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リーグワン・ディビジョン1(D1)最終節でもっとも注目された一戦かもしれない。すでに入替戦に進むことは決定していたが、11位と12位の順位が入れ替わる可能性があったからだ。別会場では30分遅れのキックオフでディビジョン2(D2)の首位攻防戦、浦安D-Rocks対三重ホンダヒートが行われていた。両試合の結果によって、入替戦の組み合わせが決まる状況だった。
グリーンロケッツ東葛(GR東葛)が勝てば11位確定。12位の花園近鉄ライナーズ(花園L)が勝ち点差4をつけて勝てば順位は入れ替わる。4月22日(土)、東大阪市花園ラグビー場には、3,992人の観客が集った。花園Lは普及活動で訪れた小学校、中学校の生徒たちによる「ライナーズ未来ジャージーコンテスト」を行い、グランプリを獲得したデザインのジャージーをまとっていた。ファンの夢を乗せての戦いだった。
午後2時、GR東葛ボールのキックオフ。直後に今季初出場となった花園LのSOクウェイド・クーパーが退場する。昨年8月にアキレス腱断裂の重傷を負ったクーパーのプレーぶりが期待されたが、入替戦に出場するにはレギュラーシーズンでプレーする必要があった。「入替戦にはクーパーというカードが必要です」と水間良武ヘッドコーチ。本人は「プレーしようと思えばできたが、再び怪我をするリスクを回避した」と話した。完全復帰に向けてのリハーサルというところだろう。
交代で登場したのは前節のコベルコ神戸スティーラーズ戦で決勝ゴールを決めたジャクソン・ガーデンバショップ。果敢に突進するなどチームの勢いを引き出そうとしたが、勢いで勝ったのはGR東葛だった。ジェイク・ボール、山極大貴の両LOを軸に激しく前に出て、シンプルにディフェンスを崩していく。前半10分、10節以来の出場となったSO金井大雪がラインブレイクしてチャンスを作り、最後はCTBクリスチャン・ラウイが先制トライ。15分にはWTB後藤輝也が右タッチライン際を快走し、インゴールへキック。これを追ったFBレメキ ロマノ ラヴァがトライするなど主導権を握った。レメキは、今季のレギュラーシーズンすべてフル出場。この日も、チャンスメーク、トライセービングタックルにと大車輪の活躍だった。「肉を食べるのをやめて、魚中心にしたら痩せました。体重が落ちたら調子がいいんです」。
ジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1
【第16節ハイライト動画】花園近鉄ライナーズ vs. グリーンロケッツ東葛
前半、コイントスに勝って風上の陣地を選択した花園Lも反撃を開始。FL野中翔平キャプテン、LOベン・トゥーリスらがトライして、前半32分の時点でスコアは、15-14とGR東葛がわずか1点のリード。GR東葛はトライ後のゴールが入らなかったこともあって点差を広げられなかったが、前半終了間際にCTBマリティノ・ネマニの突破をサポートしたSHニック・フィップスがトライして、22-14と8点差をつけて前半を折り返した。
後半の序盤は花園Lが素早くボールを動かしてペースを握る。LOサナイラ・ワクァがパワフルに2トライして、22-26と逆転。しかし、花園Lの得点はここまで。後半20分、GR東葛は失点のあとのキックオフでレメキが高くボールを蹴り上げ、後藤がプレッシャーをかける。ここで花園Lのノックオンを誘ってチャンスを作ると、WTB尾又寛汰がトライ。金井のゴールも決まって、29-26と逆転に成功する。32分には、後藤が花園Lのミスボールを拾って独走トライ。もう1トライを追加して、43-26で快勝した。プレーヤーオブザマッチは、攻守に躍動した後藤輝也だった。
「入替戦に向けて勢いをつけたかった」とレメキ。「フィフィタやワクァといった突破力ある選手に抜かれると、花園Lは勢いがつく。それを止めれば怖くないと思っていた。一方、水間ヘッドコーチは「相手の強いボールキャリアーにゲインされてしまった。キックオフレシーブが上手くいかずに、主導権を握れなかった」と再三のミスを嘆いた。野中翔平キャプテンも組織プレーがばらばらになっていたことを悔やんだ。「試合前のコミュニケーション、試合中のつながりも、きょうはバラバラしたままでした。入替戦に向けてもう一度チームを立て直したいです」
試合後、まもなくD2の試合も結果が出て、入替戦の組み合わせが決まった。花園LはD2の1位浦安D-Rocksと、GR東葛は2位三重ホンダヒートとホーム&アウェイで対戦する。第1戦は三重H対GR東葛が鈴鹿(三重交通G、5月5日)で、浦安D対花園Lが宮城(ユアテックスタジアム仙台、5月7日)で開催される。
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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