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勝ち越すのはどっち?必見の第3テストマッチ ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズは先発6名変更、ファフ・デクラーク負傷欠場の南アフリカはどう戦う?
村上晃一ラグビーコラム by 村上 晃一南アフリカ vs. B&Iライオンズスターティングメンバー
いよいよ正真正銘のファイナル。決着戦だ。12年ぶりのブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズの南アフリカ遠征の最終戦は、8月7日(土)、ケープタウン・スタジアムで行われる。ライオンズの遠征通算成績はここまで5勝2敗で勝ち越しを決めているが、ライオンズのツアーが成功したと言えるかどうかは、南アフリカ代表スプリングボクスとのテストマッチ3連戦で勝ち越すかどうかにかかっている。
B&Iライオンズスターティングメンバー
7月24日の第1戦は22-17でライオンズが先勝し、7月31日の第2戦は、27-9で南アフリカが快勝した。第2戦では南アフリカのスクラムの圧力、徹底したキック戦略にライオンズが後手を踏んだ感があった。タックル成功率は96%という高率ながら、27点を奪われている。このあたり第3戦はメンバー編成が注目されていたが、最後尾のFBには、キック処理に安定感のあるリーアム・ウィリアムズ(ウェールズ)が先発する。
ウィリアムズも含めて、ライオンズは先発で6名の変更がある。スクラム最前列の1番は、第1テストマッチでメンバー入りしながら直前の怪我で欠場したウィン・ジョーンズ(ウェールズ)。HOはルーク・カーワン ディッキーに代わってケン・オーウェンズ(ウェールズ)が入る。3番のPRタイグ・ファーロング(アイルランド)以下、8番までは3戦連続の先発だ。
SHは先週のコナー・マレーに変わって、第1戦でも先発したSHアリ・プライス(スコットランド)、インサイドCTB(12番)は突破力抜群のバンディ・アキがライオンズでのテストマッチデビューとなる。先週12番のロビー・ヘンショー(アイルランド)は13番に回った。注目は14番のWTBジョシュ・アダムズ(ウェールズ)だ。ツアー序盤戦でトライを量産しながら、テストマッチのメンバーからは外れていた。ボールを持っていないときも動き続ける選手だけに南アフリカにとって嫌な存在だろう。ゲームをコントロールするSOは3戦連続でキック戦略に長けるダン・ビガー(ウェールズ)だが、控えのSOがオーウェン・ファレルではなく、スコットランドのファンタジスタ、フィン・ラッセルになったのは注目だ。ラッセルは出場すればライオンズでのテストマッチデビューとなる。
ライオンズは不動のFWバックファイブ、4番マロ・イトジェ(イングランド)、5番アラン ウィン・ジョーンズ(ウェールズ)、6番コートニー・ローズ(イングランド)、7番トム・カリー(イングランド)、NO8ジャック・コナン(アイルランド)が南アフリカとのフィジカルバトルで体を張る。キャプテンのジョーンズは、これがライオンズのテストマッチ12試合連続での出場。この偉業は長く語り継がれるだろう。
南アフリカ代表スターティングメンバー
対する南アフリカは、攻守の軸であるSOファフ・デクラークが足の筋肉を傷め、FLピーター ステフ・デュトイが肩を痛めて欠場する。この緊急事態にジャック・ニーナバーヘッドコーチは、ベテランSHコーバス・ライナーを起用。ライナーのプレッシャー下での高いパフォーマンスに期待する。身長200cmのデュトイに代わっては、第1、2戦はLO(5番)で先発した身長198cmのフランコ・モスタートを7番で起用する。南アフリカは、7番がブラインドサイドFLで、6番のオープンサイドFLはキャプテンのシヤ・コリシだ。そして、5番には先週、途中出場でパワフルなプレーを披露したルード・デヤハー(身長205cm)が先発する。4番のLOエベン・エツベスは3戦連続の先発で、フィジカルでは世界最強といわれる南アフリカのなかでのビッグ3を並べた。フィジカルバトルでライオンズに徹底して圧力をかけるだろう。
NO8は第2戦に引き続いて、ヤスパー・ヴィザが務める。CTBダミアン・デアエンディは50キャップ目のメモリアル。このほか不動のメンバーが並ぶが、リザーブに2016年以来の代表復帰となるSOモルネ・ステインが入った。モルネ・ステインといえば、前回(2009年)のライオンズ来征の際、第2テストマッチで勝ち越しを決めるロングPGを決めた経験豊富なプレーメイカーだ。先発のSOハンドレ・ポラードに不測の事態が起きても、十分に穴を埋められる、心強い存在だ。
第1戦で敗れたとき、南アフリカのディレクター・オブ・ラグビー、ラッシー・エラスマスは、レフリーの判定がアンフェアだとSNSで世界に発信し物議をかもした。ワールドラグビーはレフリーの立場を傷つける行為としてエラスムスの行動を批判している。しかし、映像を駆使して1時間以上、ボール争奪戦、オフサイド、ファールプレーなどで南アフリカに不利な判定があったとする主張は説得力があった。あの映像をレフリーが見れば少なからず影響は受けるだろう。ボール争奪戦、オフサイド、フォールプレーを丁寧に判定するようになるという意味だ。第2戦でその影響が出たとは言えないが、実力が拮抗する両者の戦いは、レフリングも勝敗を分ける要素になる。
南アフリカには強気のプレーが光るデクラークがいない。これまで以上に、シンプルに9番、10番、15番のキックを軸にフィジカルで圧倒しようとするだろう。ライオンズのウォーレン・ガットランドヘッドコーチは「もっとラグビーがしたい」と言った。キック主体のフィジカルバトルだけではなく、ボールをテンポよく動かす攻撃を仕掛けたいという意味だ。12年前に続いて南アフリカが勝ち越すのか。24年ぶりにライオンズの勝ち越しか。見逃せない試合は、8月7日(土)、日本時間の深夜1時にキックオフされる。
文:村上 晃一
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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