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天理大学
関西の大学ラグビーを引っ張ってきた好敵手の意地とプライドがぶつかり合う激闘だった。前節で京産大と近畿大の1、2位は確定しており、3、4位の順位決定戦となったが、昨季の学生王者・天理大と、春の関西王者・同大はひたすらに目の前の勝利を追いかけた。その思いが見る者の胸を打った。
同大の南光希キャプテンは言っていた。「大学選手権に向けて、いいスタートを切りたいです」。天理大の小松節夫監督は「このチームはまだまだ伸びる。刺激を与えたい」と、リーグ戦デビューとなるSO福本優斗(2年)、WTBナイバルワガ トマシ(1年)を抜擢。FWの主軸であるアシペリ・モアラ(4年)をリザーブに回して、CTBマナセ・ハビリ(2年)、WTBアントニオ・トゥイアキ(3年)を先発させ、BKにボールキープ力のある選手を並べた。この試合は、すでに大学選手権の出場権を得ている両チームにとって、学生日本一に向かっての再スタートの戦いでもあった。
午後2時5分、久保修平レフリーの笛で激闘の幕が開いた。前半4分、同大がSO嘉納一千(2年)のPGで先制するが、天理大もSH北條拓郎(2年)、SO福本のテンポの速いパス回しで連続攻撃を仕掛ける。これをLO南、FL小島雅登(3年)らを筆頭に前に出るタックルで食い止める同大。集中力の高い攻防の攻防の中で同大PR山本敦輝(2年)が力強いジャッカルでピンチを防ぐ。
天理大学 佐藤康キャプテン
スコアが動き始めたのは、前半20分を過ぎてから。23分、天理大SO福本がPGを決め、29分には天理大が同大ゴール前のラインアウトからモールを押し込んで、キャプテンのHO佐藤康(4年)がトライをあげる。難しい角度のゴールを福本が決めて、10-3。直後の32分、同大の切り札2人がトライを生み出す。天理大のハイパントを自陣22mライン付近でキャッチした嘉納からボールはFB山口楓斗(4年)へ。山口は持ち前のスピードでディフェンダーをかわしながら一気に相手陣に入るとWTB和田悠一郎(4年)にパス。学生屈指のトライゲッターである和田がインゴールまで駆け抜け、嘉納のゴールも決まって10-10の同点となる。
ラグビー 関西大学リーグ2021
【ハイライト】同志社大学 vs. 天理大学
反撃に出る天理大だが自陣でのパスが乱れ、このボールを確保したNO8木原音弥(4年)から左タッチライン際の和田にパスがわたり連続トライ。10-15と同大がリードして前半が終了する。立ち上がりからエンジン全開で飛ばす両チームだが、その勢いは後半に入っても衰えなかった。後半2分、天理大がラインアウトからモールを押し込み、その後もFW陣が次々に突進してHO佐藤がトライ。逆転に成功する。しかし、同大もSO嘉納が逆転PGを決めて、スコアは、17-18。後半14分、同大の和田がゴールラインに迫ると、天理大WTBトゥイアキがこれを食い止めようと襟首をつかんで倒す反則を犯してしまう。ペナルティートライが同大に与えられ、トゥイアキはシンビン(10分間の一時退場処分)となる。これでスコアは、17-25。しかし、天理大は14人で連続攻撃を仕掛け、この10分を無失点でしのぐ。そして、後半34分、CTBマナセが、LO亀沖泰輝(4年)のオフロードパスを受け、タックルをはじきながらトライし、24-25と1点差に迫った。
福本優斗(天理大学)
劇的瞬間は、後半40分を過ぎたロスタイムに訪れた。天理の猛攻に防戦一方となっていた同大が相手のパスを叩き落とすインテンショナルノックオンの反則を犯す。地点は22mラインの左中間よりタッチライン寄りの位置。天理大はここでPGを狙う選択をした。キッカーはこの日がデビュー戦となった福本。ここまですべてのゴールを決めていた福本は「緊張しましたが、ここで決めてやると思ったし、自信はありました」とこれを成功させる。最終スコアは、27-25。ノーサイドの笛が鳴り、天理大の3位が確定した。「スコアで離されそうなとき、よく我慢してくれました」と小松監督。「福本が入ったことでBKのラインスピードが上がった面もあった。BKのミスはありましたが、積極的なミスだと思っています」と選手権に向けても手ごたえを感じたようだ。福本はプレーヤーオブザマッチにも選出され、初起用の期待に応えた。
同大の伊藤紀晶ヘッドコーチは「内容は悪くないのですが、ちょっとしたミスから失点していました。精度を上げて全国大会に臨みたいです」と話し、南キャプテンは「自分たちのミス、気のゆるみのところを全国大会に向けて直していきたい」と選手権を見すえた。たけびしスタジアム京都に集った観客は、4,449人。最後まで全力で戦い抜いた両チームに温かな拍手を送っていた。
文:村上 晃一
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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