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トップリーグ優勝5回、準優勝3回を誇る東芝ブレイブルーパスを、小川高廣との共同キャプテン体制で引っ張る。激しいコンタクトプレーに加え、BK並みのランニングスキルを持ち、2009-2010シーズン以来の優勝に向けて戦う東芝FWのキーマンだ。2019年のラグビーワールドカップではメンバー入りしながら出番がなかった。今季のトップリーグで高いパフォーマンスを見せ、日本代表FW第三列のポジションを確かなものとする目標もある。その意気込みを聞いた。
徳永祥尭選手
──徳永選手は東芝に加入して6年目のシーズンです。これまでのチームと今年は何が違いますか。
「東芝で何のためにラグビーをしているのか。今年はそれを大事にしています。これまでなかったということではなく、これまで以上に東芝のカルチャーをみんな(選手)に知ってもらって、自分のチームを愛してもらっています」
──何のためにというのは、具体的にはどういうことですか。
「トッド・ブラックアダーヘッドコーチから、選手へ問いかけがありました。個人で考えてもらって、鹿児島合宿(11月30日より1週間)の中でのミーティングで選手から吸い上げました。『何のために』は個々に違うわけですが、その中でも共通するものがいくつもありました。チームをひとつの家族として、家族のために体を張る、というのは特に大事にしています」
──徳永選手は何のためにプレーしていますか。
「チームのためにプレーしています。このチームが好きだからです。一年目の選手から良い言葉を聞きました。『いろいろなチームから誘いを受けていましたが、東芝で優勝する、ということを、自信をもって言えると思って東芝に入りました』。その通りだなと感じました。僕もそういう気持ちで東芝に入ったのに、6年のうちにそういう気持ちが薄れていたところがあったかもしれない。一年目の選手からそれを聞けて嬉しかったです」
──東芝というチームの良さは、どこだと思いますか。
「仲の良さ、ハードワークできるところ、そしてFWに自信を持っているところです。僕が東芝に入ったのも、FWとしてレベルアップできると感じたからですし、ここで活躍すれば日本代表にも入れると思ったからです」
インタビュー動画
徳永祥尭選手インタビュー|ラグビー トップリーグ2021 東芝ブレイブルーパス
──トッド・ブラックアダーヘッドコーチは就任2年目です。彼は東芝にどんな影響を与えていますか。
「チームの文化を大事にしてくれています。彼はスーパーラグビーの常勝軍団クルセイダーズのヘッドコーチをしていました。ずっと勝っていたチームなのに、彼がヘッドコーチのときは勝てなかった。そのときどんなチームだったといえば『選手が代表(オールブラックス)のために活動していた。クルセイダーズのために誰一人活動していなかった。そうなったらダメなんだ』と、自分の経験を伝えてくれました。『強いチームは、自分のチームを愛しているし、仲間のために体を張れる選手が数多くいる』と言っています。彼は今、これからの東芝の基礎を作ってくれていると感じます」
──トレーニングは、短時間で強度が高いようですね。
「そうです。でも、一歩先のことを求められていると思います。短時間の代わりに、自主練習の時間をたくさん取ってくれています。選手同士で足りないことを言い合って、チーム全体をレベルアップさせることを求めていると思います。僕はそう受け取って、同じポジションの選手と集まってトレーニングするようにしています」
──ブラックアダーさんは、FW第三列の選手でしたが、アドバイスはしてくれますか。
「ジャッカルはよく教えてくれますね」
──では、ジャッカルは上達しているのですね。
「そうですね(笑)。そこは、トップリーグで見てください」
──今シーズンは、小川高廣選手との共同キャプテンです。役割分担はしているのですか。
「僕はしゃべるのが上手くないので、高さんが基本的にしゃべって、僕が気付いたことを補足しています。FWはまとめていますが、東芝はFWに(大学での)キャプテン経験者が多いんです。藤田貴大(FL/東海大)、橋本大吾(HO/筑波大)たちがリードしてくれて、ほとんど僕が言うことはないです。リーチさんもチームが上手くいっていないときに声を出してくれて、声のかけ方は勉強になります」
