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ブロディ・レタリック
2年越しの連覇を狙う王者・神戸製鋼コベルコスティーラーズは、2月20日(土)、東大阪市花園ラグビー場でNECグリーンロケッツと対戦。下馬評では神戸製鋼が圧倒的有利だったが、午後2時のキックオフ直後からNECが猛然と前に出てプレッシャーをかけ、神戸製鋼を苦しめた。
チーム紹介
先制トライは開始1分のことだった。自陣ゴールラインを背負った神戸製鋼が左オープン展開でパスをつなごうとした瞬間、NECのハードタックラー、CTBマリティノ・ネマニがFB山中亮平に猛然とタックル。こぼれたボールをWTB後藤輝也が拾ってダウンボール。塩崎公寿レフリーはアシスタントレフリーに確認の後トライを認めた。今季加入のSOアレックス・グッドのゴールも決まって、7-0とNECがリードする。その後もNECは、神戸製鋼PR中島イシレリの突進を3人がかりのタックルで押し戻すなど、ボールキャリアーに徹底してプレッシャーをかけた。
受けに回った神戸製鋼だが、ゴールラインを背負ったピンチを中島のジャッカルでしのぐと、前半8分、CTBリチャード・バックマンのジャッカルからチャンスを作る。SOヘイデン・パーカーがNECのディフェンスライン全体が前に出てきたところを見はからって背後に短くキック。これを追ったのは共同キャプテン日和佐篤の怪我でチャンスが回ってきたSH徳田健太だった。トップリーグデビューとなった徳田は難しいボールを足にかけ、キャッチするとタックルされながらオフロードパス。これをサポートした共同キャプテンのFLトム・フランクリンがさらにタックルされながらパスを浮かし、走り込んできた中島がインゴールに躍り込んだ。各選手の卓越した個人技が凝縮されたトライだった。
7-7の同点とした神戸製鋼は、11分にもFW陣のつなぎでLOブロディ・レタリックが抜け出し、サポートしたWTB山下楽平、パーカーがつなぎ、最後はNO8ナエアタ ルイがトライ。パーカーのゴールも決まって、7-14とする。16分には、バックマンが力強く地面を蹴って加速してディフェンスラインを突破し、CTBラファエレ ティモシーがインゴールに駆け込む。やすやすとパスをつないだトライは、大差を予感させるものだった。
【ハイライト】神戸製鋼 vs. NEC|トップリーグ2021 第1節
しかし、この日のNECはけっしてあきらめなかった。前半20分、自陣10mライン付近のスクラムからFB吉廣広征がパーカーのタックルをかわして抜け出し、サモア代表NO8ジャック・ラムにボールをつなぐ。大きく攻め込んだNECはグッドがさらに前に出てディフェンスラインを下げ、最後はCTBベンハード・ヤンセヴァンレンスバーグが左中間に飛び込んだ。スコアは、12-21。26分に山下楽平のトライで、12-28と引き離されるが、31分、神戸製鋼のレタリックが足をはねあげる危険なタックルでシンビン(10分間の一時退場)になると、2トライを加え、26-28の2点差として前半を終了した。
絶対に負けられない王者は、後半の立ち上がり、攻勢に出る。ディフェンスラインを素早く押し上げ、ボール争奪戦でもファイト。3分には、右タッチライン際をナエアタが抜け出し、サポートしたWTBベン・スミスがトライ。ゴールも決まって26-35とリードを広げる。その後もミスは多かったが、23分に山下楽平、35分にナエアタがトライしてほぼ勝敗は決した。
約1年ぶりの公式戦ということもあり、終盤は両チームとも足の攣る選手が続出した。ここで意地を見せたのはNECだった。38分には共同キャプテンのFL亀井亮依、終了間際にもグッドのキックを追ったFL大石力也がトライ。7点差以内の負けに与えられるボーナス点にはわずかに届かなかったが、最後まで戦い抜いた。セットプレー(スクラム、ラインアウト)で互角に渡り合い、コンタクトでも何度も神戸製鋼の選手を弾き飛ばした。浅野良太ヘッドコーチは「FWはやろうとしていることができた」と手ごたえを口にした。
神戸製鋼の首脳陣は揃って「NECにチャレンジされてミスが出た」とコメント。準備期間は長かったが、コロナ禍で満足な試合数は組めなかった。公式戦のプレッシャーは練習試合とは比較にならない。そうした圧力の中で勝ちきったのは、良しとすべきなのだろう。マン・オブ・ザ・マッチは徳田健太。チーム加入5年目で巡ってきたリーグ戦デビューだが、正確なパスさばきを見せ、好サポートからトライを演出した。専門職のSHに計算できる選手が一人増えたことも連覇に向けて大きな収穫だろう。
文:村上 晃一
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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