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勝った埼玉ワイルドナイツのロビー・ディーンズ監督は言った。「選手一人一人のパフォーマンスに心から満足しています。両チームにはワールドクラスのプレーヤーがいて、彼らがハードワークしなければならない試合でした。それこそがこの試合のレベルを示しています」
松田力也
2月26日、熊谷ラグビー場には7,106人の観衆が集った。午後1時36分、今季もっとも充実するチーム同士の戦いが幕を開ける。序盤の主導権を握ったのはサンゴリアスだった。前半3分、ワイルドナイツSO松田力也にPGを決められたが、NO8ショーン・マクマーンのジャッカルで反則を誘い、ワイルドナイツ陣深く入ってのラインアウトを獲得する。ここからの連続攻撃の中でCTBサム・ケレビが突進。ディフェンスを集めて、最後はSO田村煕のロングパスを受けたPR石原慎太郎が左中間にトライを決めた。
ダミアン・マッケンジー
FBダミアン・マッケンジーがPGを加え、10-3とリードしたサンゴリアスは、17分、マッケンジーのカウンターアタックからFL小澤直輝、CTB中村亮土、WTB中野将伍らがパスをつなぎ、最後は、FL下川甲嗣が好サポートからトライをあげる。マッケンジーのゴールも決まって、17-3。しかし、サンゴリアスがハイテンポの攻撃でワイルドナイツに圧力をかけたのはここまでだった。
直後のキックオフで、サンゴリアスはタックラーに対する進路妨害の反則を犯し、このPKからワイルドナイツSO松田がタッチキック。ゴールラインに迫ったラインアウトからのサインプレーで、FLベン・ガンターがトライをあげた。ラインアウトからモールを押すことなく、あっさりとボールを出してのトライで、17-10。相手の反則、ミスを確実に得点に結びつけるワイルドナイツの集中力はさらに研ぎ澄まされていた。
前半20分以降、ワイルドナイツはディフェンスでプレッシャーをかけ続け、サンゴリアスは反則を繰り返す。21分、マクマーンの故意のノックオンのPKから松田がPGを決めて17-13の4点差。後半38分、ゴール前のラインアウトから今度はモールを押し込んでHO坂手淳史がトライ。松田がゴールを決めて、20-17と逆転した。ワイルドナイツの真の強さが垣間見えたのは直後のキックオフだった。サンゴリアスはLOハリー・ホッキングスが蹴り上げられたボールをキャッチして一気にワイルドナイツゴールに迫る。しかし、ワイルドナイツのディフェンスはすぐに整い、攻められそうなスペースをあっという間に埋めた。サンゴリアスから見て右タッチオイン際でのFB山沢拓也のディフェンスも堅実だった。ここで失点しなかったことが後半の加点につながる。
ジャパンラグビー リーグワン2022 ディビジョン1
【第7節ハイライト】埼玉ワイルドナイツ vs. 東京サンゴリアス
マリカ・コロインベテ
後半のサンゴリアスは無得点。ワイルドナイツは、相手の反則を誘っては松田が3本のPGを決めて、29-17。そして、最後の仕上げは、ディフェンスから切り返すワイルドナイツの真骨頂が発揮された。ハーフウェイライン付近でサンゴリアスがキャッチミスすると、すかさずFLラクラン・ボーシェーが拾い上げて左方向のCTBディラン・ライリーにパス、ボールはWTBマリカ・コロインベテに渡り、オーストラリア代表のトライゲッターでもあるコロインベテが左タッチライン際を「爆走」と書きなくなる走りで大きく前進。最後は右にサポートしていたライリーがトライをあげた。コロインベテの左には山沢もサポートしていた。相手のミスに瞬時に反応して各選手が的確に動くワイルドナイツの強さが表現されたトライで、最終スコアは、34-17。リードされても慌てず、第3節からの連勝を「5」に伸ばした。
「前半20分の内容は良かった」とサンゴリアスのミルトン・ヘイグ監督。中村亮土キャプテンほか各選手からも同じ言葉が発せられた。クイックテンポで戦えたのは20分で、以降はブレイクダウンでも圧力を受けて、テンポの良いボールが出せなかったということだ。前半だけでペナルティーが「10」。苦しんだサンゴリアスとは対照的に、ワイルドナイツのペナルティーは「3」。坂手淳史キャプテンは「前半の最初は反則を連続で犯してトライされましたが、どんな反則を取られているのかレフリーとコミュニケーションをとって修正できました」と、上手くいかない状況に対処できたと淡々と振り返った。
ワイルドナイツは次節(3月5日)、大阪に乗り込んでレッドハリケーンズ大阪と対戦。今季初黒星を喫したサンゴリアスは、2位に後退。3月4日、秩父宮ラグビー場のナイター試合で神戸スティーラーズと対戦する。
文:村上 晃一
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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