる?オールブラックス。会場のイーデンパークを埋めた観客は手に持ったビールを飲むのも忘れて大声援を送った。熱狂の80分は見る価値十分だ。

2011年ニュージーランド大会 プールA フランス vs. 日本

この大会の日本代表は、元オールブラックスのジョン・カーワンヘッドコーチ、菊谷崇キャプテン体制で臨んだ。2チーム制をとり、プールAで最初に当たったフランス代表戦に必勝を期す。思惑通り、SOジェームズ・アレジの活躍もあって、後半は一時4点差に迫ったが突き放される。最終戦のカナダ代表戦はHO堀江翔太、WTB遠藤幸佑がトライをあげるも追いつかれてしまう。悔しいが、若き日の堀江、FLリーチ マイケル、SH田中史朗らのプレーを楽しみたい。

2015年のイングランド大会は日本代表の歴史的勝利によって、世界のラグビー史の転換点として語り継がれることだろう。【ラグビーワールドカップ100選!】は、日本代表のプール戦全試合と、決勝トーナメント全試合をピックアップ。1991年のジンバブエ代表戦からの勝利以降、24年間勝てなかった日本代表が初戦で南アフリカ代表を破る。それは2012年に就任したエディー・ジョーンズヘッドコーチの緻密なチーム作りと、長期合宿でのハードトレーニングによってもたらされた。たとえば、大会前まで日本代表はどの試合でもボールキープを心掛け、戦略的キックの割合は少なかった。それがこの試合ではキックを多用して南アフリカを慌てさせる。すべてはプラン通り。結果を知っても楽しめる質の高いパフォーマンスを今一度見直したい。

2015年イングランド大会 プールB スコットランド vs. 日本

中3日で迎えたスコットランド代表戦は疲れもあって大敗してしまうが、スコットランド代表SHグレイグ・レイドローの活躍が際立つ。このとき、レイドローがのちに日本のチームでプレーすると誰が想像しただろうか。サモア代表、アメリカ代表には快勝して史上初のプール3勝。サモア代表は日本代表が苦手としてきたチームだ。筆者は清宮克幸さんと解説を担当したが、試合後「普通に勝ちましたね」と日本代表の地力アップに驚いた記憶がある。勝ち点差により、日本代表は「3勝しながら決勝トーナメントに行けなかった初のチーム」になった。しかし、この3勝が2019年大会の成功につながるのだ。

決勝トーナメントは、好ゲームが相次ぐ。南アフリカ代表対ウェールズ代表、オーストラリア代表対スコットランド代表は接戦になる。サム・ウォーバートンキャプテン率いるウェールズから逆転トライを奪うのは、サントリーサンゴリアスでプレーしたSHフーリー・デュプレアだ。スコットランド代表はレイドローキャプテンが抜群の統率力を発揮するが、不運な判定ミスもあって勝機を逸する。

準決勝2試合は、どちらも死闘となった。南アフリカ代表はプール戦で日本代表に敗れたが立て直し、オールブラックスのスティーブ・ハンセンヘッドコーチに「決勝に進めることをありがたく思う」と言わせるほどの健闘を見せる。SOダン・カーターの卓越した判断力が冴え渡る。アルゼンチン代表対オーストラリア代表もすさまじい激闘で、立ち上がりからフルスロットルの攻防。アルゼンチンのSOニコラス・サンチェスのPGがオーストラリアを追い詰める。試合後の表情には、力を出し切った者同士の清々しさがあった。

2015年イングランド大会 決勝 ニュージーランド vs. オーストラリア

そして決勝戦は、筆者が見てきたRWCの「最高の試合」と言っても過言ではない。大会史上初の連覇を狙うオールブラックスは、FLリッチー・マコウ、LOブロディー・レタリック、サム・ホワイトロック、NO8キアラン・リード、CTBマーア・ノヌーほか日本でもおなじみの選手がずらり。ワラビーズもFLマイケル・フーパー、スコット・ファーディー、NO8デヴィッド・ポーコック、SOバーナード・フォーリー、CTBアダム・アシュリークーパー、FBイズラエル・フォラウなど日本でプレーすることになる選手が並ぶ。

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ファーディーに関しては、釜石シーウェイブス時代に東日本大震災を経験。オーストラリア大使館から帰国をすすめられるが断り、釜石に残ってボランティア活動をした。その後、オーストラリア代表に選ばれ、釜石の人々の誇りとなった。決勝戦は極上のラグビーが楽しめるので、ぜひ見てほしいのだが、最後のゴールを決めるダン・カーターの足にも注目してほしい。そのエピソードはまた別の機会に。

文:村上 晃一
村上晃一

村上 晃一

ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。

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