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大正11年(1922年)から続く伝統の早慶戦は、令和2年の第97回目も大学ラグビー界屈指の注目ゲームとなった。関東大学対抗戦Aは、全チームが5試合を終えて早大が全勝で首位。4勝1敗で、明大、帝京大、慶大が追っている。慶大は初戦で筑波大に敗れたが、11月1日、昨年の対抗戦王者・明大に13-12という逆転勝利をあげ、優勝争いに踏みとどまった。首位をひた走る早大にどんな戦いを挑むのか注目が集まる。
早慶戦は第二次世界大戦による中断があり、学制改革などの影響で2度日程をずらしているが、それ以外は毎年11月23日に行われている。早慶戦が始まったころ、早大のマネージャーが気象庁で雨の少ない日を調べて決めたと伝えられており、以降も早慶戦は天候には恵まれてきた。数々の名勝負の一つの要因かもしれない。対戦成績は、96勝20敗7分けで早大が勝ち越すが、昨年は17-10という僅差勝負で早大が勝つなど、近年は接戦が多い。長年の好敵手との戦いは互いの潜在能力を引き出すことがあり、事前の予想が外れることもしばしばだ。
11/1 帝京大学 vs. 早稲田大学
学生王者の早大は、シーズン前は主力に負傷者が多く、不安を抱えていた。相良南海男監督も「春、夏にゲームができていないので、いろんな組み合わせを試さないといけない」と、公式戦を戦いながらチーム作りをしていく難しさを語っていた。その中で、帝京大に45-29という快勝も含む5連勝は上出来といえるだろう。LO下川甲嗣(4年)、FL相良昌彦(2年)、CTB長田智希(3年)、FB河瀬諒介(3年)らが次々に復帰し、11月7日の筑波大戦では、本来はFBの河瀬をSOで起用。50-22の快勝に結びつけた。層を厚くしながら成長する余力のあるチームだと感じる。
11/1 明治大学 vs. 慶應義塾大学
対する慶大は、初戦で筑波大に敗れたことがチームを覚醒させた。「ものすごく良い準備ができていたのに、試合になってうまく行かないことが多くパニックになった」と栗原徹監督は言う。うまくいかないことを前提に戦った明大戦では、タッチキックのミスなどが次々に起こったが、心を乱すことなくディフェンスで粘った。相部開哉(4年)、北村裕輝(4年)の両LOの献身的なタックル、先陣を切ってビッグヒットを決めたWTB佐々木隼(2年)、何度も明大の攻撃を寸断したCTB三木亮弥(4年)らは強烈なインパクトを残した。HO原田衛(3年)はここまで9トライで対抗戦のトライ王。プレースキック、タッチキックなどを担う1年生WTB山田響は将来期待のスピードスターだ。
慶大の激しく前に出るディフェンスの中で、早大がこれまで通りに攻撃を継続できるのかは注目点。スクラム、ラインアウトなどにセットプレーも大事だし、互いの理詰めの攻撃も楽しみだが、それよりも、こぼれたボールにどちらが先に飛び込むかなど、ぎりぎりの攻防が見る者の胸を打つ戦いを期待したい。慶大が勝てば対抗戦の順位争いはさらに混とんとする。
文:村上晃一
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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