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大塚朱紗
細川恭子、長田いろは、古田真菜が次々にジャッカルを決め、大塚朱紗が同点PGを決める。後半立ち上がりからの10分間はこの日のハイライトだった。10月23日(日本時間8:45)、女子日本代表(サクラフィフティーン)は、ラグビーワールドカップ2021プール戦第3戦(対女子イタリア代表)に臨んだ。オークランドのワイタケレ・スタジアムは気温20度、強い日差しが緑鮮やかな芝生に降り注いでいた。
キックオフ以降、20分はイタリアのペースで進んだ。短いパスをつないで素早いテンポで攻めるイタリアは、前半9分、タックルされながらのオフロードパスを連続してつなぎ、最後はWTBマリーア・マガッティが好サポートからトライをあげる。短いパスに次々に走り込むイタリアの攻撃はその後も日本を苦しめた。しかし、日本もCTB古田真菜のタックル、FL長田いろはのジャッカルなどで得点を許さない。
松田凛日
前半20分を過ぎ、ようやくイタリア陣に入った日本はFB松田凛日がディフェンスラインを突破して大きくゲインするなど連続的に攻撃を仕掛け、30分、FL細川恭子がトライして5-5に追いついた。直後のキックオフでは、WTB今釘小町が左タッチライン際でタックルをかわして前進。第2戦のアメリカ戦では上手くいかなかったキックオフのリターンでも大きく地域を戻すことができた。しかし、直後に攻め込まれ、PR加藤幸子が強いヒットのタックルを決めるも、ノットロールアウェイの反則をとられてしまう。イタリアCTBミケーラ・スィッラーリにPGを決められて、スコアは5-8。
3点を追う後半早々、日本はSHを阿部恵から津久井萌に交代させる。津久井は判断のいいパス、キックを使いながら冷静にチームをリードし、流れを日本に引き寄せた。そして、冒頭で既述の通り、ジャッカルの連発、PGで8-8の同点となる。その後は一進一退の攻防。日本はイタリアのボールキャリアーを低いタックルで止め、2人目が上体にからんでオフロードパスを許さなかった。流れを悪くしたのは、やはり反則だった。ラック周辺のボールに飛び込んでしまうペナルティを2回連続で犯し、PGを決められてしまう。スコアは、8-11。
女子ラグビーワールドカップ2021 ニュージーランド大会 プールB
【ハイライト動画】日本 vs. イタリア
後半18分、松田が自らのキックを追い、自らキャッチすればトライになるシーンがあったが、ここはバウンドが合わずにノックオン。22分には今釘が大きな相手に果敢にタックルしたが、頭部が相手の顔に当たり危険なタックルでシンビン(10分間の一時退場)となる。27分にPGを追加され、さらに攻め立てられるが、日本は相手より一人少ない14人で懸命にタックルし、ワンチャンスで逆転可能な点差で戦い続けた。後半40分、HOメリッサ・ベットーニにトライを奪われて勝利の可能性は消えたが、最後まで全力で戦う姿は見る者の胸を打った。「勇敢だった。選手たちを誇りに思う」(レスリー・マッケンジーヘッドコーチ)という言葉通りの立派な戦いだった。
スタッツ(統計数値)では、地域獲得、ボール支配率とも大きな差がないが、ボールをもって進んだ距離はイタリアの684mに対して日本は455m。パスの回数は238対149。タックル数はイタリアの118(成功率84%)に対して、日本は194(成功率77%)と苦しい試合だったことを物語る。健闘むなしく、ベスト8進出を目標に掲げたサクラフィフティーンは、プール戦3試合で勝ち点を奪うことができず大会から去ることになった。
試合後、先頭に立ってチームを引っ張ってきた南早紀キャプテンは言った。「前回のワールドカップから5年間、ここを目指してやってきて、自分たちはベスト8に行くのだという強い思いがありました。そこに届くことできず、残念な気持ちで一杯です。上手くできなかった点は、後半敵陣でプレーできなかったところ、ペナルティを多く重ねて相手にチャンスを与えてしまったところ。強豪国に勝って上に上がるためには、自分たちに何が必要か、改めて学びました。しかし、前回2017年のRWCの時とはまた違った課題が見えてきて、私たちは成長していると感じています」
再三、ディフェンスを突破した松田凜日は次を見据えた。「ただただ悔しいという気持ちしかありません。日本はディフェンスのチームだと思いますが、チャンスをものにする、トライまで繋げる力がないと、ベスト8には行けないと実感しました。次回出場できたときには、1試合目から自分のパフォーマンスが出せるように準備したい。もっとチームの得点に繋がるような、チームを勢いづける選手になりたいです」
マッケンジー・ヘッドコーチは2日前の記者会見で、「いまは目の前の試合にフォーカスしています」とした上で、こんなコメントも聞かせてくれた。「過去12カ月、スコットランド、オーストラリア、アイルランドに勝つなど、選手たちはさまざまなことを成し遂げました。女子ラグビーのイメージを上げ、日本の女性が何を成し遂げられるのかも示しました。その感情をおぼえておくこと、それを続けていくことが大切です」。強豪国に勝つための強化は始まったばかりだ。サクラフィフティーンの挑戦は終わらない。
文:村上 晃一
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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