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【ハイライト動画あり】福岡堅樹、最後の花園で3トライ パナソニックがトヨタ自動車に逆転勝利 5度目のトップリーグ王座に王手
村上晃一ラグビーコラム by 村上 晃一パナソニック ワイルドナイツの懐の深さが際立つ戦いだった。5月15日、トップリーグ2021プレーオフトーナメント準決勝は、第58回日本選手権も兼ねて行われ、ホワイトカンファレンス1位のパナソニックとレッドカンファレンス2位のトヨタ自動車ヴェルブリッツが対戦した。緊急事態宣言下の大阪開催とあって、東大阪市花園ラグビー場はトップリーグ史上初の無観客試合となった。
福岡堅樹(パナソニック)
午後2時、トヨタ自動車SOライオネル・クロニエのキックオフで始まった戦いは、アグレッシブに仕掛ける両チームがいきなりトライを奪い合う。まずは、キックオフをフィールド右中間でキャッチしたパナソニックが左オープンに展開する。左タッチライン際の福岡堅樹がタックラーを振り切って相手陣に入ると、右側にサポートしFB野口竜司がさらに前進し、トヨタ自動車FBウィリ・ルルーを引き付けて再び福岡にパス。福岡はルルーのタックルをかわしながら左コーナーにトライをあげた。開始31秒の早業だった。「分析のなかで、あそこは狙って行こうとしていました」と、福岡堅樹。キックオフのトヨタ自動車のディフェンスを分析しての攻撃だったようだ。
直後のキックオフでは、トヨタ自動車のLOジェド・ホロウェイがボールを確保して左タッチライン沿いを駆け抜け、ゴールライン手前までボールを運ぶ。ここはタッチに押し出されたが、その後の攻撃でCTBロブ・トンプソンがゴールに迫り、FL古川聖人がボールをインゴールに持ち込み同点とする。その後のトヨタ自動車は、パナソニックのスクラム、ラインアウトに圧力をかけてミスを誘い、主導権を握る。9分、パナソニックのゴール前スクラムからBKラインで攻撃し、パナソニックのディフェンスが内側に集まったところで、WTB高橋汰地が易々とゴールラインを駆け抜ける。
16分の高橋のトライは圧巻だった。パナソニック陣22mライン付近のラインアウトから、トヨタ自動車はCTBマレ・サウが突進し、最後は右タッチライン際に待ち受けていた高橋にパスが渡る。高橋は目前に迫る福岡堅樹を斜め後ろに下がるようなステップでかわすと、CTBディラン・ライリーのタックルを弾き飛ばし、最後はFB野口竜司のタックルをかわして右コーナーに飛び込んだ。無観客ながら、トヨタ自動車のサポーターの熱狂が聞こえるような3連続トライだった。ゴールを3本とも外して15点にとどまったのはトヨタ自動車にとって痛かったが、5-15のリードとなる。
【ハイライト】トヨタ自動車 vs. パナソニック|トップリーグ 2021 プレーオフ準決勝
しかし、パナソニックは慌てなかった。欠場の坂手淳史キャプテンに代わってゲームキャプテンを務めた布巻峻介は冷静だった。「後半勝負になるのは分かっていたので、自分の仕事をやり切ろうと声を掛けました」。21分、パナソニックはSO松田力也のPGで差を詰めると同時に、ラインアウト、スクラムで苦しんでいた先発HO島根一磨を下げ、堀江翔太を投入する。この早い判断が流れを変えた。経験豊富な堀江は落ち着いたプレーでセットプレーを立て直し、各選手に本来のプレーを取り戻すように声をかけ、チームを立て直す。24分、松田が「試合で初めて決めた」というドロップゴールで、11-15にすると、27分、33分とPGを追加して、17-15と逆転。それはまるで後半の攻勢への準備のように見えた。
山沢拓也(パナソニック)
トヨタ自動車も踏ん張り、前半最後のピンチをFL古川聖人のジャッカルでしのぐなど、簡単には得点を許さなかった。その後はPGを決め合い、後半20分までスコアは、20-21のトヨタ自動車リードで進んだ。ただし、後半11分、クレイグ・ミラー、ヴァルアサエリ愛が投入され、堀江との強力なFW第一列が形成されると、スクラムでもパナソニックが優位に立つ。後半17分、インパクトプレーヤーの山沢拓也が投入され、20分、山沢がタックルをかわしてトライ。以降はFL福井翔太の独走など交代選手がエネルギッシュに走り回ってディフェンスを翻弄。最後は福岡がハーフウェイライン付近でハイパントをキャッチし、そのまま50mを駆け抜けてこの日3本目のトライをあげた。終わってみれば、48-21という快勝だった。
「50分、55分まで我々のアタックのストラクチャーがうまくいった。しかし、パナソニックやサントリーと戦う時は、84分間戦い続けなくてはいけないのです」(トヨタ自動車サイモン・クロンヘッドコーチ)。対するパナソニックのロビー・ディーンズ監督は「プレーオフはメンタルにプレッシャーがかかります。きょうは布巻がうまくマネージメントしてくれました。ベンチメンバーも良いインパクトを与えてくれたと思います」と選手を称えた。
3トライをあげた福岡は今季限りで引退を決めている。高校時代から何度も戦った花園ラグビー場でのプレーもこれが最後。「トライ3本で終われたのは良かったです。(決勝戦については)思い残すことのないようにプレーしたいです」。5度目の頂点を目指すパナソニックだが、福岡が加入してからはまだ優勝していない。果たして福岡堅樹は、有終の美を飾れるのだろうか。
文:村上 晃一
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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