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オーストラリア代表を指揮するエディー・ジョーンズHC
元日本代表指揮官のエディー・ジョーンズ氏、昨年12月にイングランド代表HC(ヘッドコーチ)を解任されたが、1月16日にはオーストラリア協会と5年契約を結び、2023年ラグビーワールドカップで「ワラビーズ」こと、オーストラリア代表をHCとして率いることになった。
1月24日は1990年代後半から長い間、アドバイザーやコーチを務めている東京サントリーサンゴリアスの練習に顔を出していた。12月は3週間、1月上旬もサンゴリアスを指導していたジョーンズ氏に、サンゴリアスの状況を聞くと「第1戦から第5戦と見ていくと、本当にいい方向に進んでいると思います。若いチームがうまく機能している。日本代表とサントリーは、日本らしいラグビーをしてほしい」と話した。
今季から指揮官に就任した田中澄憲監督は「アグレッシブ・アタッキングラグビー」によりフォーカスし、攻撃的なラグビーで優勝を目指している。「ハードワークを続け、自分たちのプレーを振り返り、どこを改善できるかを見極めなければならない。そして目標は当然チャンピオン。しかし、それが実現するまでには長い道のりがあります」とジョーンズ氏。
ラグビーワールドカップ2023 特集ページ
もう一度、プレーオフの頃、日本に戻ってくる可能性もあるが、ジョーンズ氏が今年、さらにサンゴリアスを指導するのは現状では「難しい」という。ジョーンズ氏は2001~2005年までワラビーズを指揮し、2003年ワールドカップは惜しくも準優勝だった。それ以来となる母国のHCに就任した。
「非常にワクワクしていますし、いいチームのベースができあがっているので、日曜日(1月29日)に戻って、始動するのが楽しみで仕方ない。ワラビーズをコーチすることに非常に興奮しています。(前任者の)デイブ・レニーは本当によくやってくれた。そして、彼の良い仕事を私が引き継ぐことができればと思っています。今週、サントリーで楽しんでオーストラリアに戻りたい」。
日本代表が予選プールDで、オーストラリア代表が予選プールCのため、もし日本代表が勝ち上がると、準々決勝でオーストラリア代表と対戦する可能性もある。「そうなれば私たちは良い準備をするし、日本代表もいい準備をするでしょう。そして互いにいいラグビーができる。どのチームと対戦しても、自分のチームが本当によくプレーするということを考えます」(ジョーンズ氏)。
ワラビーズの始動日を楽しみにするエディ氏
「イングランドやアルゼンチンと対戦する日本にアドバイスをするとしたら」と聞いてみると、ジョーンズ氏は「アドバイスはありません。みんなそれぞれのチームがどんなものかを知っています。イングランド代表、アルゼンチン代表の長所も短所もみんな知っている。みんな日本代表のことを知っている。だから、アドバイスは必要ない。必要なのはハードワーク。そして、最高のコンディションでワールドカップに臨むことです」と話した。
ワラビーズでどんなラグビーをしたいかを聞かれると、「それは実際の選手を目の当たりにしてみないとわからない。なぜなら、どうプレーするかは、監督が決めることではないから。私たちにアイデアはあってもいいが、どのようにプレーしたいかを決めるのは選手です」。
「だから、ベストな30あるいは33人の選手を見つける必要がある。その選手に合ったプレースタイルはいくつかアイデアはありますが、チームをアグレッシブにしたいし、スマートであってほしい。そしてオーストラリア流のプレーをしたい」と意気込んでいる。当然、ワラビーズの指揮官としては、日本でプレーしている代表資格のある選手たちのプレーも気になるところだ。
SO(スタンドオフ)バーナード・フォーリー(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)、WTB(ウイング)マリカ・コロインベテ(埼玉パナソニックワイルドナイツ)、LO(ロック)ローリー・アーノルド(日野レッドドルフィンズ)らがプレーし、さらにケガやコンディション不良などで試合に出ていない、FLショーン・マクマーンとCTB(センター)サム・ケレヴィ(ともにサンゴリアス)、SO(スタンドオフ)クエイド・クーパー(花園近鉄ライナーズ)らもいる。もちろん、フランスなど欧州でプレーしている元ワラビーズの選手もいる。
「プレイヤーは日本も含めて、今や世界中で戦える。日本のリーグワンは成長過程にある大会です。そのレベルには本当に驚かされます。確実にレベルアップしているから、選手にとってはいい場所だと思います。(海外の選手を選ぶかは)選手自身のプレー次第です」(ジョーンズ氏)。
東京サンゴリアスの練習を見るエディ氏
海外でプレーしているオーストラリアの選手は30キャップ以上か、5シーズン以上スーパーラグビーでプレーしている場合はワラビーズに選ぶことができる。ただし現状、海外でプレーしている選手は3人までというルールがある。このルールをさらに緩和するかどうかなどは現在、議論している最中だという。
ジョーンズ氏は「海外にいるオーストラリア人選手のプレーを見ると、話し合いをしなといけといけないと感じています。何人くらいなら(海外から招集するのが)許されるのか、何人くらい必要なのか。すべては話し合いで決まります」と話すにとどめた。
また、サンゴリアスからも多くの選手を輩出しているラグビー日本代表の現状についてたずねるとジョーンズ氏は「2年間、コロナ禍で日本でのラグビーが中断され、大変な時期を過ごしてきたと思います。国際的なラグビーでのプレーも少なかったので、チームを建て直すことになりました。だからこの12ヶ月は特にハードでした」。
「ですが、ジェイミー(・ジョセフ)と、トニー・ブラウンは日本での実績が抜群です。それにいい選手が揃っています。リーチ(マイケル/東芝ブレイブルーパス東京)や稲垣(啓太/埼玉パナソニックワイルドナイツ)、松島(幸太朗/サンゴリアス)みたいないい選手が今でも健在です」。
「そして、(サンゴリアスの)齋藤(直人)、中野(将伍)のようなスター候補もいる。姫野(和樹/トヨタヴェルブリッツ)や具(智元/コベルコ神戸スティーラーズ)もいますし、いいチームの土台があります。そして、日本はワールドカップのために長い準備を続けていけるというアドバンテージがある。だからこそ、(準々決勝で対戦する可能性のある)私たちも準備を怠らない」と分析した。
2023年ワールドカップはジョーンズ氏にとって、HCとして4度目の挑戦となる。残りは7ヶ月しか残されていないが「多すぎるくらい(笑)。1週間でチームは変えられると思っています」と自信をのぞかせた。
かつて日本代表にワールドカップで24年ぶりの白星をもたらしたジョーンズ氏。「オーストラリアの成功は久しい。24年というサイクルは、いいサイクルかも知れませんね」と話すように、2023年ワールドカップではゴールド&グリーンジャージーを率いて24年ぶりの優勝を目指す。
文/写真:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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