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雷雨による中止から一週間後の再戦は思わぬ大差になった。港区に事業所を持ち、府中にチームの本拠地を持つ者同士のダービーマッチは、下馬評とは関係なく僅差勝負になることが多いが、この日は違った。3月20日(土)、秩父宮ラグビー場に集った3,986人の観衆は、サントリーサンゴリアスのトライラッシュの目撃者となる。
曇り空にときおり晴れ間がのぞき、微風の好コンディション。午後12時10分、東芝ブレイブルーパスSOジャック・ストラトンのキックオフで試合は始まった。東芝のリーチ マイケルがいきなり激しいタックルを見せる。立ち上がり、東芝はボールを連続展開し、リーチがディフェンスを突破するなどアグレッシブに攻める。しかし、ラインアウトからのモールを止められると、流れはサントリーに傾いていった。
サントリーはSH流大、SOボーデン・バレットがディフェンス背後へのキックを織り交ぜ、立体的にボールを動かし、東芝のオフサイドを誘って、バレットが先制PGを決める(前半7分)。その後も、グラウンドを幅広く使ってボールを動かし、東芝の反則を誘ってはバレットがPGを追加、前半13分で9-0とリードする。「PGで(精神的に)プレッシャーを与えられた」(東芝SH小川高廣)。
先にトライをとったのもサントリーだった。前半17分、東芝陣ゴール前の左ラインアウトからモールを押し込んで反則を誘うと、アドバンテージのなかで右オープンに展開する。CTBサム・ケレビが縦に走り込み、2人のタックルを受けながらCTB中村亮土にオフロードパス。中村は右タッチライン際で待ち受けるWTB中野将伍にキックパスを送り、中野がインゴール右中間にトライをあげた。バレットのゴールは決まらず、スコアは、14-0。
テビタ・タタフ(サントリー)
前半22分にPGを追加したサントリーは、その直後のキックオフから流れるような攻撃を披露する。東芝のキックオフのボールを確保し、SOバレットが22mライン内中央から、左タッチライン際にピンポイントのキックを蹴り上げ、これをWTBテビタ・リーがジャンプしながらキャッチして前進、サポートしたNO8テビタ・タタフがさらに前へ。その後、中村、タタフ、LOハリー・ホッキングスがタックルされながらもボールをキープして東芝陣深く入り、最後は中村がディフェンダーを引き付けてケレビにパス。誰もが思わず拍手を送りたくなるトライ、ゴールで24-0となった。
【ハイライト】東芝 vs. サントリー|トップリーグ2021 第4節
東芝もCTBジョニー・ファアウリが激しいタックルを決めて反則を誘い、チャンスをつかむのだか、その後のラインアウトからスコア出来ず終い。逆にサントリーは29分、タタフがリーチのタックルを弾き飛ばしてトライし、31-0とリードを広げた。序盤に東芝のディフェンス背後へのキックを多用したことについて、バレットはこう話した。「東芝がディフェンスのラインスピードを上げてプレッシャーをかけてくるのは分かっていました。前に出てくれば後ろのスペースは空く。キックをすることで出足を止めることもできます」。世界最優秀選手に2度輝いたスーパースターの正確無比のキックで東芝は前に出てタックルする機会を失った。加えて、サントリーのディフェンスの圧力でキックキャッチからのカウンターアタックにつなげることもできなかった。
38-0で迎えた後半も流れは変わらず。サントリーは、2分、13分、16分とトライをあげ、東芝のFLマット・トッドにモールからトライを返されたが、30分、サントリーでの公式戦50試合目の中村亮土がトライし、記念試合に花を添えた(最終スコアは、73-5)。キャプテンでもある中村は、試合後の会見で「勢いに乗れる試合でした。これからもサントリーらしいアタックを見せられれば」と語った。そして、ファンへの感謝の気持ちを述べた。「先週の試合で、中止のアナウンスがあるまで待っていてくれたファンの皆さんに勇気をもらいました。ファンの皆さんのためにも良いプレーをしたいと思っていました。きょうも、急きょ決まった試合なのに来てくれた。応援してくれる皆さんのためにも良いプレーをしていきたいと思います」。
マン・オブ・ザ・マッチは再三力強く前に出たテビタ・タタフが受賞。サントリーは4連勝で、レッドカンファレンスで首位に立ち(勝ち点20)、次節(3月27日、パロマ瑞穂ラグビー場)はトヨタ自動車ヴェルブリッツとの全勝対決に臨む。東芝は、1勝3敗となり、次節(3月26日)は秩父宮ラグビー場の金曜ナイターでNTTコミュニケーションズシャイニングアークスと対戦する。
文:村上 晃一
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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