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ラグビー新リーグの「リーグONE(ワン)」の初代王者を目指す神戸製鋼コベルコスティーラーズに次々に有力選手が加入している。話題の一人が、東芝ブレイブルーパスから移籍のLO小瀧尚弘だ。身長194cm、体重110kgのサイズでパワフルにプレーし、2015-2016シーズンのトップリーグで新人賞を受賞。日本代表10キャップを獲得し、サンウルブズでもプレーした。しかし、本人は期待に応えるパフォーマンスはできていないと感じてきた。何かを変えなくてはいけない。小瀧が出した答えは神戸製鋼への移籍だった。すでに神戸に引っ越し、新生活も始まっている。新しいチーム、そして新リーグへの抱負を聞いた。
小瀧尚弘選手
――新たな場所でプレーしようと思った理由を聞かせてください。
「2019年のラグビーワールドカップ(RWC)での日本代表を見て、僕もあんな活躍をしたいと思ったし、もっと成長したいと思いました。東芝でプロ選手になる道も考えたのですが、選択肢を狭めないように、いくつかのチームに話を聞きました。その中で一番熱意を感じ、来てほしいという話をしてくださったのが神戸製鋼だったのです」
――この決断は、2023年のRWCに出場することも視野に入っていますね。
「狙っていきたいです。日本代表に選ばれたことはありますが、大した活躍ができていないと感じていました。自分が抜けたあとの日本代表がRWCで素晴らしい活躍をしました。嬉しい反面、悔しい気持ちもありました。自分も成長して、ラグビー選手として成功したいと思いました」
――6年間プレーした東芝を去ることに躊躇はありましたか。
「僕を育ててくれたチームです。悩みぬいて結論を出しました。去る時にはこみあげてくるものがあって、みんなの前で号泣しました。仲間意識が強いチームだったので、批判は覚悟の上でしたが、みんなが『頑張って』、『応援しているから』と声をかけくれて、泣けてきました」
――神戸製鋼というチームにはどんな印象を持っていましたか。
「プロ選手が多く、実力至上主義の冷たい感じのチームなのかと思っていたのですが、チームマネージャーの藤高之さんがすごく優しく接してくださって、選手の方々もすごく温かかったです。ガチガチに緊張感をもって頑張っていかないといけないと思っていたので、少し安心しました」
――プレーヤーとしての自分を高めたいのはどんなところですか。
「これまでは、個人的に細かなパスや、きれいにタックルに入るなどディテールの練習をしていなかったので、スキル的なものを高めたいです。移籍を決める前、神戸製鋼のコーチ陣とミーティングしたのですが、これまでの僕のプレーを分析して、できている部分、足りない部分を指摘してくれました。かなり詳細な内容でこんなにも必要としてくれているのかと感じたのも移籍を決めた要因の一つです。課題をクリアして、自分の成長につなげたいです」
――すでに神戸に引っ越したようですね。住む場所は自分で探したのですか。
「いいところを見つけたと思ったら、タッチの差で先に決めた方がいて、リモート内見(内部見学)で決めました」
――神戸という町については、どんなイメージを持っていましたか。
「すごい町で、ギラギラしているのかなと思っていたら、来てみると静かで綺麗な町並みが続き、住みやすいところだと感じました。大学時代は八王子市、社会人では府中市に住みました。僕が神戸で住む地域は府中市に近いと感じていて、落ち着いて暮らしています」
――美味しいものは見つけましたか。
「家の近くに神戸牛の食べ放題の焼肉屋さんがあって、このクオリティーで食べ放題はすごいと思える良い店を見つけました。これからチームのみなさんにも聞いて、少しずつ回って行こうと思っています」
――一番好きな食べ物は何ですか。
「卵料理です。卵は一日に10個くらい食べています。最近は、朝に卵4個を使ったオムレツを食べ、ゆで卵を昼と夜に3個ずつくらい食べます。少し脂肪を落とそうと思っていて、たんぱく質を摂取するために食べているところもあるのですが、好きだから苦ではなく、いくらでも食べられます」
――来年から新しいリーグ「リーグONE」が開幕します。トップリーグからどんな変化があると思いますか。
「海外出身の選手が増えるでしょうね。特にロックのポジションは海外出身の選手が多く、競争率も高まるでしょう。そこは頑張らなきゃいけないと思っています」
――リーグONEは、地域社会との連携も重視されます。
「僕自身が神戸を好きになり、地域の皆さんに応援してもらえるようにプレーで見せていきたいと思っています」
