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ラグビー コラム 2021年7月26日

【ハイライト動画あり】ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ、先勝で勝ち越しに王手。南アフリカは後半失速

村上晃一ラグビーコラム by 村上 晃一
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マン・オブ・ザ・マッチのLOマロ・イトジェ

12年ぶりの南アフリカ遠征は、この試合に勝つためにあったと言っても過言ではないだろう。7月24日(土)、ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズは、ケープタウン・スタジアムにて、世界王者・南アフリカ代表とのテストマッチシリーズ第1戦に臨み、22-17で逆転勝利を収めた。テストマッチは3試合。12年前は2勝1敗で南アフリカが勝ち越しており、ライオンズが先勝したことで、1997年以来の勝ち越しに王手をかけたことになる。

午後6時、ライオンズSOダン・ビガーのキックオフで12年ぶりのテストマッチは始まった。南アフリカのタッチキックでラインアウトを得たライオンズは、いきなり南アフリカゴールライン手前にハイパントを蹴り上げる。ここに走り込んだのは、身長193cmのWTBドゥーハン・ファンデルメルヴァだ。待ち受ける南アフリカWTBチェスリン・コルビは身長170cmで、優位性を生かしてボールに手をかけたファンデルメルヴァだが、キャッチすることはできなかった。いずれにしても、このプレーはキッカーの前からライオンズのFWが走り出すオフサイドの反則という判定で終わる。しかし、ライオンズが意表を突く攻撃を仕掛け、南アフリカの弱みを徹底して攻めようとする姿勢は十分に伝わった。

対する南アフリカは、素早く前に出るディフェンスラインで、ライオンズにプレッシャーをかけた。開始3分、CTBルカンヨ・アムがライオンズCTBエリオット・デイリーに見舞った浴びせ倒すようなタックルはインパクト十分。13分、16分と南アフリカSOハンドレ・ポラードがPGを決め、6-0とリードする。2つともイングランドFLトム・カリーの反則だったが、ひとつはSHファフ・デクラークがキックした後のレイトチャージで、南アフリカの攻撃を寸断する役目のカリーに、気負いが感じられた場面だった。

ライオンズもビガーがPGを返したが、南アフリカはディフェンスで圧力をかけ続ける。29分、ライオンズがワイドに展開したところで、FLピーター ステフ・デュトイが激しく前に出てタックルし、PRトレヴァー・ニャカネがすかさずジャッカル。反則を誘ってポラードが4本目のPGを決めた。スコアは、12-3。前半は南アフリカがボール保持率57%、地域獲得率58%で優位に試合を進めた。

南アフリカの防御背後へのキックを多用していたライオンズは、後半に入るとモールを押し込んで流れを変える。後半2分、南アフリカのハイタックルで得たPGチャンスを狙わず、タッチに蹴りだしてラインアウトからモールを押し込み、HOルーク・カーワン ディッキーがトライ。12-10と2点差に迫った。後半を通して、ライオンズのモールは南アフリカを苦しめた。

後半9分、南アフリカはデュトイが抜け出し、WTBマカゾレ・マピンピが左タッチライン際を走り、インゴール方向へキック。これをデュトイが真っ先に追い、最後はデクラークがインゴールにボールを押さえる。17-10と突き放したが、トライ後のゴールが決まらず、あと2年を追加できなかったのは南アフリカにとって痛かった。その後、ライオンズはビガーが10分の間に3PGを決め、17-19と逆転する。

その後は、ライオンズが選手層の厚さを見せつける。FLハミッシュ・ワトソン、タイグ・バーンらエネルギッシュな選手、SOオーウェン・ファレル、SHコナー・マレーなどベテラン勢が次々に投入され、終盤の南アフリカの反撃をしのぐと、ファレルが終了間際にPGを追加して、17-22と突き放した。後半はボール保持率60%、地域獲得率64%でライオンズが圧倒した。

南アフリカは主力の疲労とともに失速した。キャプテンのFLシヤ・コリシはじめ先発15名のうち11名が2019年にラグビーワールドカップ(RWC)決勝戦の先発という強力な布陣だったが、裏を返せば、2019年の優勝以降、コロナ禍で国代表を編成できず、テストマッチは7月2日のジョージア戦のみで、新しいメンバーを育てる機会がなかった結果でもある。ライオンズが来てからも、PCR検査の陽性者などが多数出て、全員が揃ったのが数日前という難しい状況だった。ライオンズは、イングランド、ウェールズ、アイルランド、スコットランドの連合軍で、2020年からそれぞれテストマッチを行っている。南アフリカ遠征中に負傷者が出て、コロナ禍もありメンバー変更も多くなったが、テストマッチレベルの経験値は高かった。

ラグビー ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ2021 南アフリカ遠征 テストマッチ第1戦

【ハイライト】南アフリカ vs. B&Iライオンズ

ライオンズは後半、優位に立ったスクラム、モールで流れを作り、SHアリ・プライス、SOビガーが正確なキックを次々に蹴り上げ、南アフリカNO8クワッガ・スミスのミス、反則を誘った。マン・オブ・ザ・マッチは、3度のターンオーバーで南アフリカのチャンスの芽を摘んだLOマロ・イトジェ。南アフリカの両LOエベン・エツベスフランコ・モスタートとのフィジカルバトルは見応えがあった。

ライオンズが先勝したとはいえ、その差は紙一重。キックの応酬でどちらに転ぶかわからない攻防が多かった。また、南アフリカは映像判定でトライが認められなかったシーンが2度あった。モールのディフェンスなど修正できれば、勝つ力は十分にある。ライオンズが一気に勝ち越しを決めるのか、南アフリカが1勝1敗に持ち込んで最終戦に望みをつなぐのか。第2テストマッチは、7月31日(土)、第1戦と同じくケープタウン・スタジアムで行われる。

文:村上 晃一

村上晃一

村上 晃一

ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。

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