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10月9日、東京の江戸川区陸上競技場では関東大学対抗戦Aの2試合が行われた。第1試合は、2連勝スタートの早大と、前節、慶大を破った筑波大の対戦だった。毎試合、テーマを設ける今季の早大は、筑波との戦いに「ハード」を掲げた。個人では激しく、組織としては堅いプレーをしていこうという意味が込められている。
谷山隼大(筑波大)
午前11時30分、早大SO吉村紘(3年)のキックオフで注目の一戦が幕を開けた。いきなりハードなディフェンスを見せたのは筑波大だった。自陣中盤のラインアウトから攻めた早大は、大きく左タッチライン際へボールを動かし、ここでできたポイントから右オープンへ展開しようとたが、タッチライン際のボール争奪戦に筑波大が激しく圧力をかけ、ターンオーバーに成功する。直後の筑波大ボールのスクラムからは怪我から復帰したWTB谷山隼大(2年)がFWの背後から攻撃参加してチャンスを作った。ここは早大のディフェンスが粘ったが、筑波大はスクラム、ラインアウトから準備したプレーを次々に繰り出した。
河瀬諒介(早稲田大)
前半19分、筑波大は早大陣深く攻め入った右ラインアウトから連続攻撃を仕掛け、FB松永貫汰キャプテン(4年)がタックルをずらしながら、左タッチライン際のWTB一口直貴(3年)へパス。このパスが通っていればトライだっただろう。しかし、早大のFB河瀬諒介(4年)がパスコースに入っていたため、このボールが後ろに流れて転々とする。ボールを拾った河瀬はタックルを振り切って約70mを独走。トライかと思われたが、一口とSO浅見亮太郎がなんとか戻ってトライを防いだ。互いにプレッシャーをかけあい、ミス、反則でボールは行ったり来たり。その度、両チームとも素早く反応してスコアは動かなかった。
前半27分、PGチャンスを得た筑波大は浅見がPGを狙ったが、強い風を意識し過ぎたのか失敗。前半34分には筑波大HO肥田晃季(3年)が危険なタックルでシンビン(10分間の一時退場)の処分を受ける。強くヒットしようとするあまり、バインドせずに肩だけでヒットしてしまう反則だった。その後、14人の筑波大は松永が2度ドロップゴールを狙ったが、いずれもゴールをそれた。無得点のまま前半終了かと思われたロスタイム。早大が筑波大ゴールライン直前右中間のスクラムを得る。スクラムでは優位に立っていた早大は、押しながらボールを出すと、CTB長田智希キャプテン(4年)が、ディフェンダーを内側へのステップでかわし、そのままインゴールへ躍り込む。吉村のゴールも決まって、7―0。筑波大FWはスクラムで圧力を受けたことでディフェンスの出足が遅れた。
ラグビー 関東大学対抗戦2021
【ハイライト】筑波大学 vs. 早稲田大学
後半も先にトライをあげたのは早大だった。前半5分、早大SH宮尾昌典(1年)が筑波大のディフェンス背後にキックし、蹴り返されたボールをタッチライン際でキャッチして中央に大きくパス。カウンターアタックから河瀬がディフェンスを突破し、長田につないでトライ。吉村のゴールも決まって、14-0とする。14分には、長田の縦突進で筑波大のディフェンスを乱し、河瀬がインゴールへ。チームとしてこの日3本目のトライ、ゴールも成功し、21-0と突き放した。
筑波大
しかし、筑波大はあきらめなかった。嶋サキ(山に竒)達也監督が「よく体を当てていた」と話した通り、この後もコンタクト局面で圧力をかけ続け、早大の攻撃を思うようにさせない。後半24分には、素早いテンポでボールを動かし、CTB松島聡(3年)のトライと、浅見のゴールで21-7。36分には、早大陣中盤の左ラインアウトからボールをつなぎ、SH鈴村淳史(4年)がトライをあげ、ゴールも決まって21-14の7点差に迫った。7点差の負けに与えられるボーナス点を獲得したが、反撃はここまで。その後はチャンスを作れなかった。
筑波大は後半30分にもハイタックルで谷山がシンビンになり、14人で戦う時間帯が20分もあった。規律面は今後の課題だが、チーム全体で前に出続ける意識は高く、10月24日の明大戦も楽しみだ。PR木原優作(3年)はシンビンになったHO肥田に代わってラインアウトのスローイングを無難にこなしたほか、フィールドプレーでも読みのいいボール確保などで活躍した。敗れはしたが筑波大の個々の選手の奮闘も称えたい。
プレイヤーオブザマッチに選ばれた河瀬諒介(早稲田大)
「3本のトライ差がついたところで、4本目、5本目を取れるチャンスがあったのに、取り切れなかったとことはレベルアップが必要です。ディフェンス面では筑波大がボールを持っている時間が長い中でよく我慢したと思います」。早大の大田尾竜彦監督は、苦しい中で勝ち切った選手たちを評価した。プレイヤーオブザマッチは、個人技でチャンスを作り、試合の流れを呼び込んだ河瀬諒介が選ばれた。
文:村上 晃一
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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