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9月18日、東大阪市花園ラグビー場にて関西大学Aリーグが幕を開けた。開幕戦は前年の1位対8位、2位対7位という形で上位と下位が対戦。同志社大対立命大は、4位対5位でもっとも順位の接近した戦いだった。春は招待試合、春季トーナメントで2度対戦して1勝1敗。しかし、開幕前の準備には大きな違いがあった。夏合宿で関東の上位チームと練習試合を重ねた同大に対し、立命大は体調不良者が出て夏合宿ができず、9月4日に関西大学と試合形式の合同練習をしたのみ。春季トーナメント以来の試合で不安を抱えていた。
午後12時14分、立命大SO山下真之介(2年)のキックオフで試合は始まった。風上に立った同大が連続攻撃を仕掛ける。これを粘り強くしのいだ立命大は、前半6分、自陣10m付近のラインアウトから攻め、SH北村瞬太郎(3年)が右ショートサイドを抜け出し、WTB山本龍吾(4年)がタッチライン際を前進して22mラインの中に入る。山本がタックルされながら前に出てダウンボールすると、北村が素早いタイミングでボールをさばいて左オープンに展開。ロングパスをつなぎ、最後は1年生WTB御池蓮二が左コーナーに躍り込んだ。ワンチャンスをものにした胸のすくトライだった。
同大は今季からOBでサントリーサンゴリアスでも活躍した宮本啓希監督が指揮を執り、春、夏と攻撃的なラグビーを磨いてきた。選手たちは「春季トーナメントで立命に敗れた借りを返したい」と燃えていた。立命大の力強いタックルを浴びながらも、SH藤田海元(2年)、SO大島泰真(1年)を軸にボールを動かして攻め続ける。16分、立命大陣内深く攻め込んだスクラムから、CTB大槻健人(4年)、大島、FB大森広太郎(4年)とつないでトライを返し、藤田がゴールを決めて5-7と逆転する。
その後も同大が攻めるのだが、突き刺さるようなタックルを繰り返す立命大のディフェンスが目立つ展開になる。同大SH藤田がPGを決めるも、立命大CTB宮嵜隼人(3年)にトライを返され、12-10と逆転されてしまう。このスコアのまま前半は終了。前半24分、スクラムの要であるPR山本敦輝(3年)が足を痛めて退場し、スコア上も逆転され、同大にとっては苦しい試合展開になった。
ラグビー 関西大学リーグ2022
【ハイライト動画】同志社大学 vs. 立命館大学
立命大は昨年より鬼束竜太ヘッドコーチがチームを率いる。同志社大OBでワールド、宗像サニックスでプレー、同大でも2年前までアドバイザー、リクルーターとして強化に関わっていた人だ。同大の選手たちのこともよく知っている。理想を求めず、「できることから、やっていかないと」と、ディフェンスは重点的に強化してきた。そのディフェンスを教え込んだのは昨季まで同大のコーチを務めていた佐藤貴志ディフェンスアドバイザーだった。夏に試合ができなかったことで、できることを絞り込み、同大の練習試合を分析し、コンディショニングを重視して臨んだことが功を奏した。
後半に入ると、同大WTB岡野喬吾(3年)にトライされ、12-15と逆転されたが、その後も、FL江木畠悠加(2年)のジャッカルでターンオーバーするなど、粘り強く戦った。26分にはモールをじわじわと押し込み、この日攻守に躍動していたSH北村がトライし、宮嵜がゴールを決めて、19-15と逆転に成功する。
その後も、後半27分に交代出場したWTB安井拓馬(4年)が相手を仰向けに倒すタックルで前進を許さない。「膝の手術から復帰したばかりで、チャンスをもらったら流れを変えるプレーがしたかった」。安井は終了間際にも抜け出そうとした選手を追いかけて倒し、その直後、同大のパスミスにプレッシャーをかけ、ボールを確保した選手をチームメイトと4人で乗り越えて反則を誘った。終盤の立命大の気迫あふれるディフェンスは準備の確かさを証明していた。「チームの目標は大学選手権出場です。落とせない試合でした。リザーブもエナジーを出してくれて、自分たちのラグビーができました」(HO中川魁キャプテン)。
プレーヤーオブザマッチは、立命大のSH北村瞬太郎。攻守にチームの勢いを引き出し、勝ち点「4」獲得に大きく貢献した。同大も7点差以内の負けのボーナス点「1」を獲得。まだ開幕戦であり、今後の順位争いは予断を許さない。しかし、今季の全国大学選手権の出場枠が関西3チームということを考えれば、立命大にとって計り知れない価値がある勝利だった。
文:村上 晃一
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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