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ラグビー コラム 2021年2月16日

稲垣啓太はプレーで伝える。 過去最高の仕上がりで臨む新シーズン

村上晃一ラグビーコラム by 村上 晃一
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待ちに待ったトップリーグが2月20日に開幕する。笑わない男・稲垣啓太は、ラグビーワールドカップ(RWC)日本大会で時の人となり、以降は各種メディアで活躍する。所属するパナソニック ワイルドナイツは、4シーズンぶりの優勝を目指して準備を整えている。稲垣は今どんな思いで開幕に向かうのか、トップリーガーとしてコロナ禍でできることとは何か。インタビューは意外にも花の話から始まった。

稲垣啓太選手

──最近流行のclubhouse(音声SNS)でお話されているのを聞きました。家に花を飾っているんですね。
「小さい頃からの家の習慣なんです。玄関とトイレには必ず花が飾ってあった。だから僕も花屋さんに行くし、花をいただくこともあるので、それを一輪挿しにして飾ったりしています。自分で買う時はなるべく季節の花を選んでいますね。今は、いただいた黄色い薔薇と、アンセリウムを飾っています。僕の口からアンセリウムなんて出てくると思わなかったでしょう?(笑)」

──稲垣選手は声がラジオに向いているように感じました。
「先日、clubhouseで一緒に話していたシャウラさんがMCを務めるラジオに出させていただいたことがあるんです。そのとき、『稲垣さん、ラジオをやったほうがいいですよ』と言ってもらって、試しに2人でやってみようということになりました。声、いいですか?」

──良いと思います。すごく聞き取りやすいです。
「いわゆる、イケボ(イケメンボイス)ですか(笑)。でも、僕の声は電話だと聞き取りづらいらしいです」

──さまざまなメディアに出演されていますが、RWC日本大会で有名になって、外出するときなど気を使うのではないですか。
「今は必要最低限の外出しかしていませんが、そうなると宅配を頼みますよね。そういうとき、僕は普通に玄関に出ていくので、配達員の方の『あっ!』という反応はありますね。その反応を楽しんでいる感じはあります(笑)。変装しようもない体の大きさなのですが、最近はマスクをするのが当たり前ですよね。それで隠せているかと思ったら、周りからはまったく隠せていないって言われます」

インタビュー動画

稲垣啓太選手インタビュー|ラグビー トップリーグ2021 パナソニックワイルドナイツ

──コロナ禍で筋肉量や体重などを維持するのは大変でしょう。
「トレーニング、食事、睡眠が大事だと思っています。この中でトレーニングと食事に絞れば、僕は食事7、トレーニング3くらいの比率で食事を重視しています。筋力トレーニングとは、簡単に言えば筋肉を傷めつけてその回復によって成長を促すものです。成長するためには栄養がなければいけない。だから僕は栄養に重きを置いて、日頃の食生活に気を使っています」

──食べないようにしているものはありますか。
「揚げ物は食べないです。ただ、揚げ物にも栄養素はあって、いろいろ試した結果、僕の体には合わなかったということです。食事については個人差があるので、食べ物のアレルギー検査もしました。2か月以内で食べた食材をすべて洗い出して調べると、自分に合う食材、合わない食材の数値が出てきます。0~100まで数値があって、合わない食材を疲れているときに食べると体調を崩すきっかけになることもあります。脂肪に代わりやすい食材も分かります」

──筋力測定の数値などはどうですか。
「数値的にはいまだに成長しています。トレーニングがしっかりできているということです。コロナ禍では家でトレーニングするしかない時期がありました。家だから体が鈍ってしまったという言い訳はしたくなかったので、必要な器具をかき集めました。その結果、全体練習が始まるときには、以前よりも仕上がった体で入ることができました。ここは意識の差が出るところだと思いますが、プロ選手は結果を残さなければ評価されません。自分が生き残っていくために、何をしなければいけないのかを考えると、家でやれることは山のようにあります。それをできるかぎりやったということです」

──トップリーグ開幕が迫りました。去年のパナソニックワイルドナイツとの変化はありますか。
「チームとしての変化は、みんな、よく喋るようになりました。こんなに喋る選手だったかな、と思うことがよくあります。最初は久しぶりにみんなで集まって嬉しかったのかもしれませんが、落ち着いた後も、話す能力、タイミング、量が向上し、コミュニケーションの質が高くなっているのは間違いないです。これは新人、若手選手も含めてのことです。大西樹(流経大卒、3年目)なんて、どこにいても喋っていますね。メンタルの強い選手があれだけ喋ってくれるとチームとしては心強いです」

