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ともに5勝1敗の勝ち点24。レッドカンファレンスの2位の座を巡る戦いは予想に違わぬ僅差勝負になった。4月11日(日)、東大阪市花園ラグビー場は快晴、弱風、気温19度の好コンディション。午後1時、トヨタ自動車ヴェルブリッツSOライオネル・クロニエのキックオフで試合は始まった。序盤はクボタスピアーズが、デービッド・ブルブリング、ルアン・ボタの両LOを軸に接点で前に出る。前半5分、クボタはゴール前5m右でのラインアウトのチャンスを得ると、サインプレーでNO8末永健雄がタッチライン際に走り込む。そこから左オープンに展開し、最後はHOマルコム・マークスが2人のタックラーの間に体を入れてトライ。SOバナード・フォリーのゴールも決まって7-0とする。
前半11分、トヨタ自動車は自陣10mライン付近のスクラムから左オープンに展開し、クボタCTBテアウパ シオネが飛び出したところを、CTBロブ・トンプソンがアウトサイドにかわして大きくゲインし、最後はWTBヘンリー ジェイミーが今季6トライ目をあげた。クロニエのゴールは決まらず、スコアは、5-7。
テアウパシオネ(クボタ)
前半16分、次はクボタがチャンスをつかむ。PKからのタッチキックでゴール前5mのラインアウトを獲得すると、FWが連続で縦に突進し、ディフェンスが上がってきたところで、背後にCTB立川理道がキックし、これをテアウパが確保してトライ。ゴールも決まって、5-14と突き放した。直後にトヨタ自動車のクロニエが約40mのPGを決めて、8-14とする。振り返れば、このPG成功の価値は高かった。
クボタはFLピーター・ラピース・ラブスカフニがインターセプトからゴールに迫り、トライチャンスをつかんだが、CTB立川理道へのパスは繋がらず。24分にはスクラムを押し込んでPKを勝ち取るが、フォーリーのタッチキックは直接インゴールへ入って得意のラインアウトモールにするチャンスを失った。その後は、ラブスカフニが、トヨタ自動車NO8キアラン・リードからジャッカルで反則を勝ち取り、そのリードがクボタNO8末永に強烈なタックルを見舞って反則を誘うなど、互いに一歩も引かない攻防が繰り広げられた。
【ハイライト】トヨタ自動車 vs. クボタ|トップリーグ 2021 第7節
前半の最後の10分はトヨタ自動車が一方的に攻め、クボタが守る展開。スクラム、ブレイクダウン(ボール争奪戦)でクボタの反則が続き、PR山本剣士、FLラブスカフニが相次いでシンビン(10分間の一時退場)となる。13人となったクボタだが、スクラムは交代出場のPR北川賢吾が奮闘し、相手より少ない人数で組んだスクラムを耐えた。その後のトヨタ自動車の攻撃も立川理道の連続タックルなどで耐え、試合は後半へ。
後半開始早々、トヨタ自動車はフリーキックからの速攻でFLフェツアニ ラウタイミが独走してトライをあげ、クロニエのゴールも決まって、15-14と逆転。14分、フォーリーのPGで15-17。17分、クロニエのPGで18-17とスコアは二転三転した。ターンオーバーが連続し、プレッシャーを掛け合ってのミスもあった。どちらに勝敗が転がるのか、予測不能の緊張感ある展開が続いた。
後半24分、クボタはHOマルコム・マークスがタックルをすり抜けながらトライし、18-24とリードする。直後に自陣からフィナウが抜け出してチャンスかと思われたが、ここはトヨタ自動車WTB高橋汰地がボールを持つ手を叩いてノックオンを誘った。トヨタ自動車は自陣から再三攻撃を仕掛けるが、ミスなどで実らず我慢の時間が続いた。勝敗を分けたのは、後半36分あたりからのクボタの攻めだ。ゴール前のラインアウトモールで2度、ゴールラインに迫りながらトライをとり切れず、38分、トヨタ自動車の反則で得たPKからPGを狙った。9点差にして、勝利を確かなものにするためだ。
「そこまで2回トライが取れなかったのが、PGを選択した理由」と立川理道キャプテン。結果論だが、残り時間から考えて、もう一度タッチキックからラインアウト、モールという選択をしていたら結果は変わったかもしれない。ファンデンヒーファーのPGはゴールを外れ、トヨタ自動車にはわずかに反撃のチャンスが残った。
高橋汰地(トヨタ自動車)
ドロップアウトを短く蹴ってボールを確保したトヨタ自動車は、そこから丁寧にボールをつなぎ、自陣22mラインあたりからディフェンスを突破。交代出場のFBチャーリー・ローレンスが右タッチライン際を駆け上がってハーフウェーラインを越え、2人のタックルを受けながら右手で高橋にオフロードパス。高橋は俊足を飛ばしてできるだけ真ん中を目指してインゴールに駆け込んだ。比較的簡単な位置からのゴールをクロニエが決め、25-24という劇的勝利が成し遂げられた。
マン・オブ・ザ・マッチに選ばれた高橋は、インターセプトしてゴールに迫ったラブスカフニもタックルで倒すなど何度もピンチを防ぎ、決勝トライをあげた。「クボタがゴールを外したとき、歴史的なのがあるかもしれないと考えていました」(高橋)。まさにイメージ通り。強気のルーキーがチームを救った。
「試合前、84分、85分まで戦い切ることを選手に話していました」(サイモン・クロンヘッドコーチ)。「プレッシャーを与えられた状況を乗り越えたときに成長がある、とずっと話してたので」と茂野海人キャプテン。チームを一段階レベルアップさせる勝利をもぎとり、トヨタ自動車ヴェルブリッツはレッドカンファレンス2位としてプレーオフトーナメントに臨む。敗れたクボタのフラン・ルディケヘッドコーチは、13人の時間帯も結束して耐えた選手を称えた。「これで終わりではありません。ノックアウトステージを楽しみに戦っていたい」。さらにチーム力を上げた両チームがプレーオフでどんなパフォーマンスを見せてくれるのか楽しみだ。
文:村上 晃一
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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