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根塚洸雅
日本ラグビー協会はテストマッチ(国代表同士の試合)に認定された試合に出場した選手に飾り帽(キャップ)を贈る。以降は5キャップごとに帽子につける星が贈られるのが伝統だ。キャップ数は日本でプレーする選手の名誉の称号だ。その初の栄誉に9名の選手が浴した。その一人であるWTB根塚洸雅は言った。「最初は緊張していたのですが、ファンの皆さんが日本代表のジャージーを着て応援してくださっている姿を見て、今日はいい1日になったと感じました。最高のキャップがもらえました」
6月18日(土)、秩父宮ラグビー場には14,448人の観客が集った。「ほとんど」と言ってもいい数のファンが日本代表のレプリカジャージーをまとっていた。世界ランキングは日本代表が10位、ウルグアイ代表が19位だが、両チームとも2023年のラグビーワールドカップを見据えて若い選手を数多く起用しており、実力は未知数だった。午後3時6分、南米の雄ウルグアイ代表のキックオフで試合は始まった。
立ち上がりから主導権を握った日本代表はゴール前のラインアウトからモールや、サインプレーで仕掛けるがウルグアイ代表にサインを読まれるなど決定機を作れない。優位に立つスクラムからNO8テビタ・タタフがサイドアタックでゴールに迫るもボールをこぼしてトライならず。ようやくトライをあげたのは前半10分だった。ウルグアイ代表ゴール前5mの右ラインアウトから左に展開し、PR淺岡俊亮、CTBラファエレ ティモシーが縦に走り込む。ディフェンスを集めたところで最後はFB尾崎晟也のロングパスを受けたWTB根塚洸雅がインゴール左中間にトライ。田村優のゴールは決まらず、5-0となる。
防戦一方のウルグアイ代表はオフサイドなど反則が多く、前半16分、FLルカス・ビアンキがシンビン(10分間の一時退場)に。4分後には日本代表FB尾崎も空中のボールを競り合った際、先にジャンプした相手選手にコンタクトしたとしてシンビンになってしまう。互いにPGを決めあって、8-3となった前半終了間際、日本代表はラインアウトからの攻撃で現在127kgあるというタタフがSH小川高廣のパスを受けて突進。タックラーを弾き飛ばすのかと思いきや、細かいステップワークで2人をかわし、ゴール中央に躍り込む。15-3として前半は終了。
堀越康介
ハーフタイム。日本代表のアランド・ソアカイコーチは「プレーしたいエリアではプレーできている」とコメントした。プラン通り戦略的キックを使いながら地域は獲得できている。しかし、仕留めきれていないということだ。観客席の雰囲気が重く感じたのも、胸のすくアタックが少なかったからだろう。後半4分、日本代表がそんな空気を払しょくする素早い攻撃を披露する。相手陣22mライン付近の右ラインアウトからの攻撃で、タタフが縦に走り込み、それをサポートしたFL山本浩輝がパスを受けて突破、右にサポートしたHO堀越康介がトライをあげたのだ。観客席に弾けるような笑顔が広がった。田村のゴールも決まって、22-3と突き放す。
流れをつかんだかに見えた日本代表だが、後半17分、根塚がハイパントを上げた際、前にいた選手がボールの落下地点から10m下がらないというオフサイドの反則を犯す。ここからタッチキック、ラインアウト、そして入替で入ったばかりのLOディエゴ・マニョにラックサイドを突かれてトライを奪われる。スコアは、22-8。失点に直結する手痛い反則だった。
日野剛志
後半18分、20分と日本代表は一気に6名のリザーブ選手を投入する。そのうち5名は初キャップの選手たちだった。期待に応えてFBメイン平、HO日野剛志らがアグレッシブなプレーで流れを引き寄せる。日野は23分、32分とラインアウトのモールから連続トライをあげ観客席を沸かせた。最後は、ウルグアイ代表NO8マヌエル・アルダオにトライを返され、34-15とされたが、そのままノーサイド。国を背負って戦う緊張感の中で勝利をつかんだ。
日本代表とNDS(ナショナル・デベロップメント・スコッド)は2グループ体制の強化を行ってきた。ウルグアイ代表との第1戦は経験の浅い選手が多いNDSが戦った。「80分間ゲームを支配していました。2週間で取り組んだアタック、ディフェンスもできていた。特にディフェンスは相手にスペースを与えず、機能していました」と堀川隆延ヘッドコーチは短い準備期間でプランを遂行した選手を称えた。若い選手たちを引っ張った田村優キャプテンは「相手が元気なうちは、そう上手くはいきません。ジャブを打ち続けるだけでした。最後に日本代表に流れが来ましたね」と、圧力をかけ続けた時間があったからこその勝利だと話した。
ラグビー日本代表テストマッチ2022
【ハイライト】日本 vs. ウルグアイ(06/18)
ジェイミー・ジョセフ日本代表ヘッドコーチはFW前5人の健闘をたたえた。「スクラム、ラインアウトは素晴らしかったです。LO大戸裕矢はFW第三列のように動いていた。FW前5人(1番から5番)がよく仕事してくれたからこそ、タタフが強いランを見せることができたということでしょう」。2グループ制はこれで終了。NDSからPR三浦昌悟、LO辻雄康、LO ヴィンピー・ファンデルヴァルト、NO8テビタ・タタフが宮崎で合宿する日本代表に合流し、ウルグアイ代表との第2戦、フランス代表との2試合に向かう。ジョセフヘッドコーチは、「2グループ制は成功した。コーチ陣も見たい選手を選出できたし、同じ環境づくりをして練習と試合ができた」と、選手層を分厚くできたことを評価した。次のウルグアイ代表戦も、そのメンバー編成から楽しみだ。
文:村上 晃一
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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