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EMERGING BLOSSOMS vs. TONGA SAMURAI XV
このチャリティーマッチは、1月にトンガ北部の海底火山で起きた大規模噴火の影響による被災者の救援と、復興支援を目的に行われる。6月11日(土)、午後1時、秩父宮ラグビー場(東京都港区)にてキックオフ。対戦するのは日本でプレーするトンガ出身選手を主体にした「TONGA SAMURAI XV(トンガ・サムライフィフティーン)」と、日本代表候補選手で固めた「EMERGING BLOSSOMS(エマージング・ブロッサムズ)」だ。
トンガ・サムライの指揮を執る元日本代表のラトゥ ウィリアム志南利監督は、次のようにコメントしている。「トンガの選手一人一人は、トンガ王国の復興のために力になりたい、そしてお世話になった日本に恩返したい、そういう熱いハートをもって出場します。試合はトンガ王国でもテレビ中継されます。トンガ王国には復興に向かう勇気を与え、日本の皆様には恩返しの気持ちをお伝えできるよう、全力でプレーします」
TONGA SAMURAI XV スターティングメンバー
トンガ・サムライのキャプテンを務めるのは、スピアーズ船橋・東京ベイからの退団が発表されたばかりのFLバツベイ シオネ(39歳)。日本代表8キャップを持つベテランだ。今回は日本代表の選考から漏れたPR中島イシレリ(神戸スティーラーズ)、SOレメキ ロマノ ラヴァ(グリーンロケッツ東葛)、加えてリーグワンで活躍したLOエセイ・ハアンガナ(埼玉ワイルドナイツ)、NO8ナエアタ ルイ(レッドハリケーンズ大阪)などが並ぶ強力な布陣だ。日本でプレーするトンガ人選手はSHの人材が不足しているため、先発SHはトンガ人の父と日本人の母を持つ岡新之助タフォキタウが務め、リザーブには花園近鉄ライナーズの人羅奎太郎が入る。人羅は「話を聞いたときにチャンスが回ってきたと思いました。日本代表選手と戦うことでアピールになる。ハイテンポでボールを動かしたい」と話す。
現在、日本代表候補選手たちは日本代表とNDS(ナショナル・デベロップメント・スコッド)の2グループに分かれて強化合宿を行っている。エマージング・ブロッサムズは、NDSの合宿に参加する32名から選考された。堀川隆延ヘッドコーチは「ジェイミー・ジョセフ日本代表ヘッドコーチとコミュニケーションをとって、日本代表に近いメンバーを先発させました」と説明した。
EMERGING BLOSSOMS スターティングメンバー
BKは豪華だ。日本代表13キャップのSH茂野海人(トヨタヴェルブリッツ)、68キャップのSO田村優(横浜イーグルス)がHB団を務める。キャプテンも務める田村は若手の教育係でNDSに参加しているようにも見えるが、そうではないらしい。本人は、トンガ・サムライとの試合、ウルグアイ代表との第1戦に好パフォーマンスをして日本代表に返り咲こうとしている。「2週間はこのチームにフルコミットして、僕の持っているものを全部出し切ろうと思っています。久しぶりにフレッシュな気持ちでラグビーできている。それが嬉しいです」。CTBは立川理道(スピアーズ船橋・東京ベイ)、ラファエレ ティモシー(神戸スティーラーズ)という経験豊富な選手に加え、WTBはリーグワン初代新人賞を受賞した根塚洸雅(スピアーズ船橋・東京ベイ)、埼玉ワイルドナイツのトライゲッター竹山晃暉、そして、FBは東京サンゴリアス尾崎晟也というフレッシュなバックスリーが並ぶ。
FWはNDSのバイスキャプテンを務めるHO堀越康介(東京サンゴリアス)、日本代表18キャップのLOヴィンピー・ファンデルヴァルト(レッドハリケーンズ大阪)ら経験ある選手もいるが、8人中5人がノンキャップ。東京サンゴリアスのLO辻雄康、ブレイブルーパス東京のFLシオネ・ラベマイなど今後日本代表での活躍が期待される選手が多い。ファンデルヴァルト選手から「日本代表で長くプレーできる選手」と高い評価を得た辻は「代表になれるように一歩ずつ積み重ねてきました。先発に選んでいただいて嬉しいし、チャンスだと感じております」と丁寧な言葉に強い思いを込めた。
フィジカル自慢のトンガの選手たちに対して、日本代表に最も近い選手たちがどんなプレーを見せるのか。田村、立川、ラファエレの高いスキルのパス交換は楽しみだし、スクラム、ラインアウトを安定させてトライを重ねるところも見てみたい。一方でトンガの選手たちの個々の強さ、ハードタックルなど派手なプレーで観客を沸かせてほしいという思いもある。いまや日本の多くのチームにトンガ出身の選手がおり、日本とトンガの繋がりは深まるばかりだ。観客の皆さんもきっと両チームを応援するだろう。「感謝」、「恩返し」という言葉が似あう試合だが、日本代表を狙う選手にとってはセレクションの意味合いもある。温かいけど激しい戦いになるはずだ。リーグワンや、テストマッチとは一味違ったラグビーを多くの人に楽しんでもらいたい。
文:村上 晃一
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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