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2003年オーストラリア大会 決勝 イングランド vs. オーストラリア
2003年の第5回ラグビーワールドカップ(RWC)は、オーストラリアで開催された。メイン会場はシドニー郊外のスタジム・オーストラリア(当時=テルストラスタジアム)は、2000年のシドニーオリンピックで使用されたキャパシティー8万3500人の巨大競技場だった。このスタジアムで主要試合が行われたため、決勝戦の8万2957人の最多観客数をはじめ、8万人以上を複数回記録し、大会を通して史上最多189万枚のチケットが売れた。これは、2019年大会を終えた時点でも4位の数字である。
【ラグビーワールドカップ100選!】は、空前の盛り上がりを見せた2003年大会から6試合をピックアップ。決勝戦のイングランド代表対オーストラリア代表は、初めてラグビーの母国イングランドが優勝を決めた試合として長く語り継がれるものだ。元イングランド代表CTBクライブ・ウッドワードがヘッドコーチ。キャプテンのマーティン・ジョンソン(33歳)、大会前の時点で106キャップのPRジェイソン・レナード(35歳)、178cmと小柄ながら抜群の運動量で活躍したオープンサイドFLニール・バック(34歳)らベテランが多く、「おやじ軍団」と呼ばれていた。チームの作戦を司るSOは、ラグビー界を超えた人気を誇ったジョニー・ウィルキンソン。正確なプレースキック、ドロップゴールでチームを勝利に導く。
対するオーストラリア代表のヘッドコーチは、のちに日本代表を率いることになるエディー・ジョーンズ(43歳)。スーパーラグビーのブランビーズで実績を残して2001年から代表を指揮し、FLジョージ・スミス、SHジョージ・グレーガン、SOスティーヴン・ラーカム、CTBスターリング・モートロックという世界のラグビー史上屈指の名選手を軸に準決勝ではニュージーランド代表オールブラックスを破った。そして、ホスト国として大会連覇を狙った決勝戦でもおやじ軍団を追い詰める。しかし、延長戦の結末は…。白熱の攻防は見応え十分だ。
2003年オーストラリア大会 プールB スコットランド vs. 日本
この大会では日本代表も世界的に高い評価を得た。15日間で4試合という今では考えられないタイトな日程を強いられるなかで、スコットランド代表、フランス代表という強豪国と好勝負を繰り広げる。向井昭吾監督、箕内拓郎キャプテン体制のチームの合言葉は「スピードアタック」。スクラム、ラインアウトを安定させ、相手との接点を少なくし、ラックからの素早いボール出しで小野澤宏時、大畑大介という決定力あるWTBを走らせる。すれ違いざまにディフェンスを抜き去るプレーは、試合が開催されたタウンズヴィルのファンを熱狂させた。
SH辻高志、SO廣瀬佳司の小さなHB団が活躍するスコットランド代表戦は見る者の胸を熱くする。この試合の勇敢な戦いで、日本代表は「ブレイブ・ブロッサムズ」と呼ばれるようになった。フランス代表戦では、CTB難波英樹、ジョージ・コニアのコンビネーションで胸のすくトライが生まれる。スコットランド代表戦、フランス代表戦のPR(1番)は、現在の日本代表アシスタントコーチの長谷川慎だ。そして、フィジー戦ではSOアンドリュー・ミラーが、トライ、ゴール、PG、ドロップゴールのフルハウスを決める。日本代表の「スピードアタック」が堪能できる3試合だ。
このほか、ウエールズ代表の小さなWTBシェーン・ウィリアムズ、4大会目の出場となるサモア代表CTBブライアン・リマなど各チームのレジェンドのプレーも楽しめる。オールブラックスでは、のちに2度のRWC優勝キャプテンとなるリッチー・マコウ、「キング・カーロス」と呼ばれたSOカーロス・スペンサー、鉄人LOブラッド・ソーン、そして、卓越したリーダーシップを誇ったキャプテンのルーベン・ソーンなど見返しておきたい名選手がずらり。ダン・カーターはリザーブにいる。そう、ここにあげた選手たちは、マコウを除くとすべて日本のチームでプレーした選手たちだ。若き日の姿を確認しておこう。
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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