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明治大学 vs. 天理大学
4回戦屈指の好カードは、3シーズンぶりの優勝を目指す明大が前王者・天理大をスクラムで圧倒し、27-17で勝利。12月26日、秩父宮ラグビー場で行われる準々決勝(対早大)に駒を進めた。
12月18日、東大阪市花園ラグビー場は冷たい空気が肌を刺した。昨季の準決勝と同じ顔合わせとなった戦いは、午後2時、明大ボールのキックオフで始まった。天理大のミスから攻勢に出て、ファーストスクラムは相手ボールも、猛プッシュして反則を誘う。「春、夏に対戦して天理がどういうスクラムを組むのかが分かっていました。しっかり間合いをとって、ヒット、チェイスができて、いいスクラムが組めました」(明大PR大賀宗志、3年)。
ここは得点につながらなかったが、大賀の言葉通り明大はこの後もスクラムでプレッシャーをかけ続けた。前半9分、天理大SO福本優斗(2年)にPGを決められたが、13分、天理大陣22mライン上のスクラムをぐっと押し込むと、SH飯沼蓮キャプテン(4年)がガラ空きになった右サイドを突破してそのままトライ。26分には、天理大ゴール前で連続攻撃を仕掛け、ディフェンスを左サイドに集めたところで、CTB廣瀬雄也(2年)が右タッチライン際のWTB松本純弥(4年)にキックパス。松本が走り込みながらキャッチして、インゴールに駆け込み、12-3とする。
防戦一方の天理大は、なんとか局面を打開しようと自陣から仕掛けようとするが、ミスでつながらず、ボールを奪い返そうとして反則を犯すなど、規律が守れない時間が続いた。前半終了間際には、明大CTB江藤良が左中間に飛び込んで、17-3と点差が広がる。決定打となったのは、後半17分のペナルティートライだった。明大が天理大ゴールに迫って連続攻撃を仕掛けると、天理大のディフェンスラインがオフサイドの反則。ゴールポストのほぼ正面でPKを得た明大は、PGを狙わず、スクラムを選択する。そして8人でまとまって押し込むと、天理のスクラムが崩れ、真継丈友紀レフリーはペナルティートライを宣した。天理が反則を犯さなければ、そのままトライになったという判定だ。これでスコアは、24-3となる。
ラグビー 全国大学選手権 21/22 4回戦
【ハイライト】明治大学 vs. 天理大学
これで勝負あったかと思われたが、天理大は気持ちを奮い立たせて反撃に出る。直後のキックオフで天理大のLOナイバルワガ セタが激しいタックルを決め、一気にターンオーバー。FL服部航大(4年)がトライを奪い、24-10。「ペナルティートライをとってスキが出てしまった」(飯沼キャプテン)。続く21分には、セタの弟のWTBナイバルワガ トマシ(1年)が自陣10mライン付近から独特のステップでタックルをかわしながら60mを独走してトライ。SO福本が難しいゴールも決めて、24-17と、1トライ1ゴール差に迫った。
明大の窮地を救ったのは、やはりスクラムだった。25分、天理大ゴール前でPKを得ると、自信のあるスクラムを選択する。ここで天理大は、スクラムの流れを変えるためにPR松野楓舞(1年)を投入する。FW第一列はすべて先発から入れ替わった。しかし、ここでも明大が圧力をかけ、たまらず崩れた天理大にイエローカード(10分間の一時退場)が示される。天理大にとって不運なことに、チームとしての反則の繰り返しでシンビンになったのは入ったばかりの松野だった。
明治大学 vs. 天理大学
33分、明大の齋藤誉哉(3年)がPGを追加して、27-17。それでも天理大はあきらめずに攻め込み、明大ゴールに迫った。時間は後半36分、残り時間はわずかだ。CTBマナセ・ハビリが力強い突破でゴールラインまであと2mに迫る。時間をかけずにトライできれば逆転の可能性はあった。しかし、ここで飯沼キャプテンが値千金のジャッカル。ボールをがっちりつかんで反則を誘い、ピンチを脱出する。ほぼ勝利が確定した瞬間だった。「対抗戦で2敗してキャプテンとして悩んだ時もありましたが、きょうは自分のパフォーマンスでリーダーシップをとると言っていました」(飯沼キャプテン)。その言葉通りのプレーで勝利を呼び込んだわけだ。
明大の神鳥裕之監督は「想定通りの厳しい試合で、最後まであきらめない天理に苦しめられましたが、そのプレッシャーをはねのけてくれました」と選手を称えた。「セットプレーで優位に立てば試合も優位になるのがラグビー。選手も自信になったと思います。これを次の早大戦につなげたいです」。スクラムで主導権を握り続けたからこその勝利だが、SO伊藤耕太郎(2年)が、「BKでトライをとりきれないところがあった」と話したように、FW戦の優位性をスコアにつなげることができなかったのは準々決勝の早大戦でも課題となる。
敗れた天理大の小松節夫監督は、「これほどスクラムを押されたのは久しぶりです。明治の間合いで組まれてしまい、対応力がなかったですね」と寂しげに話した。ここ数年、関東の強豪校と互角以上に戦えたのはスクラムが安定していたからこそだ。そこが崩れてしまっては勝つのは難しい。「試合をしながら成長したかったので、ここで負けて残念です」。優勝チームから主力が複数抜け、メンバー編成を試行錯誤しながらここまでレベルアップしてきただけに無念の表情だった。
文:村上 晃一
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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