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12年ぶりに南アフリカ共和国を訪れているブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズは、コロナ禍という、かつてない過酷な状況の中で誇り高く戦い続けている。ここまで5戦して4勝1敗。直近の7月17日(土)のストーマーズ戦は、49-3で快勝した。この試合では、負傷者続出で急きょ呼び寄せられた22歳のSOマーカス・スミス(イングランド)がライオンズでのデビュー。6月26日(土)の日本代表戦で肩を痛めたキャプテンのLOアラン・ウィン=ジョーンズ(ウェールズ)が合流し、後半13分に出場して精力的にプレーした。精神的支柱が戻ってきたことで、チームの結束力は間違いなく高まるだろう。
ライオンズが豪華メンバーをテストマッチでどう編成するのか、メンバーのセレクションは注目の的だ。ウォーレン・ガットランドヘッドコーチ(HC)は先発15名とリザーブ8名のバランスを重視する。先発メンバーでゲームを作り、後半の大事な時間帯で誰を投入するのか。ガットランドHCは、ストーマーズ戦でのHOルーク・カーワン ディッキー(イングランド)はじめFW陣の奮闘を称えた。
6番を務めたタイグ・バーン(アイルランド)はチーム最多の12回のボールキャリーを見せ、7番を背負ったハミッシュ・ワトソン(スコットランド)は、14回のタックルを100%成功させたほか攻守に動き回った。FW第3列はこのほか、FLトム・カリー(イングランド)、NO8ジャック・コナン(アイルランド)、サム・シモンズ(イングランド)らもおりどんな組み合わせになるか。LOはマロ・イトジェ(イングランド)とアラン・ウィン=ジョーンズ、あるいは、イアン・ヘンダーソン(アイルランド)か。
エリオット・デイリー
SHはコーナー・マレー(アイルランド)がファーストチョイス。SOはダン・ビガー(ウェールズ)が足首、フィン・ラッセル(スコットランド)がアキレス腱を痛めており、万全に戻らなければ、オーウェン・ファレル(イングランド)か。CTBはロビー・ヘンショウ(アイルランド)が日本代表戦の怪我からようやく復帰し、こちらも激戦。WTBはパワフルなドゥハン・ファンデルメルヴァ(スコットランド)は当確だろう。万能バックスのエリオット・デイリーをどのポジションで起用するかも注目だ。
ファフ・デクラーク
対する南アフリカ代表は、ジョージアと2試合する予定がPCR検査の陽性者が出たことで1試合中止になり、南アフリカA代表をほぼフル代表で編成してライオンズと戦い、フィジカル面の強さを見せつけて17-13で勝った。屈強なライオンズの選手を力強いタックルで押し戻すシーンは衝撃的ですらあった。PRスティーブン・キッツォフ、トレバー・ニャカネ、LOエベン・エツベス、フランコ・モスタート、FLピーター ステフ・デュトイ、SHファフ・デクラーク、CTBダミアン・デアエンディ、ルカニョ・アム、WTBチェスリン・コルビ、FBウィリー・ルルーというラグビーワールドカップ(RWC)2019優勝メンバーが勢ぞろい。170cm、74kgのコルビの独特のステップワークでの突破とオフロードパスは芸術品の域である。12年前のライオンズ戦にも出場したベテランSOモルネ・ステインも正確なキックでチームを引っ張った。
ジャック・ニーナバーHCは、「テストマッチまでに3試合は必要」と選手のゲームタイムについて語っていたが、7月17日のストーマーズ対ライオンズの前に、ブルズとA代表の試合を組み、出場機会の少ない選手をプレーさせた。ブルズに14-17で敗れてしまったが、まずはプレーできたことがハッピーだと喜んだ。この試合ではSOエルトン・ヤンチースがキャプテンを務めたが、テストマッチシリーズは、7月14日のA代表メンバーが軸になりそうだ。RWCに出場しなかった選手では、エネルギッシュなHOジョセフ・ドヴェバ、パワフルなFW第三列ジャン=ルック・デュプレア、ダニエル・デュプレアという双子の兄弟、トライゲッターのWTBアペレレ・ファシらがいる。特にファシは世界的スター選手になるかもしれない。
フィジカルでは南アフリカ代表が優位に立つはずだが、ライオンズもセットプレーは強く、スピーディーな展開、キック戦略にも長けている。この試合で初めて披露するサインプレーもあるだろう。激しいボールの奪い合い、目まぐるしい攻守の切り替え、スクラムの意地の張り合い。見どころの多い3連戦になるはずだ。12年前の両チームは、2勝1敗で南アフリカが勝ち越した。ライオンズは南アフリカとのテストマッチシリーズで全敗したことがないが、1997年のツアー以来、24年ぶりの勝ち越しのためには、第1戦に必勝態勢で臨まなくてはいけない。7月24日(土)の初戦から壮絶なフィジカルバトルが繰り広げられるだろう。
文:村上 晃一
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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