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NO8佐藤健次キャプテン
いよいよ12月27日(日)から始まる100回目の「花園」こと、全国高校ラグビー大会。優勝候補の1つが、昨季、高校「3冠」を達成した桐蔭学園(神奈川)であり、今大会では連覇がかかる。
そんな桐蔭学園で「人の意見を聞けて身体が張れる」と藤原秀之監督の信頼が厚く、部員によりキャプテンに指名されたのがNO8(ナンバーエイト)佐藤健次(3年)だ。
身長177cmとFWでは決して大きい方の選手ではないが、中学時代はWTB(ウィング)だったこともあり、スピード、スキルも高く、突破力に長けた選手だ。部員が100名ほどいるチームで、1年生からレギュラーをつかみ、一昨年度の大会は花園準優勝を経験、そして前回大会では優勝に貢献した選手のひとりだ。
また、2019年8月には初めて桜のジャージーを身にまとうU17日本代表にも選出され、主将の責務も負った次世代のトップ選手。そんな佐藤主将には1年時、2年時もインタビューをしており、主将となった3年時の今大会前にも話を聞いた。
―― 今季はキャプテンとなりました。 「伝統は引き継いでいきたいですが、自分たちの代は自分たちの代なので、あまり連覇のプレッシャーは感じていません。プレーでもみんなを引っ張り、精神面でも心の支えになり、みんなが自由に動けるように働いていきたい」
―― 今季はコロナ禍で試合経験が少ない中、神奈川県予選決勝では東海大相模(関東ブロックで出場)に19-17と苦戦しました。 「まずは神奈川県で3年連続勝つことができてホッとしています。相模さんのブレイクダウンのプレッシャーもあったが、自分たちのミス、甘さで厳しい試合になった。花園に向けてもう一度修正したい」
個人としてはボールいっぱい持って、激しく身体を当て続けようと意識していました。厳しい試合ではビッグプレーが起きないことはわかっていたので、自分が小さい穴を空け続けることで、チームのアタックにつながると思っていて、それはできたが、もっとゲインメーターを増やしたり、身体の使い方を修正したりしたい」
力強い突破を見せるNO8佐藤(写真は昨年度の大会より)
―― 佐藤主将以外にもPR(プロップ)田中諒汰、LO(ロック)青木恵斗(ともに3年)もいて、今季の桐蔭学園は例年以上にFW(フォワード)が大きなチームです。少しFWにこだわったことが試合を難しくしたのでは? 「試合後もBK(バックス)の選手と話していて、9番、10番からのアタックを使いすぎていた(という反省が出た)。後半の最後の方はCTB(センター)榎本拓真、FB(フルバック)秋濱悠太(ともに3年)がいい突破していたように、早い段階でBKに振ったら、もっといいアタックができた。FWにこだわり過ぎていた」
―― 花園に向けての課題は? 「まず自分たちの強みが何なのかということが、チーム全体で共有できていなかった。ベクトルがバラバラだった。どこが全国に通用するのか理解して、自分たちのラグビーを組み立てていきたい」
―― 佐藤主将が考える桐蔭学園の強みは? 「まだ自分たちが強みを理解していないのですが……。FWが大きいことは強みですが、逆に弱みでもあると思っています。FWの大きさを活かすのか、SOのキックセンスも強みですし、CTB榎本、FB秋濱とBKに強くて速いランナーがいるのですが、まだボールを継続できていない。全員で継続ラグビーやっていきたい」
―― 花園まで、どこにフォーカスして練習したいですか? 「(昨年度までは)選抜大会やサニックスワールドユースなどの試合経験があって だいたい、この形で勝てるというのが決まってきますが、今年はそういうのがまったくない。今の桐蔭学園で自分たちがチャンピオンと思っている人はいないです。(夏合宿で)東福岡に負けていますし、『自分たちはチャレンジャー』ということを常に練習から言い合えば、細かい甘さがなくなると思う」
―― 今季の桐蔭学園の中心選手はパフォーマンスコーティネーターの手塚一志さんのトレーニングを受けていると聞きました。 「4月くらいにオンラインで始まりました。手塚さんのトレーニングで、自分は身体のキレ、動きがよくなったと思います。身体の使い方や走り方を教えてもらったり、(関節の)可動域を広くしたりしています」
花園で連覇に挑む佐藤主将
―― コロナ禍の自粛期間中はどういったことをしていましたか? 「コロナという状況は自分が何かをしても変わらない。個人としてはポジティブに考え、置かれた状況下で、自分で何ができるかを考えました。
スキル練習もやっていましたが、身体作りにフォーカスした練習メニューを作って、身体能力をアップしようとしていました。1週間でフルマラソンの42.195kmを走るようにしていました。ランニングフォームも自分で試してみたり、長い距離だけでなく、ダッシュしたりといろんな工夫をしていました。
(自粛期間中の2ヶ月は)毎日の夜、京都成章のSH(スクラムハーフ)宮尾昌典や、東福岡のCTB江口翔(ともに3年)とか、U17日本代表で一緒だったメンバーで、ZOOMを使って(オンラインで)ウェイトトレーニングもしていました。2年時より身体が大きくなり、走力も上がっていると思います。
また、例年よりもチームとして試合経験が少ないので、チームメイトとは、毎週、昨年度のキーになった試合とかをリーダー陣で決めて、自分たちに置き換えてミーティングをしていました」
―― 11月には、PR亀山昇太郎(茗渓学園)、SH細矢聖樹(國學院栃木)、SH宮尾とともに、アスリート入試で早稲田大学への合格が発表されました。 「まずは(早稲田大学のラグビーに)自分が憧れていたところがありました。 大きい選手じゃないので、自分のプレースタイルは力で吹っ飛ばすという感じではなく、(味方を活かすために)上手く走ったりすることなので、自分が活きる大学かなと思って早稲田を選びました。
また、大学でも(桐蔭学園のOBである早稲田大1年生CTB伊藤)大祐さん、SH小西(泰聖/2年)さんと一緒にプレーしたかったこともあります。
―― 高校生活最後の花園になります。 「1年生のときから、個人としてもチームとしても一番大きく成長できる場所と感じています。相手にベクトルを向けるのではなく、自分たちが何をしなくちゃいけないか考えたい。個人としては自分が行くところ、他の選手を活かすところといった周りを冷静に見る目を培っていきたい。全員でベクトルを向けて日々成長していきたい」
昨年度、桐蔭学園の優勝の瞬間
―― 花園で対戦してみたいチームは?「一番、対戦してみたいのは(東海大大阪)仰星です。中学3年時の(神奈川県スクール選抜で出場した)全国ジュニアラグビー大会の決勝で、大阪府中学校代表に負けました。仰星の主将CTB近藤翔耶、NO8倉橋歓太(ともに3年)らがいて負けたので、仰星には負けたくない。東福岡には夏に負けているので、特にこの2校と対戦してみたいですね」
―― 改めて、花園の目標は? 「桐蔭学園、初の2連覇がかかっていますが、簡単なゲームはないと思います。1試合1試合、修正しながら成長して2連覇という目標を達成したい!」
********** 花園での悔しさも喜びも知る佐藤。今大会は主将として連覇のかかったチームを引っ張っている。大事な場面で佐藤主将がボールを持って、一歩でも二歩でも前に出ることがチームの勝利につながっていくはずだ。100回の記念大会で、桐蔭学園初の連覇達成には佐藤主将のプレーがカギを握っている。
文/写真:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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