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ラグビー コラム 2021年11月24日

【ハイライト動画あり】早稲田、慶應を破り対抗戦優勝に望み 第98回早慶戦は前後半で真逆の展開に

村上晃一ラグビーコラム by 村上 晃一
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第98回目のラグビー早慶戦は例年通り11月23日に行われ、早大が勝って関東大学対抗戦Aの優勝に望みをつないだ。空は前日までの雨がウソのように晴れ渡り、秩父宮ラグビー場の芝はまぶしいほどに輝いていた。バックスタンド裏のイチョウ並木も含め、大正11年に始まった定期戦が脈々と歴史を繋いできたことに感謝したくなる景色が広がっていた。

観客は制限付きのなかで、1万597人。まんべんなくスタンドを埋めた。午後2時、早大ボールのキックオフ。慶大は蹴り返さず、徹底して連続攻撃を仕掛けた。猛攻をしのいだ早大は、前半5分、ゴール前でパスを受けたNO8佐藤健次(1年)が体を反転させてタックルをかわしてトライ。SO伊藤大祐(2年)のゴールも決まって7-0とリードする。

自陣から攻撃を仕掛ける慶大に対し、早大はCTB長田智希キャプテン(4年)の力強いタックルなどで反則、ミスを誘う。対する慶大も、FL山本凱(4年)のジャッカルで攻撃を寸断、一歩も引かない。拮抗した状況を打破したのは、やはりこの人、早大FB河瀬諒介(4年)だった。前半17分、攻撃ラインに参加して一人二人とタックルをかわすと、FL相良昌彦(3年)にパス。トライ、ゴールが決まって、14-0とする。

慶大も21分、早大の反則で得たPKからタッチキックで早大陣深くのラインアウトを得る。今季の強みであるモールを組んで、約15mを押し込んでHO原田衛キャプテン(4年)がトライ。5点を返す。早大は慶大得意のモールを組ませないように、ジャンパーが競り合うディフェンスを選択したが、この日はそれがうまく機能しなかった。

しかし、アタック面では早大が決定力を見せつける。29分にラックサイドでSH宮尾正彦(1年)からパスを受けたHO原朋輝(4年)が抜け出し、21-5とリードを広げると、34分、圧巻のトライが生まれる。自陣で慶大の攻撃を食い止め、パスミスで転がったボールを、SO伊藤が慶大陣に蹴り込む。伊藤は転々とするボールをさらにドリブル、綺麗に縦回転で転がったボールがはね上がったところをキャッチしてポスト下に飛び込んだ。観客を驚かせるトライで28-5とすると、前半終了間際には佐藤健次がモールの中でいったん奪われかけたボールを再び奪い返してトライし、35-5とした。

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このまま早大の快勝かと思われたが、「後半の入りに受けていた」と早大の大田尾竜彦監督が話した通り、後半7分には慶大がスクラムで押し込んで反則を誘い、ラインアウトからのモールで反撃のトライ。14分にもモールからHO原田がトライし、スコアは、35-19と、2トライ2ゴール差に詰まった。早大は後半頭からキャプテンの長田がベンチに下がり、後半なかばにSO伊藤が負傷退場。ゲームをコントロールする選手が不在となって、意思統一がとれずにちぐはぐな動きとなる。後半31分、SH宮尾のトライで40-19として勝利をほぼ手中にしたが、その後も慶大に2トライを奪われた。

慶大の最後の2トライは見事だった。36分、この日大活躍のHO原田がモールを押し込んでトライ。終了間際には、早大のディフェンスが前に出てきたところで、SO中楠一期(3年)がキックパス。右タッチライン際にいたCTB鬼木崇(3年)がスピードをつけてキャッチするとそのまま約40mを駆け抜けてインゴールに駆け込んだ。中楠のゴールも決まって、40-33。7点差以内の負けに与えられるボーナス点を獲得して、大学選手権出場権を確かなものにした。原田キャプテンは、「後半は点を取るしかない、と攻めました。アタックの時間を増やそう、自陣からでも攻めよう、と」と、先頭に立ってチームを引っ張った。

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勝った早大だが、監督、選手に満足感はなかった。「前半上手くいっていたことが、後半も上手くいくとは限らない。慶應がプランを変えてきたことに対応できていなかった。しかし、結果として長田がいないときの経験が積めたし、バラバラのなかで誰が意思統一を図るのか、よい経験ができました」。大田尾監督は難しい状況を経験できたことをポジティブにとらえた。プレーヤーオブザマッチに選ばれた佐藤健次は、「スクラムを押され、ラインアウトのモールでトライされたあとの切り替えに課題があった」と話した。

早大は12月5日、明大戦に臨む。この試合で出た課題を克服して勝つことができるか。慶大は12月4日、6戦全勝の帝京大と対戦する。慶大が勝てば、早明戦が優勝決定戦になる可能性があり、見逃せない試合だ。早慶戦の通算対戦成績は、早大の71勝20敗7分けとなった。

文:村上 晃一

村上晃一

村上 晃一

ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。

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