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【ハイライト動画あり】トヨタヴェルブリッツ、ついに覚醒。今季ベストのパフォーマンスで東京サンゴリアスを破る。ジャパンラグビー リーグワン第10節レビュー
ラグビーレポート by 直江 光信彦坂圭克(トヨタヴェルブリッツ)
キックオフ前時点の順位は3位と10位。それでも何が起こるかわからないのが、国内有数の実力者がひしめくディビジョン1の戦いだ。ここまで不完全燃焼のゲームが続いていたトヨタヴェルブリッツが、10試合目にしてシーズンベストのビッグパフォーマンスを発揮し、昨季準優勝の東京サントリーサンゴリアスを撃破した。
この日のヴェルブリッツは開始直後からアクセル全開だった。本来の持ち味である強靭なフィジカルを前面に押し出し、攻守とも激しく体を当ててゲインラインバトルで優位に立つ。ブレイクダウンを力強くめくり上げ、ハードワークが身上のサンゴリアスから何度もターンオーバーを勝ち取った。
スコアボードに最初の得点が刻まれたのは前半7分だ。ゴール前スクラムからの左展開でBKがサインプレーを仕掛け、ブラインドサイドから回り込んだWTB高橋汰地が大外のスペースへロングパス。フリーでキャッチしたWTBヴィリアメ・ツイドラキが相手ディフェンダーを振り切り、左コーナーに飛び込む。
尾崎晟也(東京サンゴリアス)
サンゴリアスもその後のピンチを粘り強くしのぎ、22分過ぎにペナルティ獲得から敵陣22メートル線内へ攻め入ると、ラインアウトを起点に右オープンを攻めてラックを連取。最後はSOアーロン・クルーデンの絶妙なラストパスにWTB尾崎晟也がトップスピードで走り込み、インゴールを陥れる。5-5のイーブンに戻した。
しかしヴェルブリッツはここで気落ちせず、さらに厳しいヒットを連発してプレッシャーをかける。そして30分、スクラムで得たペナルティからゴール前ラインアウトの好機をつかむと、HO彦坂圭克が鋭くモールサイドを突いて前進。サポートしたアーリーエントリー出場のチーム第一号、慶應義塾大学4年のLOアイザイア・マプスアがピックアンドゴーですばやく持ち出し、ゴールラインを越える。
勢いに乗るヴェルブリッツはなおも意欲的にファイトし、ゲームを優勢に展開。前半終了間際にFBティアーン・ファルコンの正面35メートルのPG成功で3点を加え、15-5とリードを広げてハーフタイムを迎えた。
ジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1
【第10節ハイライト動画】東京サンゴリアス vs. トヨタヴェルブリッツ
後半もタイトな流れになる中、先に追加点を挙げたのはサンゴリアスだった。52分、キックの蹴り合いからWTB尾崎の好走で右サイドを崩すと、一連の流れでWTBテビタ・リーがフィニッシュ。SOクルーデンが難しい角度のコンバージョンを決め、12-15と追い上げる。
しかしこの日のヴェルブリッツはここからがたくましかった。強みである推進力を生かしてサンゴリアス陣内で攻撃機をつかむと、56分にBKも加わってラインアウトモールを押し込み、HO彦坂がインゴールに押さえる。これでスコアは20-12に。
サンゴリアスもその直後、得意のキックカウンター起点のアタックで敵陣レッドゾーンへ攻め込み、ラインアウトから左オープンへ展開。タックルを受けながらBKが巧みにパスをつないで、FB松島幸太朗が左中間へ駆け抜ける。
ふたたび3点差に詰め寄られたヴェルブリッツだったが、この日は疲労がピークに近づくラスト15分の時間帯に入っても勢いが衰えなかった。66分のFBファルコンのPGは惜しくも逸れたものの、高い集中力を維持してペースを掌握。敵陣でプレーを続け、サンゴリアスにジリジリと圧力をかける。
姫野和樹(トヨタヴェルブリッツ)
そして迎えた73分。中盤のラインアウトから縦横を織り交ぜたアタックでゴールラインに迫り、最後はキャプテンのFL姫野和樹が密集脇をねじ込んで勝利を決定づけるトライをマークする。サンゴリアスの反撃をラストプレーの1PGに抑えて、歓喜の拳を突き上げた。
前節までとは見違えるような戦いぶりで会心の白星を手にしたヴェルブリッツ。力感みなぎる攻守は、「実力を発揮すればどの相手をも上回れる」と評されるポテンシャルを存分に証明するものだった。この勝利は、自信を失いかけていたチームに大きな求心力をもたらすだろう。
今季4勝目となるこの勝利で勝ち点は18となり、ひとまず入替戦圏を脱出して9位に浮上。プレーオフ進出はかなり厳しい状況だが、長い眠りから覚醒し上昇の気運をつかんだ巨人の存在は、今後の対戦相手にとってまちがいなく脅威となる。リーグ終盤戦を盛り上げる存在になりそうだ。
一方のサンゴリアス。厳しい鍛錬のあとを感じさせるタフな戦いぶりで白星を積み上げてきたが、この日は接点の攻防で劣勢を強いられ、思うようにリズムに乗り切れなかった。それでも最後まであきらめず戦い抜く姿勢を維持し、ラストプレーのPGで7点差に詰めてしぶとく勝ち点1を取ったのはゆるぎなき底力の表れだ。敗戦を糧に今後どうチーム力を伸ばしていくかが注目される。
直江 光信
1975年生まれ、熊本県出身。県立熊本高校を経て、早稲田大学商学部卒業。熊本高でラグビーを始め、3年時には花園に出場した。早大時代はGWラグビークラブ所属。現役時代のポジションはCTB。著書に『早稲田ラグビー 進化への闘争』(講談社)。ラグビーを中心にフリーランスの記者として長く活動し、2024年2月からラグビーマガジンの編集長。
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