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飯沼蓮主将(10/24 明治大学vs.帝京大学)
FWとBK、縦と横を組み合わせた剛柔自在のアタックで貫禄の勝利を重ねてきた明治大学に対し、重量FWの強烈な推進力を押し出して白星を積み上げてきた帝京大学。ともにここまで5戦全勝、難敵を相手に快勝し勢いに乗る両校の激突は、関東大学対抗戦だけでなく大学選手権の優勝争いをも左右する重要な一戦となった。
対抗戦3連覇を狙う明治大学は、10月24日の第4節で今季好調の筑波大学から9トライを挙げて53-14と圧勝したことで、不完全燃焼のゲームが続いた序盤戦の停滞ムードを一掃した。続く11月3日の慶應義塾大学戦でも得意のセットプレーを軸にしたアタックで前半24-5と先行すると、後半も安定した試合運びで主導権を握る。昨季は1点差で苦杯を喫した相手に46-17で完勝し、今年6月に就任した神鳥裕之監督は「価値ある一勝」と高く評価した。
ここ2試合で特に目を引くのは、FW陣の充実だ。フィジカルバトルで激しく体を当てて圧力をかけ、ボール争奪局面を支配。ともに191cmの山本嶺二郎、武内慎の両LOに185cmのFL木戸大士郎と高さのあるジャンパーを3人擁し、攻守の起点となるラインアウトで優位に立てる点も大きい。頑健なモールはそれ自体が得点源になるだけでなく、膠着した状況で突破口を開くチャンスの源泉にもなっている。
FWが前に出て相手ディフェンスを崩すことで、好ランナーが並ぶBKの展開力もより生きるようになった。キャプテンのSH飯沼蓮とコンビを組むSO伊藤耕太郎が試合を重ねるごとに存在感を増し、タックラーの間を縫うようなスラロームランでBKラインを牽引。バックスリーの要であるFB雲山弘貴がケガから復帰し、蹴り合いで先手をとれるようになったことも大きなプラス材料だ。
細木康太郎主将(11/3 早稲田大学 vs. 帝京大学)
3季ぶりの対抗戦優勝、さらには大学選手権での王座奪還に燃える帝京大学は、前節の早稲田大学戦で大きな白星をつかんだ。PR細木康太郎主将がリードするスクラムで相手を圧倒し、たたみかけるような猛攻で5トライを奪った戦いぶりは、全盛時の迫力を彷彿させた。終盤に早稲田大学の反撃を受け7点差まで詰め寄られたものの、スコア以上の快勝といっていい内容で、選手たちの自信はさらに深まっただろう。
快進撃の原動力となっているFW陣にとって、今回の明治大学戦は真価を証明する最高の舞台だ。紫紺の強力パックを相手に接近戦、とりわけスクラムで前に出ることができれば、チームは俄然勢いづく。消耗を最小限にとどめつつ、いいエリアでFWの強みを存分に引き出すためには、SO高本幹也を中心するBKがいかにキックを効果的に使って陣地を進められるかも、ひとつの焦点となるだろう。
48時間前に発表された登録メンバーをチェックすると、明治大学は前節の慶應義塾大学戦から先発2人を入れ替えた。PR山本耕生、HO田森海音は変わらず、右PRに大賀宗志を起用。4番山本嶺二郎、5番武内慎、6番木戸大士郎、7番福田陸人、8番大石康太も、引き続きスターターを務める。HBはSH飯沼蓮とSO伊藤耕太郎の不動のコンビで、CTB陣は12番廣瀬雄也と13番江藤良のペア。バックスリーは11番に石田吉平、14番に松本純弥が2試合ぶりに復帰し、15番雲山弘貴が最後尾に構える布陣だ。
一方の帝京大学は、早稲田大学戦を欠場したFL青木恵斗とNO8奥井章仁の2人が復帰する。FW第1列はPR照内寿明、HO江良颯、PR細木康太郎の3人で、LO陣は江里口真弘と1年生の本橋拓馬という並び。バックローは6番青木、7番山添圭祐、NO8奥井という強力な顔ぶれだ。BKは前節とまったく同じ先発メンバーで、HB団は1年生のSH李錦寿と3年生のSO高本幹也がタクトを振るう。以下、11番に高本とむ、12番に押川敦治、13番志和池豊馬、14番白國亮大、15番には二村莞司が入る。
現在両者の勝ち点差は2で、明治大学がこの試合でボーナス点付きの勝利を手にすれば、優勝争いは明治大学と早稲田大学の2校に絞られる。11月23日の早慶戦で早稲田大学が勝ち点5を挙げた場合は12月5日の早明戦まで決定が持ち越されるが、明治大学はそこで勝ち点1でも取れば優勝という圧倒的に有利な状況になる。逆に帝京大学は何としても明治大学戦を制して全勝を維持し、最終節の慶應義塾大学戦(12月4日)に優勝をかけて臨みたいところだろう。
なお、11月12日に発表された大学選手権の組み合わせを見ると、対抗戦1位が第1シード、2位は第2シードに入ることが決まった。2位と同じヤマには対抗戦3位が入り、準々決勝で対抗戦の再戦となる可能性がある。これにより、11月20日の結果はいっそう重い意味を持つこととなった。
過去5年の対抗戦での対戦成績を振り返れば、2016、2017年度は帝京大学が勝利しているものの、2018年度以降は明治大学が3連勝中。対抗戦の順位も2018年度まで帝京大学が6連覇した後、過去2年は明治大学が優勝を遂げている。明治大学が連勝を伸ばすのか。あるいは帝京大学が3季ぶりのVに王手をかけるのか。この秋最初の公式戦開催日を迎える秩父宮ラグビー場は、大きな熱気に包まれるだろう。
文:直江 光信
直江 光信
スポーツライター。1975年熊本市生まれ。熊本高校→早稲田大学卒。熊本高校でラグビーを始め、3年時には花園に出場した。著書に「早稲田ラグビー 進化への闘争」(講談社)。現在、ラグビーマガジンを中心にフリーランスの記者として活動している。
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