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谷山隼大(筑波大学)
12月11日(日)、東大阪市花園ラグビー場では、全国大学選手権3回戦の注目カードのひとつ、天理大対筑波大の試合が行われた。天理大は関西大学Aリーグ2位ながら、リーグ終盤に優勝を争う京産大に競り負け、最終戦では同大にまさかの大敗。「いま勢いのある選手を先発させました」(小松節夫監督)と、同大戦から先発6名を入れ替え背水の陣を敷いた。一方の筑波大は関東大学対抗戦Aの5位ながら、早大、明大、慶大と僅差勝負を繰り広げリーグ最終戦では日体大を79-5で下して勢いに乗って花園に乗り込んできた。
午後2時、キックオフ。シーズン終盤の勢いの差が立ち上がりの攻防に表われる。怪我から復帰で期待された天理大WTBアントニオ・トゥイアキ(4年)が味方のハイパントを追った。これを筑波大NO8谷山隼大(3年)が空中戦の強さを発揮してキャッチする。トゥイアキはキャッチに入るタイミングが遅れ、空中の谷山にコンタクトしてしまう。トゥイアキは危険なプレーでシンビン(10分間の一時退場)となり、天理大はいきなり一人少ない人数で戦うことになった。
その後は筑波大の攻勢が続く。前半6分、天理大陣中盤のスクラムから右タッチライン際を攻め、SH白栄拓也(3年)がトライを奪う。シンビンのトゥイアキがいないサイドを狙った理にかなった攻めだった。続く8分、激しいタックルを繰り返して天理大からボールを奪った筑波大は再びSH白栄がトライをあげる。そして13分、ラインアウトからの攻撃でパスをつなぎ、CTB松島聡(4年)がポスト右へトライ。FB高田(※「高」は正しくは「はしご高」)賢臣(3年)がゴールを決めて、19-0とリードを広げた。
パトリック・ヴァカタ(天理大学)
天理大もNO8パトリック ヴァカタ(2年)のパワフルな突進で流れを引き寄せ、22分、そのヴァカタがラックサイドをついてトライを決める。SO福本優斗(3年)のゴールも決まって、19-7。しかし、筑波大のコンタクト局面での圧力はすさまじかった。今季のスローガン「バチバチ」を体現する力強いコンタクトで、天理のボールキャリアーを前に出さず、ボール争奪戦にも徹底して圧力をかけ続けた。攻めてはSH白栄のパスを受けたFW陣が前に出て、BKラインの攻めるスペースを作る。勢いあるプレーを続ける筑波大に楕円球の転がりも味方する。前半38分、キックの応酬で転々としたボールを確保した筑波大がトライを追加した。
ラグビー 全国大学選手権 22/23 3回戦
【ハイライト動画】天理大学 vs. 筑波大学
天理大もトライを返し、26-12で迎えた後半11分、天理大はラインアウトからのモールで筑波大のオフサイドを誘い、PKからヴァカタが速攻を仕掛け、最後はHO谷口永遠(4年)が意地のトライ。26-17と逆転可能な点差に迫った。このまま拮抗するかと思われたが、筑波大は攻撃のテンポを速め、後半16分から24分に3トライを畳みかける。モールを押し込み、SO楢本幹志朗(1年)のパス、キックでワイドなスペースを攻め、天理大のディフェンスを翻弄したものだ。スコアは43-17。最後は天理大もトライを返したが、最終スコアは50-22。接点でプレッシャーをかけ続けた筑波大の快勝だった。
「チームでやって来たことを選手たちがやり切ってくれました。1月、2月から一対一で勝ち、数でも勝つことに取り組みました。それを試合で出すことができました」(嶋崎達也監督)。木原優作キャプテンは「対抗戦では(上位チームに)勝てませんでしたが、手ごたえはありました」と自信を持ってこの試合に臨んだと話した。木原キャプテンは、試合前日、ラグビー部のホームページに「4年生の想い」として文章を寄せていた。
【今シーズン「バチバチ」というスローガンを掲げて、チームが始まったときに何度か厳しい言葉を投げかけたこともありました。けどそれは、突き放したかったのではなく、グラウンドで全員が本気になってほしかったからです。自分らの「バチバチ」というスローガンは、誰かの本気に対して本気で返すことで成り立つと思っています】。その言葉通り、全員がバチバチと前に出た勝利だった。準々決勝の舞台は、12月25日、大阪・ヨドコウ桜スタジアム。相手は関東大学リーグ戦1部優勝の東海大だ。
敗れた天理大は、ときおり連続攻撃は見せたがトライが獲りきれなかった。リーグ戦終盤に狂った歯車は攻守にかみあわないままだった。その理由を探しつつ、再起を期すことになる。プレーメイカーの福本優斗は記者会見で涙を流し、声を絞り出した。「ゲームプランを遂行する役割を果たせなくて、流れを筑波に渡してしまい、悔しく思います」。3年生以下の選手たちは、芝に膝をついた悔しさを来季にぶつける。
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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