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トヨタヴェルブリッツvs.東芝ブレイブルーパス東京
フィジカルに強みを持つ両チームが真っ向勝負を繰り広げた。3月18日(土)、名古屋市の瑞穂ラグビー場には、4,551人の観衆が集った。午前中まで降っていた雨は上がったが、冷たい風が吹き抜け、肌寒さを感じる中での戦いとなった。午後2時30分、トヨタヴェルブリッツ(トヨタV)FBティアーン・ファルコンのキックオフで激闘の幕は上がった。
立ち上がり、トヨタVのラインアウトが連続して乱れる。東芝ブレイブルーパス東京(BL東京)はLOワーナー・ディアンズがボールを奪うなど、トヨタVボールのラインアウトに徹底して圧力をかけた。「ラインアウトは狙い通りです」(BL東京リーチマイケル)、「ラインアウトは相手の方が上手でした」(トヨタV姫野和樹)という言葉通り、試合を通してトヨタVはボール確保に苦しむことになった。
前半14分、BL東京はトヨタV陣深く攻め込み、SHジャック・ストラトンがスクラムの右サイドを駆け抜けて先制トライをあげる。その後もBL東京はFB松永拓朗のカウンターアタックなどでチャンスを作るが、ノックオン、スローフォワードなどミスが出て、もどかしい時間が続いた。ようやく追加点が入ったのは前半27分だった。トヨタV陣深く入ったラインアウトからモールを押し、左オープンに展開。CTBバーガー・オーデンダールが縦に走り込み、タックルを受けつつ、オフロードパス。CTBニコラス・マクカランがトライし、12-5とリードを広げた。
前半は60%以上、BL東京がボールを確保して攻めていたが、前半31分、トヨタVはワンチャンスを生かす。自陣からSOウィリー・ルルーがキックに備えて下がっていたBL東京のWTB豊島翔平の前にハイパントを蹴り上げる。ボールが弾んだところで、走り込んだトヨタVのWTB高橋汰地がキャッチして大きく前進。好サポートのFLピーターステフ・デュトイがインゴール右中間に駆け込み、12-5とした。その後、反則の繰り返しでHO彦坂圭克がシンビン(10分間の一時退場)となるが、この窮地を7人のFWでしのぎ、前半はこのスコアのまま終了する。
ジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1
【第12節ハイライト動画】トヨタヴェルブリッツ vs. 東芝ブレイブルーパス東京
後半の序盤はリーチと姫野のぶつかり合いが観客を沸かせる。続けて2度あったが、2度目はリーチが姫野を押し戻すタックルを見せる。しかし、タックル後にクリアに手を放さなかったとしてペナルティーをとられ、これでトヨタVがPGを決め、12-8となる。スクラムでは優位に立つトヨタVだが、ラインアウトが不安定でチャンスを生かせない。後半12分、BL東京がFW第一列を交代させ、PR三上正貴、HO原田衛、PR小鍛治悠太を投入すると、流れが変わった。直後、SOトム・テイラーがゴールに迫り、ラックサイドをついてLOジェイコブ・ピアスがトライ。松永のゴールも決まって19-8とリードを広げた。
しかし、BL東京もラインアウトでミスを犯すなど波に乗り切れず、トヨタVが25分、デュトイのトライで、19-13とする。その後は両チームが息詰まる攻防を繰り広げ、好プレーとミス、反則が交互に起きるような展開となる。その戦いを観客は固唾をのんで見守った。終盤はトヨタVが猛攻をしかけ、BL東京のゴールに何度も迫った。ついに80分経過のホーンが鳴り、最後のプレーはトヨタVボールのスクラムとなる。
BL東京は8名の交代枠を使い切っていたが、オーデンダールが負傷し、最後は14人でのディフェンスとなった。トヨタVは縦攻撃を繰り返しながらディフェンダーをまん中に集め、最後はファルコンが左タッチライン際にいた交代出場のWTB山口修平にロングパスを送る。逆転するためには、トライ後のゴールも決めて7点を加えなくてはいけない。それを理解していた山口はインゴール中央に回り込もうとした。しかし、BL東京も交代出場のLO梶川喬介らが懸命に戻り、真ん中には行かせなかった。
「無理に走っていれば捕まってボールを置かせてもらえなかったと思います。東芝(BL東京)の執念を見ました」と山口修平。いわゆる「入れごろ外しごろ」の左中間からのゴールはファルコンに託されたが、ボールはわずかに左に外れた。最終スコアは、19-18。わずか1点差でBL東京が逃げ切る劇的幕切れとなった。
ファルコンのもとにトヨタVの選手たちが集まり肩を叩く。バチバチの肉弾戦を終えた両チームの選手たちは清々しい表情をしていた。「楽しい試合でした」とBL東京の徳永祥尭。「トヨタVはフィジカルバトルで自信を取り戻していると感じました」。一方、姫野和樹は「負けたのは悔しいのですが、選手の努力は誇りに思っています」と話した。「試合を通してチームの成長を感じました」。報道陣からゴールを外したティアーン・ファルコンにどんな声をかけたか問われると「ティアーン、坊主な」と返し、報道陣を笑わせた。
この結果、BL東京は勝ち点を35として、4位の横浜キヤノンイーグルスの38点と差を詰め、プレーオフ進出に向けて前進した。一方、トヨタVは7点差以内の負けに与えられるボーナス点を獲得したが、勝ち点計は24でトップ4争いからは後退した。
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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