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ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ南アフリカ遠征スコッド
歴史的試合が刻々と近づいている。ラグビー発祥の母国イングランドはじめ、ウェールズ、スコットランド、アイルランドという伝統国の精鋭を集めた「ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ」は、6月下旬より12年ぶりの南アフリカ遠征に出発する。その前にスコットランドのエジンバラで日本代表と対戦するのだが、ライオンズが、ホームで他国と対戦するのは、2005年のアルゼンチン代表に続いて2チーム目だ。
試合前にチェック!
この試合は、ライオンズの発祥とされる1888年に初遠征にちなみ、「The Vodafone Lions 1888 Cup」として開催される。ライオンズの歴史の中に日本代表がその名を刻むことになり、世界中の視線がエジンバラのマレーフィールドに注がれることになる。試合の見どころは直前に書くとして、今回のライオンズについて紹介しておこう。
指揮を執るのは、ニュージーランド出身で、世界屈指の名将ウォーレン・ガットランド(57歳)。アイルランド代表監督(1998~2001)、ウェールズ代表監督(2007~2019)、ライオンズでは、2009年にアシスタントコーチ、2013年、2017年にヘッドコーチを務めた。輝かしいコーチとしてのキャリアの集大成と言えるのが、今回の南アフリカ遠征かもしれない。
当初発表されたライオンズのメンバー37名の内訳はイングランド11名、ウェールズ10名、スコットランド、アイルランドから各8名だった。その後、アイルランドのPRアンドリュー・ポーターが怪我で退くことになり、イングランドのPRカイル・シンクラーが追加招集された。キャプテンはウェールズ代表のキャプテンで今回のメンバーで唯一2009年の南アフリカ遠征に参加したアラン ウィン・ジョーンズ(35歳)が務める。
ライオンズは原則として、4年に一度結成され、ニュージーランド、南アフリカ、オーストラリア遠征する。2度同じ国に行くということは、少なくとも12年間トップレベルの実力を維持しなくてはいけない。ウェールズ代表148キャップ、ライオンズのキャップ9で計157キャップは世界歴代最多。しかも過酷なポジションであるLOでの達成は、まさに鉄人である。
ガットランドヘッドコーチが、「この遠征がオーストラリア、ニュージーランドへ行くものなら、メンバーは違っていたかもしれない」とコメントした通り、フィジカルバトルに強い南アフリカのチームに対抗するためのメンバーを言えそうだ。2019年にラグビーワールドカップ日本大会で有名になったところでは、イングランドSOオーウェン・ファレル、運動量豊富なLOマロ・イトジェ、スコットランドのSOフィン・ラッセル、ラニングスキルの高いFBスチュワート・ホッグ、アイルランド不動のSHコナー・マレーなどがいる。遠征最年少は20歳のWTBルイス・リースザミット(ウェールズ)、今年のシックスネーションズの最優秀選手、スコットランドの活力あふれるFLハミッシュ・ワトソンがいる。
ライオンズは、イングランドのプレミアシップ(1部リーグ)の試合が残っている選手らをのぞいてトレーニングキャンプに参加しており、着々と準備を進めている。6月16日には、休養日でゴルフなどに興じる姿も報道された。追加招集となったPRカイル・シンクラー(28歳)は、2017年にニュージーランド遠征にも参加した選手だが、プレー時間は少なかった。しかし、彼はライオンズに対して人一倍熱い思いを持つ男だ。
ライオンズの公式サイトに彼のコメントが紹介されている。「ライオンズの南アフリカ遠征は特別です。子供の頃、2009年のシリーズをテレビに張り付いて見ました。テストマッチ第2戦のことはよく覚えています。南アフリカのモルネ・ステインのPGがポストを越えた時、非常に大きなショックをうけて、泣いて、落胆しました。子供ながらライオンズでプレーしたいという思いに駆られました」。
2度目のツアー参加を光栄に思いつつ、こうも話している。「遠征に参加していなくても、そもそも自分はライオンズのファンです。だから選手たちを応援していたし、選手たちが良いプレーをするのを見るのが待ちきれませんでした。2回目のツアー参加は、ケーキの上のさくらんぼを食べる機会を与えられたようなものです」
追加招集の知らせは、ガットランドヘッドコーチから直接あったようだ。「朝8時に知らない番号から電話がかかってきて、もしもし、どなたですか?と電話に出たら、『ウォーレン・ガットランドです』。ベッドから出てサウナに入ろうと思っていた時だったからこの電話で完全に目が覚めました。嬉しいサプライズでした」
今回、2017年のニュージーランド遠征の参加メンバーが20名選出されており、シンクラーも、「全員が4年前からラグビー選手としてだけでなく人間としても成熟したと感じます。自分も前回のツアーで本当に多くを学び、成長しました。機会が与えられたら役割は果たせると感じています」と話す。
熱い思いを持つのはシンクラーだけではない。ライオンズでプレーするどの選手も、選ばれたことを名誉に感じ、誇りを胸に戦う。そして、対戦する選手たちも一生に一度、あるかないかのチャンスを夢見る。クボタスピアーズでプレーした南アフリカ代表NO8のドウェイン・フェルミューレンはライオンズと戦いたいがために昨年、南アフリカに帰国したと言われている。日本代表とライオンズのキックオフは、6月26日(土)、日本時間の23:00だ。
文:村上 晃一
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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