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パトリック ・ヴァカタ
ノーサイド後、摂南大学メンバーに降り注いだ拍手が熱戦を物語っていた。
10月23日(日)、奈良・天理親里で行われた関西大学Aリーグ第4節。
2年ぶりのリーグ優勝を狙う開幕3連勝の天理大学(昨季3位)と、いまだ白星のない3敗の摂南大(同7位)との対決だった。
摂南大は、男子7人制代表などを指揮した瀬川智広監督が3年目に入り、2年前にはグラウンドやトレーニングが新調。環境面も充実し、着実に力をつける存在だ。
そんな摂南大がこの日、昨季は40失点で完封負けを喫した天理大相手に、後半30分過ぎまで6点差の熱戦を演じた。
まず光ったのが摂南大の個の力だ。
100m走のベストタイムは10秒台後半という南アフリカ出身の快足ルーキー、WTBカストン・マイケルズが韋駄天ぶりを見せる。
前半8分にキックカウンターからトップスピードでチェイス・ラインめがけて突進。俊敏なステップでFW脇を突破。ここで反則を誘発し、摂南大がPG(ペナルティゴール)成功で3点を先制した。
摂南大には全員でトライも獲り切る力もあった。
東将吾(摂南大学)
前半12分にはラインアウト起点の連続攻撃をフィニッシュ。6フェーズ目でCTB東将吾が相手NO8パトリック・ヴァカタを振り解き、ラインブレイク。最後はかつて花園を席巻した優勝7回のロイヤルブルー軍団、大阪・常翔啓光学園出身のSO大津直人がフィニッシュした。
10点をリードされた前半の天理大はフィニッシュ精度に課題。ワイド展開時のパスミスなどが続き、仕留めきれなかった。
そこで天理大はFW戦に活路。NO8ヴァカタをフィニッシャーとして3連続トライ(前半19、30、42分)を決め、流れを引き戻した。
トライ3本中2本は、強力かつ多彩なムーブがあるラインアウトモールが起点。前半42分の3本目は真っ向勝負で約20m前進し、ヴァカタがフィニッシュ。FW一丸の3連続トライを決めた天理大が、6点リード(19-13)で前半を終えた。
後半最初のトライも天理大。
ここでは展開力が復活し、エリア両端でのロングゲインを2度重ね、後半7分にWTB津野来真がリターンパスをもらって仕留めた。
これで天理大のリードは13点(26-13)。このまま天理大が後半に突き放すのか――そんなムードは直後に雲散霧消した。
摂南大が鮮やかな連続トライを決めたのだ。
まず被トライ直後、リスタートから約20秒でトライを獲る。
キックオフで相手がノックオン。これを確保するとオフロードパスを繋ぎ、近場の守備をタテ、タテと切り裂き、最後はハードヒッターであるLO徳永リオ吉平のオフロードパスを受け、HO高木崇太郎が低い姿勢でグラウンディング。
約20秒で追撃し、6点差(20-26)に迫った摂南大。
天理大は前半に続いてキックゲームで後手に回り、失トライ後に2度目のダイレクトタッチ。摂南大が得点機を迎えると、ふたたび高速のチームアタックが閃く。
摂南大は根本であるフィジカル勝負で激しかった。途中出場のアミニアシ ・ショー、FL森山迅都、CTB東将吾が迫力ある突進を重ねる。
アタックでは運動量豊富な多数ランナーがオプションとなり、相手を攪乱。全国強豪の藤森中、京都成章高と歩んできたSH藤谷龍哉主将が最適解のキャリアーにボールを運び、ゲインを切り続ける。
助走のある連続キャリーの最後を仕留めたのは、スクラムで戦い続けてきたPR原渕修人。後半14分に笑顔のフィニッシュを決め、コンバージョン成功でついに逆転(26-25)した。
しかし、ここから天理大は途中出場組を含めたメンバーが地力を発揮。一方の摂南大はスクラム戦で奮闘を続けたフロントロー(PR森山、HO高木、PR原渕)をはじめ、80分間のほとんどを先発組で闘った。
後半40分過ぎまで途中交代は2人のみ。前半28分に負傷交代のWTBガストン・マイケルズ、後半8分のヴィリアミ ・ルトゥア・アホフォノだけだった。
選手層の厚い天理大はリザーブ組も躍動し、後半21分から3連続トライを決める。
ラグビー 関西大学リーグ2022
【ハイライト動画】天理大学 vs. 摂南大学
まずはNO8ヴァカタが右隅で決定的なオフロードパスを決め、津野来真が逆転トライ。スクラムでのファウルプレーで自陣に下がるものの、ここは若狭東出身の背番号17富田凌仁のジャッカルで窮地を脱出。
さらに後半34分、背番号16の寺西翔生が突破すると、背番号21の北條拓郎がフィニッシュ。同41分にも北條が献身的なフォローからチーム7トライ目を決めた。
最終的には20点差(47-27)で決着。ボーナス点付きの勝点5を奪って開幕4連勝。「ムロオ Player of the Match」はハットトリックを決めるなどした天理大のNO8ヴァカタが受賞した。
摂南大は悔しい4連敗。しかし最終スコアにこそ反映されないものの、洗練された熱いファイトを披露した。
摂南大の次戦は11月13日(日)。同じく4連敗中の関西大学と、今季初勝利を懸けて激突する。
天理大はその一週間前の11月6日(日)、第4節で関西大に大勝(60-19)した2勝2敗の近畿大学と激突。昨年は開幕節に7-23で敗戦した因縁がある。こちらも激しい戦いになりそうだ。
多羅 正崇
スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。
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