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【ハイライト動画あり】トップリーグ・ファイナル屈指の激闘 野武士軍団パナソニック、 鉄壁の防御でサントリーを封じ込める
村上晃一ラグビーコラム by 村上 晃一パナソニック
ジャパンラグビー トップリーグ2021の頂点に立ったのは、パナソニック ワイルドナイツだった。「ディフェンスからゲームを作っていきたい」という坂手淳史キャプテンの言葉通り、アタッキングラグビーのサントリーサンゴリアスに対し、一糸乱れぬディフェンス網で的確なタックルを決め、ボール争奪戦に徹底して圧力をかけ続けた。トップリーグ決勝戦は、第58回日本選手権を兼ねており、パナソニックはトップリーグでは2015-2016シーズン以来5度目、日本選手権では2016年以来6度目の優勝となった。引退して医師の道を歩む福岡堅樹は有終の美を飾った。
トップリーグ史上屈指の激闘は、2021年5月23日、秩父宮ラグビー場にて行われた。集った観客は、4,668人。入場制限がなければ2万人以上の満員だっただろう。気温24度という暑さのなかで、午後1時10分、サントリーSOボーデン・バレットのキックオフで試合は始まった。立ち上がりは、サントリーが早いテンポでボールを動かした。パナソニックのディフェンスを少しずつ後退させながらゴールに迫り、2分、CTB中村亮土がトライを狙ったキックパスを蹴り上げる。トライかと思われたが、これがHO中村駿太につながらず、チャンスを逃す。
3分、パナソニック陣内のラインアウトのボールがこぼれ、サントリーが確保して左オープン展開。SOボーデン・バレットがロングパスを放った刹那、パナソニックCTBディラン・ライリーがインターセプトしてそのまま約60mを走り切る。このトライに象徴されるように、サントリーはパナソニックのミスで得たボールを得点に結びつけられず、ハドリングエラーなどで何度も好機を逸した。パナソニックSO松田力也が、14分、25分とPG決めたのに対し、バレットは16分のPGチャンスを外すなど、プレースキックの正確性でもパナソニックが優った。
ボーデン・バレット(サントリー)
13-0とリードしたパナソニックは、前半30分、松田のパスを受けた福岡堅樹が左タッチライン際の狭いスペースを走り切って、左コーナーにトライ。難しいゴールを松田が決めて、20-0とリードを広げた。サントリーも、バレットのハイパントからチャンスを作り、34分、ラインアウトからの連続攻撃でCTB中村亮土がトライを返す。スコアは、20-7。なおも攻めるサントリーだが、パナソニックFL布巻峻介のジャッカルで反則をさそい、松田がPGを決めて、23-7とパナソニックリードで前半が終了した。
【ハイライト】サントリー vs. パナソニック|トップリーグ 2021 プレーオフ決勝
サントリーは攻め急いでいる感があったが、パナソニックは規律正しく、ディフェンスに立つ一人一人の間隔を保ってサントリーの攻撃を寸断した。しかし、サントリーもそのまま終わるチームではなかった。後半開始早々には自陣からボールをつなぎ、PR垣永真之介、PR森川由起乙がパスをつないでゴールラインに迫り、最後はWTB中鶴隆彰がインゴールにボールを持ち込んでトライ。バレットのゴールも決まって、23-12と差を詰める。
パナソニック
後半11分、パナソニックは、FW第一列を総入れ替え。HO堀江翔太、PRクレイグ・ミラー、ヴァルアサエリ愛が投入され、布巻もスピードあるFL福井翔大に代わった。15分、そのヴァルがトライして、28-12と差を広げたが、サントリーも、30分、交代出場のSH齋藤直人がトライして、28-19とする。直後のキックオフを受けたサントリーは、自陣から思い切って攻めたが、パナソニックの福井が値千金のジャッカル。PGチャンスを勝ち取り、交代出場のSO山沢拓也が決めて、31-19と突き放した。堀江も何度も力強いタックルを決め、パナソニックの交代選手の質の高さが試合の流れをサントリーに渡さなかった。
あきらめないサントリーは、気持ちを奮い立たせて攻撃し、38分、FB尾崎晟也がトライし、難しいゴールをバレットが決めて31-26と5点差に迫る。1トライ、1ゴールでひっくり返る点差で、パナソニックのキックオフ。サントリーは自陣からマクマーンが抜け出して観客を沸かせたが、左タッチライン際の江見翔太に難しいロングパス。これがつながらずに万事休す。パナソニックがスクラムからタッチに蹴り出してノーサイドとなった。
試合を通してみれば、サントリーに何度も大幅ゲインを許しながら、パナソニックのディフェンスはほぼ崩れなかった。試合直前の坂手キャプテンの言葉通りの勝利だった。「一年間、たくさん準備しました。すべて出すことができて満足しています」と坂手キャプテン。規律の高いチームを作り上げたロビー・ディーンズ監督は「両チームとも良く戦った」と称えた上で、「すべてにおいてトップリーグはレベルアップした。ボーデン・バレットのような選手が、大きなラインブレイクが出来なかったところに、トップリーグのレベルの高さが証明されています」と語った。
文:村上 晃一
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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