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優勝したパナソニック ワイルドナイツ
振り返れば、印象に残った試合、シーンがいくつも浮かぶ。コロナ禍でさまざまな困難に見舞われながら、世界のスーパースターが多数参戦したことに加えて、新しい力も台頭。18年にわたって日本ラグビーをけん引したトップリーグにふさわしい最後のシーズンだった。
最後の王者を決めるプレーオフトーナメントも僅差勝負が多かったが、準々決勝以降の戦いも白熱の攻防が続いた。残念ながら、リコーブラックラムズの複数の選手に新型コロナウイルス感染症の陽性反応が出て、5月9日に予定されていたサントリーサンゴリアスとの準々決勝は中止になったが、実施された他の3試合はどれも見どころ満載の戦いだった。
5月8日、熊本のえがお健康スタジアムで行われたトヨタ自動車ヴェルブリッツ対NTTドコモレッドハリケーンズはスコアが二転三転するシーソーゲームになった。TJ・ペレナラを軸にトップリーグ序盤戦を盛り上げたNTTドコモの実力は本物だった。SOマーティ・バンクスのPGで先制すると、フィジカルの強さには定評のあるトヨタ自動車に対してボール争奪戦で健闘し、CTBパエアミフィポセチのトライなどで前半を15-11とリードする。最終的にはトヨタ自動車がWTBヘンリージェイミーの逆転トライで試合を決めたが、最後まで目の離せない展開だった。
5月8日、熊谷ラグビー場で行われたパナソニック ワイルドナイツ対キヤノンイーグルスは、レギュラーシーズンではパナソニックが47-0と完封したカード。しかしキヤノンは沢木敬介監督のもと着実に力をつけ、SO田村優キャプテンのトライなどで僅差勝負に持ち込む。最後はパナソニックが地力を見せるのだが、WTB福岡堅樹のずば抜けた個人技によるトライは永久保存版。
立川理道(クボタ)
5月9日、静岡エコパスタジアムで行われた神戸製鋼コベルコスティーラズとクボタスピアーズは勢いの差が出た。先発に抜擢されたSH谷口和洋のパスさばきもよく、前半17分でクボタが17-0とリード。ところがSOバーナード・フォーリーが危険なタックルでレッドカードを受ける。残り時間をクボタは14人で戦うことになる。絶体絶命のピンチだったが、キャプテンの立川理道がSOに入って巧みにゲームを操り、ボールキープを心掛け、最後まであきらめずに戦い抜いた。最終スコアは、23-21。神戸製鋼のリーグ戦連勝は24で止まった。
準決勝は5月15日と16日の2日間、東大阪市花園ラグビー場で行われた。ここからは第58回日本選手権も兼ねた。まずはパナソニックとトヨタ自動車が対戦し、後半20分までは大接戦になる。パナソニック福岡と、トヨタ自動車高橋汰地のWTB対決は必見。福岡が先制トライを奪えば、高橋が2トライして15-5とトヨタがリード。前半16分のトライは、福岡、ディラン・ライリー、野口竜二というパナソニックが誇るBK陣を次々にかわしてのトライで、のちに日本代表入りする高橋の評価を大いに高めるプレーだった。しかし、福岡も負けてはいない。後半37分にはこの日3本目のトライをあげてトヨタを突き放すのだ。
ボーデン・バレット(サントリー)
16日の準決勝はサントリーサンゴリアスがレギュラーシーズンとは違う戦いを見せる。雨のコンディションもあったのだが、SOボーデン・バレット、SH流大が防御背後へのキックを多用し、緩急織り交ぜた攻撃でクボタの防御にプレッシャーをかけ続けた。サントリーのトライは、江見翔太の1本のみだったが、バレットが6PG、1ドロップゴールを決めて快勝した。
福岡堅樹(パナソニック)
迎えた決勝戦は、5月23日、秩父宮ラグビー場で行われた。コロナ禍の制限で、4,668人という観客数だったが、選手、スタッフへの感謝の横断幕が掲げられるなど温かい空気に包まれた。そのなかで実力をいかんなく発揮したのは、パナソニックだった。前半5分、バレットのパスをインターセプトしてディラン・ライリーが独走トライ。SO松田力也の2PG、WTB福岡のトライで前半30分の時点で20-0とリードする。バレットのスピードあるランを粘り強いディフェンスで止めるなど、攻守にパナソニックの動きが光った。しかし、サントリーも後半は反撃し、SH齋藤直人のトライなどで食い下がる。最終スコアは、31-26。パナソニックは4シーズンぶりの優勝を飾った。トップリーグの歴史を締めくくるファイナルは、何度でも見返す価値のある戦いだ。
文:村上 晃一
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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