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日本代表(JAPAN XV) vs. サンウルブズ
ラグビー日本代表が601日ぶりにファンの前でプレー。一日限りの復活となったサンウルブズに苦しめられながらも、32-17で逆転勝ちした。6月12日(土)、静岡県のエコパスタジアムには、18,434人の観衆が集った。赤白の横縞に桜のエンブレムのレプリカジャージーを着用する人が目立ち、その熱気は、2019年のラグビーワールドカップ(RWC)を思い出させた。日本代表とサンウルブズという日本代表強化の両輪だったチームの初対決に胸躍らせるファンも多かった。日本代表とサンウルブズのジャージーを前後半で着替える人、日本代表ジャージーを着て狼の耳をつける人、思い思いの応援スタイルがスタジアムを彩った。
日本代表は原則として国代表と戦うチームなので、この試合はJAPAN XV(ジャパン・フィフティーン)の名で戦った。先発15名のうち、RWC2019メンバーが13名。キャプテンはリーチ マイケル。対するサンウルブズのキャプテンはチーム創設時からリーダーとして先頭に立って戦ったエドワード・カークだ。カークは7人制オーストラリア代表の経歴があって現在の規定では日本代表にはなれないが、それ以外のメンバーは日本代表候補メンバー、代表入りを目指す立場の選手が並び、JAPAN XVに挑んだ。
午後3時35分、サンウルブズSO山沢拓也のキックオフで試合は始まった。ボールを確保した日本代表にFLリアキ・モリが激しいタックルを見舞う。サンウルブズは、モリを筆頭にカーク、LO長谷川峻太、NO8ベン・ガンターらが力強いタックルで何度も日本代表の突進を押し戻し、プレッシャーをかけ続けた。対する日本代表はキック主体のプランで臨んだ。現在の日本代表は試合ごとに変わるプランを忠実に実行して成果を上げてきた。今後の欧州遠征に向かってプランを落とし込む最中でもあり、ミスが連続するなど、やや動きは堅かった。
対するサンウルブズは素早いボールのリサイクルで攻め立てる。「サンウルブズでのプレーを楽しむ」と話していたSO山沢を軸に空いているスペースを巧みにつき、自由奔放に動き回った。日本代表もSO田村優のハイパントを追ったWTBレメキ ロマノ ラヴァが、キャッチした山沢をタッチラインの外に押し出し、ジェームス・ムーア、ヴィンピー・ファンデルヴァルトの両LOが献身的にタックルして攻撃を食い止めた。
【ハイライト】日本代表(JAPAN XV) vs. サンウルブズ ラグビー日本代表強化試合2021
先にトライを取ったのはサンウルブズだった。前半19分、自陣から攻めた日本代表のミスボールをモリが確保し、前に出てきた日本代表ディフェンスの裏へ山沢が短いキックを蹴り上げる。転々とするボールを山沢が再びインゴールに蹴り込んで、最後はSH荒井康植が押さえた。難しいゴールを山沢が決め、7-0とする。
その後もサンウルブズの攻勢は続き、日本代表がいったんはボールを確保したラックを押し込んでターンオーバーに成功するなど、ブレイクダウン(ボール争奪局面)での日本代表の課題を浮き彫りしていく。日本代表も田村がPGを返したが、前半39分、サンウルブズはCTBディラン・ライリーらの突進でゴールラインに迫り、最後はWTB尾崎晟也が前に出てきた日本代表のディフェンスをかわして、山なりのロングパス。これを受けたWTB竹山晃暉がトライ。山沢が難しい角度のゴールを再び決めて、14-3とリードを広げた。
前半、ほとんど攻めることができなかった日本代表は、前半終了直後、フィールド上で異例の円陣を組み、リーチが気持ちをリセットすること、ブレイクダウンの修正などを語りかけた。後半は日本代表の交代選手が躍動した。開始早々、WTBシオサイア・フィフィタがカウンターアタックで抜け出してチャンスを作る。11分、田村に代えてSO松田力也、茂野海人に代えてSH齋藤直人、リーチに代えてFLテビタ・タタフらが投入され、攻撃のテンポを上げる。20分のラインアウトのモールから交代出場のHO堀越康介がトライすると、25分には、CTB中村亮土が齋藤のフラットなパスを受けてトライして、15-14と逆転。31分のタタフ、40分の堀越のトライで突き放した。
「サンウルブズの若い選手たちがハングリーに戦ってくれた」とジョセフヘッドコーチは思い切りよく戦った相手を称えた。プレッシャーをかけ続けられたことは、欧州遠征に向かうチームにとって、ありがたい経験だったし、日本代表を狙う選手たちのレベルアップは日本ラグビー界にとっても明るい材料だ。リーチキャプテンは「80分間ずっとプレッシャーをかけられました。ブレイクダウン周りを良くしないと、自分たちのラグビーができない」と反省点を語った。日本代表スピーディーなプレースタイルには、素早いボールのリサイクルが生命線だ。6月26日のブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ戦に向けて必ず修正しなければいけない課題だろう。
文:村上 晃一
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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