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7月3日、アイルランド共和国ダブリンのアビバ・スタジアムは、新型コロナウイルス感染症対策で、観客を3,000人に制限。2019年のラグビーワールドカップでは日本代表が勝って以来の両チームの戦いを静かに見守った。
キックオフ直前のアクシデントに動揺が走った。日本代表NO8姫野和樹がウォーミングアップ中に膝を痛めて出場を見合わせることになったのだ。急きょ、リザーブ(控え選手)だったテビタ・タタフがNO8に入り、バックアップメンバーのアマナキ・レレイ・マフィがリザーブ入りした。姫野はラインアウトのジャンパーでもあり、攻守に事前のプランへの影響が心配された。
試合はアイルランドのキックオフで始まった。日本代表はアクシデントの影響を感じさせず、プラン通りに大きくボールを動かし、一週前のライオンズ戦よりもキックを多用して攻撃を組み立てた。4分、田村のPGで先制。アイルランドCTBクリス・ファレルにトライを返されたが、11分、ゴール前のラインアウトからモールを組み、FLリーチ マイケルがトライ。田村のゴールも決まって、10-7と逆転する。
日本代表 vs. アイルランド
18分には右に左にボールを動かし、田村のパスを受けたCTBラファエレ ティモシーがポスト下に飛び込んだ。見事なトライかと思いきや、最後のパスがスローフォワードと判定される。トライには至らなかったが、アイルランドのディフェンダーの顔色を青ざめさせる攻撃だった。26分、キックカウンターからCTBスチュアート・マクロスキーにトライされ、10-12と逆転されたが、36分、ラファエレがトライを返して、再び17-12とリードする。田村のキックパスを左タッチライン際でキャッチしたWTBシオサイア・フィフィタがタックラー2人をかわしてラファエレにつなぐ、胸のすくトライだった。
前半終了間際にトライを奪われた日本代表だが、後半3分、田村の卓越した個人技がトライを演出する。右隅のスクラムから左オープンに展開すると、FB松島幸太朗が左タッチライン際まで走り、捕まったところでマシレワがサポートしてボールを確保すると、ディフェンスが整う前に田村が左タッチライン際を抜け出し、右にサポートしていたフィフィタの前に右足のアウトサイドに当ててボールを転がした。絶妙なコントロールで跳ね上がったボールをキャッチしたフィフィタがゴール左中間にトライ。24-19と逆転する。繰り返し映像を見たくなるトライだった。
直後の攻防で、日本代表は前に出るディフェンスでプレッシャーをかけ、こぼれ球をフィフィタが拾って前に出る。SH齋藤直人が誰もいない防御背後にキックを蹴ったが、これがぎりぎりダイレクトタッチ。判断は良く、アイルランドのゴールライン方向に転がっていれば、大きくチャンスが広がるプレーだっただけに残念。齋藤も試合後「自分のダイレクトタッチで流れを持っていかれた」と悔やんだ。直後、日本代表は反則を犯して自陣深く入られ、ラインアウトからの連続攻撃でFLジョシュ・ファンデルフレイヤーにトライを奪われる。
後半11分には、FB松島幸太朗が負傷退場。さらに1トライを追加され、24-33とリードされた日本代表は、17分、マシレワのカウンターアタックから齋藤がトライを返して、31-33と2点差に迫ったが、その後は失速。交代選手もペースを上げることができず、2本のPGで突き放された。姫野、松島を怪我で欠くというアクシデントの中で粘りを見せたが、後半の反則数はアイルランドの1に対して、日本は7。ボール保持時間はアイルランドが55%、テリトリーも62%と、後半はとくに自陣で守る時間が多くなった。また、試合を通して密集周辺のディフェンスの甘さをアイルランドSHジェイミソン・ギブソンパークに突かれていた。
最優秀選手に選ばれたアイルランドのファンデルフレイヤーは、「勝ててほっとしている」と話したが、その言葉通り、アイルランドにとっては日本代表の素早い攻撃に苦しみながらも、なんとか面目を保った勝利だった。アイルランドは、現在、南アフリカ遠征中のブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズに主力7名(選出は8名も負傷で1名離脱)を送り出し、負傷者、休養者など10名以上の主力がいなかった。しかし、2017年6月に来日したアイルランドも、ライオンズのニュージーランド遠征で主力はいなかった。それでも日本代表は22-50、13-35で連敗している。
ラグビー日本代表 テストマッチ2021
【ハイライト】アイルランド vs. 日本|ラグビー日本代表 テストマッチ2021
以降4年で日本代表は長足の進歩を遂げた。スクラムも安定し、意図的な攻撃でチャンスを作っていた。今の日本代表に「善戦」という言葉を使う必要はなくなった。この日は、強豪国同士の戦いで、勝つチャンスを逃した。「勝てる試合に負けてしまった。いいプレーはあったが、遂行力が足りなかった。この試合から学んで、2023年に向かっていきたい」とリーチキャプテン。ラグビーワールドカップ2023でのベスト8以上の成績に向かって何をすべきか、多くの材料を得たツアー2試合だった。
文:村上 晃一
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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