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トップリーグ2021プレーオフトーナメント2回戦は、多くの試合でチャンジャー側が闘志あふれるプレーで観客を楽しませた。4月25日(日)、秩父宮ラグビー場で開催されたトヨタ自動車ヴェルブリッツ対日野レッドドルフィンズの試合では、レッドカンファレンス2位のトヨタ自動車に対して、ホワイトカンファレンス7位の日野が牙をむいた。
午後2時30分、トヨタ自動車SOライオネル・クロニエのキックオフで激闘の幕は開いた。立ち上がりは、日野FB川井太貴が地域を挽回するキックが2回連続でトヨタ自動車にチャージされる。直後、日野の短いキックをキャッチしたトヨタ自動車がボールを大きく展開しようとしたところで、日野のWTBチャンス・ペニーがロングパスをインターセプトして約50mを独走。先制トライをあげる。日野はキックを使って地域を前進させ、素早く前に出るディフェンスでトヨタ自動車の攻撃を寸断するなど、チャレンジャーらしくアグレッシブに戦った。
高橋汰地(トヨタ自動車)
前半16分、トヨタ自動車は日野の反則で得たPKから攻め込み、ラインアウトからモールを押した後、クロニエがタックラーを振り切りながらパスし、最後はWTBヘンリージェイミーがハンドオフでタックラーを弾き飛ばして左コーナーにトライをあげた。難しいゴールをクロニエが決めて、スコアは、7-7となる。20分、今度はクロニエが日野のゴールライン近くに、ピンポイントのキックパスを蹴り上げ、走り込んだWTB高橋汰地が日野のディフェンダーの頭上でキャッチしてトライ。14-7と逆転する。その後、点を取り合い、21-10と、トヨタ自動車がリードした前半終了間際、日野がトライを狙ってゴールラインに迫ったが、ここはトヨタ自動車LO吉田杏がジャッカルでピンチをしのいだ。
後半、先にトライをあげたのはトヨタ自動車だった。8分、自陣ゴール前のラインアウトからFLフェツアニ ラウタイミの突破でチャンスを作り、日野のゴールライン前のラインアウトから再びラウタイミがパワフルな走りでトライをあげ、28-10とする。
【ハイライト】トヨタ自動車 vs. 日野|トップリーグ 2021 プレーオフ2回戦
18点差をつけられた日野だが、勝利を捨てることなく猛反撃に出る。19分、CTBトンガモセセの突進でトヨタ自動車ゴールに迫ると、SHオーガスティン・プルが相手とのボールを奪い合いに勝ってWTBペニーにオフロードパス。ペニーがこの日2つ目のトライを右コーナーに決めた。SO東郷太朗丸がゴールを決めて、28-17。23分にはプルのパスを受けた川井が巧みなコースチェンジでトライし、28-24の4点差に詰め寄った。盛り上がる日のサポーター。しかし、反撃もここまで。疲れの見える日野はディフェンスがほころび始め、トヨタ自動車の途中出場のCTBロブ・トンプソン、SH滑川剛人らのトライで突き放された。
トヨタ自動車 vs. 日野
この試合のハイライトは、事前に引退を表明していた日野LO北川俊澄の登場だった。195cmの長身で日本代表キャップ43を重ねた40歳は、トヨタ自動車で16年にわたってプレーしたあと、日野にやってきた。49-29で迎えた試合終了間際、日野に最後のトライチャンスが巡ってくる。トヨタ自動車ゴール前でのラインアウトをジャンプしてキャッチしたのは北川だった。両手でがっちりボールを確保してモールを組むと、その原動力になって足をかき、最後まで押し込んでHO郷雄貴のトライをアシストした。
引退する選手が最後のゴールキックを蹴るのは世界のラグビー界でもよく見られる光景だ。チームメイトに促されて蹴ったボールはゴールをそれたが、微笑ましく、清々しいノーサイドとなった。「ゴールキックはラグビー人生で蹴ったことがありませんでした。みんなが背中を押してくれて、ありがたかった。これがラストゲーム。最後にトヨタと戦えたのは運命的なものを感じました。楽しいラグビー人生でした」。引退するシーズンに、最後のトップリーグのプレーオフで古巣と戦うというめぐり合わせ。それは、献身的にボール確保に身を削ってきた北川俊澄へのラグビーの神様からの贈り物のようでもあった。
日野のゲームキャプテンを務めたオーガスティン・プルは、「ファイティングスピリットを80分間出そうとしていました。それは伝わったと思います」と語り、後半20分過ぎまで勝敗の分からない戦いを繰り広げた仲間を称えた。一方、勝ったトヨタ自動車のSH茂野海人は「ミスが多くテンポが上げられなかった。ブレイクダウン周りもサポートが遅かった」と反省を口にした。準々決勝では、今季、旋風を巻き起こしているNTTドコモレッドハリケーンズと対戦する。
文:村上 晃一
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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