──リーチ マイケル選手、マット・トッド選手、藤田選手もいて、FW第三列は激戦区ですね。
「そうなんです。でも、これを望んで東芝に入ったので、みんなから良いものを吸い取ろうと必死です」
──J SPORTSの注目選手アンケートのことを聞かせてください。「ラグビー人生で一番影響を受けた人は誰ですか?」という設問で、関西学院高校ラグビー部の安藤昌宏監督とのことですね。
「何度も自分が道を外れそうになったときに戻してくれました。僕は手がかかる選手だったと思います。代表チームに選ばれるとちょっと勘違いしてしまうんです。帰ってくると安藤先生が、『お前、調子にのってるぞ』と、指摘してくれました。こんな優しい言い方ではありませんけどね(笑)、それで何度も気づかされました。関西学院が大事にする言葉が7つあるのですが、その中で自主性という言葉を大事にされていて、僕はトレーニングがあまり好きではなかったのですが、『試合に出るのならやらなければいけない。それが、(試合に出る)お前が仲間に見せるべき姿だ』と言われて、よく練習するようになりました」
──「好きな海外のチーム」はチーフスと答えています。
「東芝にはチーフスの選手がたくさん在籍していました(リアム・メッサム、リチャード・カフイなど)。いいエナジーがあって、陽気で、仲間意識が強く、熱くていいなと思いました」
──「本拠地PR」では、府中を「公園が多くて住みやすい」と書いていますね。
「府中は適度に田舎です。僕は、がやがやしたところがあまり好きではないので、少し歩けば大きな公園があって、そこで散歩できるのも気に入っているし、近くに大きな病院があって、喫茶店も多い。住むにはいいところです」
──「行ってみたい国」はトンガなのですね。
「トンガ人って、面白いじゃないですか(笑)。体も強い。あの国に、人を強くする何か(秘密が)あるんじゃないかと思うんです。裕福な国ではないですよね。人口も少ない。それなのに、あんなに強くて、(人として)面白い選手がたくさん出てくる。そこに魅力があります」
──対戦を楽しみにしているチーム、選手はいますか。
「サントリーが楽しみです。選手で楽しみなのは、パナソニックの選手たちです。仲のいい選手が多いし、やりあいたいですね」
──個人的にはどんなプレーを見せたいですか。
「ブレイクダウンの練習を重ねてきて、そこでファイトする姿を見てほしいです」
──トップリーグは今年が最後になりますね。
「最後のトップリーグは、東芝の優勝で終わりたいです。まずは一戦一戦大事に、成長していきたいと思います」
──日本代表への思いを聞かせてください。
「東芝で良いプレーをすれば、おのずと結果はついてくると思います。いいパフォーマンスを継続すれば、ジェイミー・ジョセフ日本代表ヘッドコーチも見てくれると思います。2023年のラグビーワールドカップでプレーする姿をイメージしています」
──最後にもう一度、東芝のここを見てくれ、という意気込みを聞かせてください。
「高校生や大学生が東芝のプレーを見て、こんなラグビーがしたいと思えるようなプレーがしたいです。優勝を重ねていた頃の東芝ラグビーは、モールで前に出て、FWでどんどん縦に行き、スタンディングでボールをつないだ。それを見て『東芝のラグビー、凄いね』と言われていましたよね。それをまた構築しようとしています。以前のスタイルだけではなく、ボールをスペースに運び、キックをうまく使いながら、その中で東芝らしさを見せたいと思っています」
オンライン取材の冒頭、音声が届かないなどの不具合があったのだが、徳永選手は、慌てず、騒がず、まったく動じることがなかった。落ち着いた語り口は、パフォーマンスの安定感と重なる。最後のトップリーグでの優勝を目指し、これまで以上に激しいプレーを見せてくれるだろう。
文:村上晃一
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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