稲垣啓太選手

──今季の目標はもちろん優勝だと思いますが。
「タイトルを獲る能力はあると思います。ただ、タイトルを獲れるかどうかのぎりぎりの差というのは、僕はプレーのディテールだと思っています。2017年度のトップリーグの決勝(2018年1月13日)でサントリーに8-12で負けたのですが、試合終了直前に逆転のトライチャンスがあり、ラインアウトからモールを組んだのにボールを落とした。普通はありえないことです。そのミスを解説すると、デヴィッド・ポーコックが負傷退場し、交代の選手が入ったのですが、あのラインアウトは一人少ない状態で始めてしまったんです。だから、モールを作ったときに、ボールをキャッチした選手からボールを受け取って確保する選手がいなかった。普通はあり得ないことが極限状態で起きてしまった」

──直後にノーサイドになりましたね。
「あの1プレーが優勝と準優勝を分けました。僕がもし外からあの試合を見ていれば、準優勝でも頑張ったじゃないかと思います。でも、実際に自分がプレーしていると、オリンピックの銀メダリストが、金メダルが欲しかったと言う意味が分かります。僕もいろいろな経験をしてきましたが、(優勝するために)ディテールの部分はまだ甘いと思います。なぜなら実戦から遠ざかっているからです。のびしろはあると思うので、そこに期待しています」

──稲垣選手自身はどういうところを伸ばしたいですか。
「セットプレーですね。スクラムにもう一度焦点を当てようと思って、改めてスクラムを理論的に紐解いてみました。スクラムの構造をもう一度見直して、力のかけ具合を、どの角度まで変えていくのか。いろんなシチュエーションでどの程度までアプローチしていくのかを、アジャストしてきました。今季はまた違ったスクラムを組むことができるかなと思っています。まだ内輪で組んでいるだけなので、いろんなチームを戦うなかでスクラムにどんな変化があるか楽しみにしています」

──対戦が楽しみなチームはありますか。
「どのチームというのはないです。目の前の試合に対して準備し、それが結果をとして出て、また次の試合の準備をする。その繰り返しの先に優勝という文字が見えてくると思います。先を見すぎないということが大事だと思います」

──本来は1月16日の開幕だったものが、急きょ1カ月あまり伸びました。選手としては、どんな気持ちになるものですか。
「正直に言うと、白けるなぁという感じでした。ファンの皆さんもそうだったと思います。ただ、そのマインドをすぐに切り替えられるかどうか、ですよね。誰も悪くないし、自分にコントロールできないことにフラストレーションをためても仕方がない。次に自分たちが力を発揮する場所が必ず来るから、そのための準備を繰り返すしかない。その切り替えができるかどうかだけです。選手より、ファンの皆さんのほうが、切り替えが難しいのではないですか。お金を払ってチケットを買ってくださっていたわけですから」

──楽しみにしていた試合がなくなるのは、辛いですよね。
「だからこそ、我々選手が次のステージで、これまで以上にみなさんに何かを感じてもらえるような試合をしなくてはいけないと思います。皆さんと一緒に、良いコンペティションを作り上げていきたいですね」

──コロナ禍での開幕で、トップリーグが発信できることは何だと思いますか。
「トップリーグが、という大それたことは言えませんが、一選手として、ラグビーはメッセージを何か発信できるのではないかと思っています。僕が伝えたいメッセージをファンの皆さんがどう受け取るかは自由ですし、どう伝わるかは分かりませんが、何かしら感じてくれたらいいなと思います。最大限に感染予防をして、コンペティションをやり切る。自分にできることをやり続ければ、こうしてスポーツを続けることができるし、スポーツ以外にも言えることが伝わればいいですね。みんな、今できることをやるしかないですよ。コロナ禍でも生きて行かなきゃいけないんです。今できることは何なのかという部分を皆さんに感じてもらえたら、選手として嬉しいです」

稲垣啓太選手

一つ一つの質問に対してさまざまな角度から語るトーク術はいつも感心させられる。しかし、稲垣は、ラグビーをプレーし、それを見てもらうことでメッセージを伝えようとしている。今後のCMやメディア出演への期待感を伝えると、「どこに出てもラグビー選手ですから、どんな形でもラグビーを盛り上げていきたいですね」という言葉が返ってきた。パナソニック ワイルドナイツは開幕節(2月20日)、秩父宮ラグビー場でリコーブラックラムズと戦う。プロラグビープレーヤー稲垣啓太のパフォーマンスが楽しみだ。

文:村上晃一

村上晃一

村上 晃一

ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。

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