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ラグビー コラム 2023年4月25日

16年前のフランス大会は開幕戦から波乱含み。大野均選手が1試合で7kg体重減の死闘も。

村上晃一ラグビーコラム by 村上 晃一
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2007年フランス大会 プールD フランス vs. アルゼンチン

第6回ラグビーワールドカップ(RWC)は、2007年9月7日~10月20日、フランスで開催された。世界の「ビッグ5」と呼ばれてきたニュージーランド、南アフリカ、オーストラリア、イングランド、フランス各国代表の中で優勝していないのはフランスのみ。ホスト国として悲願の優勝を目指したフランス代表だが開幕戦でいきなり波乱が起こる。

フランス代表は開幕戦でアルゼンチン代表と戦った。サンドニのスタッド・ドゥ・フランセには79,312人の大観衆が集う。キックオフ直後から強力FWが激しくぶつかり合い、めまぐるしく攻守が入れ替わる白熱の攻防となる。アルゼンチンが誇るSHアグスティン・ピチョット主将、バリエーション豊かな戦略的キックを操るSOファン・マルティン・エルナンデスの質の高いスキルほか、見どころ満載の開幕戦を今一度じっくり味わいたい。

この大会の日本代表は、元ニュージーランド代表の伝説的WTBジョン・カーワンが率いた。2003年のRWCオーストラリア大会では勇敢な戦いで評価を高めた日本代表だが、その後の4年は迷走した。監督が次々に代わる事態となり、最後にようやく国際舞台の経験豊富なジョン・カーワンに落ち着く。カーワンはRWCで負け続ける日本ラグビーを変えようと、強い気持ちで臨んだ。「小さい、軽いと何十年も言われて、だから負けるのだと思い込んできた歴史を変えなくてはいけない」。

2007年フランス大会 プールB 日本 vs. フィジー

そして、フランスに乗り込んでの4試合。プール戦のフィジー代表との激闘はファン、選手の語り草だ。大野均、トンプソン ルークの両LOが献身的に働き、トンプソンは2トライの活躍。しかし、先発SH吉田朋生、交代出場のSH矢富勇毅が相次いで負傷退場し、SOのブライス・ロビンスが急きょSHを務める緊急事態となる。それでもあきらめずに最後まで戦う姿にノーサイド後のスタジアムは総立ちの拍手となる。この試合で大野は体重が7kg減って点滴を受ける。それほどまでに全力を出し切る戦いだった。最後のカナダ代表戦は終了間際の劇的同点劇。CTB平浩二のトライ、CTB大西将太郎のゴールは必見だ。

決勝トーナメントに入ると、開幕戦で敗れたフランスが1999年大会の再現とばかり、ニュージーランド代表を破る。試合前のハカにフランスがにじり寄るシーンはド迫力。ニュージーランドがベスト8で敗退するのは史上初のことだった。しかも、CTBルーク・マカリスターのトライ、SOダン・カーターのPGなどでリードしながらの悔しい敗戦。キャプテンはその後、2011年、2015年大会で連覇を果たすFLリッチー・マコウ。試合後の記者会見では両手で顔を覆ったが、この悔しい負けがその後の最強軍団を作る原動力になったと考えると、見方も変わってくるだろう。フランス代表には世界屈指のFLティエリー・デュサトワール、CTBヤニック・ジョジオンらがいる。後半には鬼神セバスチャン・シャバルも登場。デュサトワールの伝説の38タックルはこの試合で生まれた。

決勝トーナメントは好ゲームが多かったが、マルセイユで行われた南アフリカ代表対フィジー代表では、フィジーの美しいトライを記憶にとどめたい。準決勝のイングランド代表対フランス代表は1トライのみの接戦。アルゼンチン代表は準決勝で南アフリカ代表の分厚い壁に挑むが、疲れもあって跳ね返される。南アフリカのスピードスター、ブライアン・ハバナの独走、ダイビングトライは華やかだ。

決勝戦はプールAの1位南アフリカ、2位イングランドが対戦。フィジカルの強みを持ち、キッキングゲームが得意な両チームによるノートライの激闘となる。2003年大会では正確なキックでチームを優勝に導いたイングランド代表SOジョニー・ウィルキンソンだが、2度目の優勝は達成できず。鉄壁のディフェンスを作り上げて南アフリカ代表を2度目の優勝に導いたのは、ジェイク・ホワイト監督。のちに日本のトヨタヴェルブリッツを指導し、入団1年目の姫野和樹をキャプテンに抜擢した人だ。南アフリカ代表のテクニカルアドバイザーはエディー・ジョーンズ。5年後に日本代表ヘッドコーチとなり、2015年大会で南アフリカを倒す名将だ。2007年大会のピックアップゲームは、今とつなげて語ることができるコーチ、選手が多数いる。どの試合も見応えは十分だ。

文:村上 晃一
村上晃一

村上 晃一

ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。

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