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ラグビー コラム 2022年1月4日

令和4年1月7日、ラグビー新時代が幕を開ける ジャパンラグビーリーグワンへの期待

村上晃一ラグビーコラム by 村上 晃一
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プレスカンファレンス

2022年が始まり、1月7日、今後の日本ラグビーをけん引するジャパンラグビーリーグワンが開幕する。新国立競技場で、トップリーグ最後の王者・埼玉パナソニックワイルドナイツと、優勝候補の一角であるクボタスピアーズ船橋・東京ベイが相対する好カードだ。新し時代の幕開けにふさわしい戦いを期待したい。

リーグワンに参加するのは24チームだ。最上位のディビジョン1には、精鋭12クラブが顔をそろえる。初代王者をめぐる戦いはし烈だ。前述の2チームに加え、東京サントリーサンゴリアスコベルコ神戸スティーラーズトヨタヴェルブリッツあたりが戦力的には優勝を争いそうだ。しかし、サンゴリアスをトップリーグ優勝に導いた沢木敬介監督が率いる横浜キヤノンイーグルス、最後のトップリーグで大躍進のNTTドコモレッドハリケーンズ大阪ら、どのチームも波乱を起こす力はあり、開幕戦から目の離せない戦いが続くことになる。ディビジョン2(6チーム)、ディビジョン3(6チーム)は昇格を目指してしのぎを削る。1と2の下位3チーム、2と3の上位3チームが入替戦を行う。シーズン最後まで緊張感ある戦いが繰り広げられるだろう。

リーグワンはトップリーグとどう違うのですか?そんな質問を良く受ける。もっとも違うのは、試合の主管権が日本ラグビー協会から各チームに移ることだ。スタジアムもこれまではリーグとしてアレンジしていたが、各チームが確保する。「ホーム&アウェイ」と言わず、「ホスト&ビジター」という言葉を使い、ホストチームが試合を主催し、チケットを販売し、各種イベントなどを行うことになる。

プロフェッショナルなチーム経営が求められており、興行として成功すればチームの収益も上がる。各スタジアムのファンサービスには独自性が出てくるだろう。お客さんを呼ぶためには質の高い試合をする必要があり、強化も加速するはずだ。従来の企業スポーツから脱却し、協賛各社、ホストエリアの自治体などと連携し、さまざまな価値を創り出す動きはすでに始まっている。

たとえば、コベルコ神戸スティーラーズは1月8日、ホストゲーム開幕戦(神戸ユニバー記念競技場)で「真っ赤なTシャツあげちゃいます!」という企画でスタジアムを真っ赤に染める。NTTドコモレッドハリケーンズ大阪は、1月2日から15日までの2週間、Osaka Metro御堂筋線車両にラグビー場を再現した車内ジャックを実施。1月9日(ヨドコウ桜スタジアム)、1月15日(ヤンマースタジアム長居)のホストゲームを盛り上げる。

こうしたファンサービスとは別に社会に必要とされるリーグとなるための動きもある。トヨタヴェルブリッツは、第3節(1月22日、豊田スタジアム)のレッドハリケーンズ大阪戦で、日本ラグビー界初の試みである「センサリールーム」を設置。プレスリリースにはこうある。【普段、人混みへの外出やスタジアムでのスポーツ観戦が困難な特性をお持ちの方に、安心して観戦できるスペースを準備し、ご招待いたします。SDGsの「だれも置き去りにしない、よりよい社会づくり」の考えに賛同し、トヨタヴェルブリッツは、全ての人達がラグビーを安心して楽しんでいただける環境づくりに努めてまいります】。※センサリールーム=明るすぎない照度と大きな音・声などの大音量を遮る遮音が施され、人混みや周囲の視線が避けられた安心できる部屋のこと。

いち早く新会社を設立した静岡ブルーレヴズ(前・ヤマハ発動機ジュビロ)は、 浜松市、磐田市、袋井市、掛川市と、4市合同パートナー協定を締結した。【双方の資源を有効に活用した協働による活動を推進し、市民の健康増進、地域の活性化などスポーツを活用したまちづくりの推進を図ることを目的としたパートナー協定】とのこと。地域になくてはならない存在になろうとする取り組みだ。

リーグワンが担う活動は幅広い。これらに加えて重要な役割が、日本代表のレベルアップを後押しすることだ。2023年のラグビーワールドカップまで2年を切った今、今季のリーグワンで実力を発揮した選手がチャンスをつかむことになる。個々の選手のモチベーションは高く、日本代表入りを目指しての争いも見どころの一つとなる。

楽しみは尽きないが、シーズンを目前にして、NECグリーンロケッツ東葛の新戦力だったブレイク・ファーガソンが12月30日、違法薬物所持で逮捕された。シドニー出身で191センチ、102キロの体躯を誇るWTBとして期待された31歳だ。1月2日、グリーンロケッツ東葛はファーガソンとの契約を解除した。

日本ラグビーフットボール協会の森重隆会長は「当協会では平素より、コンプライアンスを遵守しインテグリティを追求することをラグビーの根幹をなす極めて重要な柱と位置づけ、教育と対策に取り組んでおります。ラグビー界全体での教育と対策が不十分であったことと真摯に受け止め改善に努めたい」とコメントした。今回の不祥事は選手の管理、指導が甘いと言わざるを得ない。真摯にラグビーに取り組むことでファンや子供たちに夢を与え、世界一のリーグになろうとしているのではないのか。

NECは会社名で「チームではこれまでコンプライアンス遵守の徹底と日々の注意喚起を行っておりましたが、結果的に新規契約選手への周知・徹底などの取組みが不十分であったと言わざるを得ず、今回の事態に至ったことを厳粛に受け止めております」とコメント。今後は事実関係の徹底分析に基づく最終的な再発防止策の提言に向けて調査委員会を設置するという。

この一件を、一選手の愚かな行動と片付けず、リーグ全体で今一度襟を正してほしい。リーグワンの各チームは、すでに多くの自治体と連携し、協賛各社とラグビーの新たな価値創造を行っている。ファンクラブを組織し、アカデミーを整備するなど、もはや一企業が所有する私的なクラブではない。それこそがリーグワンの価値だ。愚かな行動がどれだけ多くの人を悲しませるのかを肝に銘じてほしい。そして、グラウンド内外でのチーム関係者、選手のフェアで品位ある振る舞いにより、人々から支持されるリーグになってもらいたい。

文:村上 晃一

村上晃一

村上 晃一

ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。

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