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日本代表キャプテン 坂手淳史
第1戦に完敗したウルグアイ代表はリベンジに燃えていた。いま、南北アメリカ大陸でアルゼンチンに次いで2番目に強いチームとして簡単に負けるわけにはいかない。試合前練習も、国歌斉唱時の表情も一週間前とは違う緊張感が漂っていた。この1カ月、2チーム制で強化を図ってきた日本代表は、代表予備軍(NDS)で固めた先週から大幅にメンバー変え、主力選手を軸にしたメンバーで臨んだ。7月にはヨーロッパ王者フランス代表との2試合が控えている(7月2日、9日)。主力選手たちにとっては3連戦のスタートとなる大切な試合を前に、その表情は引き締まっていた。
会場となったミクニワールドスタジアム北九州は、午前中、雷雨に見舞われた。一時は開催が危ぶまれたが、午後には天候が回復し予定通り行われることになった。大半が日本代表のレプリカジャージーをまとった観客は、11,664人。午後3時2分、日本代表SO山沢拓也がウルグアイ代表陣深くにキックオフのボールを蹴り上げる。これを猛然と追ったのはWTBシオサイア・フィフィタだった。キャッチした選手を一発のタックルで倒して観客を沸かせる。
前半5分、日本代表はウルグアイ代表ゴールライン手前5mのラインアウトからモールを押し込み、HO坂手淳史が右コーナーにトライ。5-0とする。立ち上がり5分の攻防の中でラインアウトにミスがあったものの、FB野口竜司が正確なハイパントでチャンスを作るなど集中力の高いプレーが光った。9分、16分、23分と山沢がPGを決めて、14-0。点差は広がったが、ここから日本代表の反則が多くなる。ウルグアイ代表の攻撃を寸断しようと、ボール争奪戦でターンオーバーを狙うリーチ マイケルのジャッカルも連続でペナルティとなり、自陣に押し込まれてしまう。
日本代表 梶村祐介
ウルグアイ代表の猛攻を粘り強く耐えた日本代表は、38分、ウルグアイ代表BKのパスミスを逃さず、CTB梶村祐介がボールを足にかけて前に出た。この日がテストマッチデビューのWTBゲラード・ファンデンヒーファーが転々とするボールをさらにキック、最後はCTBディラン・ライリーがディフェンダーに競り勝ってインゴールで押さえた。トライを許さず、ミスに乗じて取り切った価値あるトライだった。スコアは19-0。坂手キャプテンはハーフタイムでロッカールームに戻ろうとするチームメイトを呼び止め、フィールド内で円陣を組んだ。この日の日本代表は、反則、ミスはあったものの気のゆるみは微塵も感じさせなかった。
後半10分、ゴール前のラインアウトからモールを押し込み、FLベン・ガンターがトライをあげる。続く15分、同じように右ラインアウトからモールを組み、左に動きつつ、ディフェンダーがモールに吸い寄せられたところで、右のショートサイドをSH齋藤直人、WTBファンデンヒーファーで攻め、右コーナーにトライ。29-0と差を広げ、勝敗はほぼ決した。21分、山沢のトライへのパスをウルグアイ代表が叩き落とし、ペナルティートライの判定でスコアは36-0。24分にはラインアウトからの攻撃でNO8ファウルア・マキシがディフェンスラインを突破。最後は梶村につないでダメ押しのトライをあげた。
日本代表 ファウルア・マキシ
後半の日本代表は次々に控え選手を投入した。10分にはLOサナイラ・ワクァが登場して代表デビューを飾る。22分、FL古川聖人が登場し観客席からひときわ大きな拍手が送られた。古川は北九州市を本拠地に活動する鞘ヶ谷ラグビースクール出身。25分には同じ鞘ヶ谷RSでプレーしたWTB中野将伍も登場し、地元スクール出身者が2人そろってプレーする稀有な時間となった。この日は3人が日本代表戦デビューを飾ったが、後半22分、山沢に代わって登場した21歳の李承信も歴史を刻んだ。大阪朝鮮高級学校出身選手では初のテストマッチ出場の快挙である。
終盤は疲れもあって反則の増えた日本代表だが、ウルグアイ代表を1トライ、1ゴールに抑え、43-7で快勝した。「我々にとっていいスタートになりました。魂のこもったウルグアイに対して、よいパフォーマンスをした選手を誇りに思います」(ジェイミー・ジョセフ日本代表ヘッドコーチ)。「まず、テストマッチに勝ったことが収穫。もっともっとレベルを上げたい」(坂手淳史キャプテン)。ベテランのリーチ マイケルは「メンバーがみんなセームページ(同じ画)を見てプレーできたのは良かったです。坂手は素晴らしいリーダーシップを発揮したし、山沢、李もいいゲームリードをしました。課題は、連続したペナルティ、簡単なミスでしょう」と冷静に試合を振り返った。このメンバーで戦う3連戦の初戦としてはまずますの内容だろう。
ラグビー日本代表テストマッチ2022
【ハイライト】日本 vs. ウルグアイ(06/25)
一方、ウルグアイ代表も21歳のWTBバウティスタ・バッソが代表デビューを飾ったほか、若い選手にチャンスを与えることができた。CTBアンドレス・ビラセカキャプテンは、「我々のチームは若く、何かを学んで帰ろうという意欲を持っていました。とてもよい経験ができたと思います」と前向きに語り、日本のおもてなしにも感謝した。その後、スタンドを一周し、お辞儀をするウルグアイ代表に対し、日本代表サポーターは立ち上がって拍手し、健闘を称えた。2019年のラグビーワールドカップ日本大会を思い出させる雰囲気の中で日本代表対ウルグアイ代表の2連戦は幕を閉じた。次はこの夏対戦する最強の相手フランス代表戦だ。新生・日本代表がどんなメンバー編成で臨むのか。楽しみは尽きない。
文:村上 晃一
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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