――赤いジャージーを着てみた感想は。
「帝京大学からずっと赤いジャージーを着ていますので、しっくりきています」
――クラブハウスなどの施設はどうですか。
「新しいクラブハウスは、まだ利用していませんが、外から見るだけでもすごいです。会社のサポートの手厚さを感じますね」
――神戸製鋼の選手で、学ぶのを楽しみにている選手はいますか。
「退団されましたが、ブロディー・レタリック選手のプレーは、どうしてこんなプレーがきるのだろうと繰り返し見ていました。一緒に出ていた張硯煥(チャン・ソクファン)選手は、強さもあり、細かいプレーもできる選手ですね。たとえば、僕ならSHからパスを受けたらそのまま突っ込みますが、張選手はスペースがあればパスをして、良いコースにサポートします。こんなプレーがきるようになりたいと思って見ていました」
――日本代表を目指すという意味では、どんなプレーが必要だと感じていますか。
「運動量の多さはもちろんですが、日本代表のLOが前に出て相手の突進を止めているところを見ると、コンタクトの強さも必要です。どちらも僕には足りない部分で、これから高めていきたいと思っています」
――チーム練習は10月から始まるようですが、練習メニューなどは与えられているのですか。
「フィットネスと、ウェイトトレーングのメニューは作っていただいています。チームの練習が始まる時に、一番良いコンディションでやれるようにしたいし、本格的に始まるラグビーにつなげていきたいです」
トレーニング中の小瀧選手
――具体的に言える数値はありますか。
「ウェイトトレーニングのスクワットは、数字も上がってきていると思います。先日は、160kgから始めて、170、180、190kgと8回ずつできました」(※同席の広報担当者の方から、チームでもトップのほうだと思いますとのコメント)
――ライバル視しているLOはいますか。
「張選手と、東芝時代に一度も勝ったと思えなかった梶川喬介選手ですね。梶川さんはチームメイトからの信頼も厚いです。東芝と戦って、チームとしてもLOとしても勝ちたいですね」
――リーグONEでチャンピオンになることへの思いは強いのではないですか。
「東芝では一度も優勝できなかったので、優勝出来たら本当に嬉しいでしょう。東芝に入って一年目のシーズン、決勝でパナソニックに1点差で負けた試合はあったのですけどね」
――2015-2016シーズンは、トップリーグの新人賞も受賞しましたね。
「選んでいただいたのですが、以降、大した活躍ができなかったです。新人賞の選手は、神戸製鋼の山下楽平選手、リコーの松橋周平選手など各チームで目立つ活躍をしている選手ばかりですから」
――思ったように活躍できなかった原因を自分ではどう感じていますか。
「ラグビーに対して本気になれていなかったような気がします。東芝でラグビーをすることは好きでしたが、ラグビーに打ち込む姿勢が足りなかったのかなと感じています。それなのに、結果は欲しがっていた。わがままだったと思います。自分を変えて、ラグビーで成功したいと思ったのは2019年のRWC以降です」
――プレーヤーとしてのゴールは考えていますか。
「RWCに出ること、神戸製鋼で優勝することは大きな目標です。ゴールは具体的には考えていませんが、記憶に残るような選手になりたいと思っています」
豪快なプレーが光る小瀧選手だが、意外にも「インドア派です」と言う。テレビゲームや漫画が大好き。最近のお気に入りの漫画は「呪術廻戦」で、ベストワンをあげてもらうと「ジョジョの奇妙な冒険」だという。実は、2015年度にトップリーグ新人賞を受賞した直後にもインタビューをさせてもらった時も、好きな漫画は「ジョジョの奇妙な冒険」だった。インドア派だが、神戸では美味しいお店などを探して地元の皆さんと交流していきたいという。プロ選手として、ラグビーとこれまで以上に真剣に向き合おうとする小瀧選手がどこまで成長するのか。その成長が神戸製鋼のチーム力を押し上げることになるだろう。
■小瀧尚弘(こたき・なおひろ)
・生年月日:1992年6月13日
・出身地:鹿児島県
・身長/体重:194cm/110kg
・ポジション:LO
・経歴:鹿児島実業高校→帝京大学→東芝ブレイブルーパス(2015-2021)。日本代表キャップ10
文:村上 晃一
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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