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関東大学対抗戦 慶應義塾大学(10/4)
10月1日。慶應義塾大学は筑波大学に19-30で敗れた。10月18日。明治大学は筑波を33-17で退ける。11月1日。慶應は明治から13-12の劇的勝利を収めた。
例年と異なるカレンダーで各校は春から動いた。クラブというより大学の方針により練習期間や夏合宿の有無もそれぞれ異なった。遅れてきた大学ラグビーの季節。時間はぎゅっと縮む。2週間、1週間、いや1日、2日、短い期間にチームの仕上がりや拮抗の度合いはしきりに変化した。
いつもなら、春や夏の試合の内容や結果でターゲットとの力量の差、目的までの距離を測り、焦点を絞って強化の段階をひとつずつ積み上げる。授業出席より解放された集中鍛錬に合宿で励む。
そんな強化計画はままならなかった。自校のグラウンドにいわば閉じこもり、許される範囲でチームの幹を太くしようとした。
いざ10月1日の開幕。早慶両校はいずれも「ここで勝つ」という焦点を絞り切れなかった。限られた条件にあって、まじめに練習を重ねた分、さまざまな領域に可能性は見つかり、あれもこれも試すうちに試合は進んで苦しんだり負けたりした。
あれから1カ月。早稲田には身上の「仕掛けの速さと接点の厳しさ」が戻った。慶應は伝統のタックルのみならず迷いなきキック多用の象徴する「徹底」の凄みを見せつけた。
早稲田の相良南海夫監督は開幕前にこう話していた。
「菅平での夏合宿はできず炎天下の上井草でトレーニングを続けてきた。他校との相対比較ができない。試行錯誤の機会もなかった。あるいは時間が足りないかもしれない。対抗戦ではきっといろいろなことが起こる。だからこそ、決勝のクォリティーを意識してブレずに毎日を過ごそうと」
慶應の相部開哉主将も同じころに言った。
「山中湖の夏合宿ができず、ときに(気温が)35度にもなった日吉のグラウンドできつい練習を積み重ねてきました。毎日、吐くくらいの。その厳しい条件で練習してきた自信はあります」
成果は開幕と同時には現れない。だからこそ、ここからも伸びる。
他校もまた短期の進歩は可能だ。11月1日の帝京は1カ月前の早慶とどこか似ていた。体格やパワーのもたらす縦の推進力があり、ともに伏見工業高校出身の4年、11番の尾崎泰雅と14番の木村朋也が好調で展開力にも富んでいる。均衡を保つ分、徹する迫力にやや欠けた。それは偏りのないチームをつくるに際して通る道でもある。早稲田陣の深くに侵入すれば悪くない確率でトライを奪えた。ここは実力だ。
明治の立て直しは難しくない。前へ出る慶應の防御につきあったみたいな攻撃の角度と距離の調整で多くは解決しそうだ。10番と15番をこなす4年、山沢京平はその不在により存在の大きさをあらためて対戦校とファンに教えた。切り札の負傷療養からの復帰は大切なカードとなる。
リーグ戦では東海大学と流通経済大学と日本大学が第4節までは全勝である。「公式戦を続けながらの修正力」を問われそうなのが法政大学だ。序盤で前出の3校に敗れるも、攻守は悲観するほどではない。「私たちはこれで勝負」のイメージを深くチームで共有できれば、昨年度は6位に沈んだ足踏みからの跳躍もありうる。
法政の背番号15、共同主将の根塚洸雅はいつでも、勝とうが負けようが、光を放つ。強く、うまく、リーダーらしく体を張る。芝に粘りつくようなランは執拗な突破と軽快なつなぎを両立させる。新鋭、中堅、主軸の才能は各校にひしめくが、ひとり、ここに名を挙げたくなった。凝縮のシーズンに凝視しなくては損だ。
関西大学Aリーグも11月7日にいよいよ始まる。昨年度の順位をもとに4校×2組に分かれてぶつかり、のちに順位決定戦へ進む。こちらのシーズンはさらに圧縮された。雌伏の鍛錬を信じる力や課題を強みへ導く学習能力はいっそう問われる。天理大学の単独行を阻むのはどこか。黒のジャージィに挑む者を決める戦いでもある。
藤島 大
1961年生まれ。J SPORTSラグビー解説者。都立秋川高校、早稲田大学でラグビー部に所属。都立国立高校、早稲田大学でコーチも務めた。 スポーツニッポン新聞社を経て、92年に独立。第1回からラグビーのW杯をすべて取材。 著書に『熱狂のアルカディア』(文藝春秋)、『人類のためだ。』(鉄筆)、『知と熱』『序列を超えて。』『ラグビーって、いいもんだね。』(鉄筆文庫)近著は『事実を集めて「嘘」を書く』(エクスナレッジ)など。『 ラグビーマガジン 』『just RUGBY 』などに連載。ラジオNIKKEIで毎月第一月曜に『藤島大の楕円球にみる夢』放送中。
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