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11/1 明治大学 vs. 慶應義塾大学
試合前日、栗原徹監督は「試合が楽しみで仕方ない」と話していた。「明治は横綱、慶應は小結。でも、小結が押し切ることもある。小細工なしで真っ向勝負します。強い明治と戦うことで慶應もレベルアップできる。低く突き刺さるタックルを80分間続ければ、いつかチャンスは来ると思います」。試合はその言葉通りの展開になった。
新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、観客は10月までは5,000人を上限としていたが、この日から上限は8,000人。前売りチケットは早々に売り切れ、6,975人の観客が集った。
午後2時キックオフ。立ち上がりから慶大の前に出るタックルが次々に決まる。開始2分、明大陣10mライン付近のスクラムからの攻撃で、FB小島昂(4年)に対して、WTB佐々木隼(2年)が素早く間合いを詰めてタックルし、ミスを誘う。3分、FB山田響(1年)が先制PGを決めて、3-0とリード。その後も慶大はCTB三木亮弥(4年)を筆頭に明大BKの攻撃を寸断するタックルを連発し、FWの縦突進に対しても相部開哉キャプテン(4年)、北村裕輝(4年)の両LOを筆頭に低く前に出るタックルを決め続けた。
しかし、先にトライをとったのは明大だった。前半12分、慶大SO中楠一期(2年)が蹴り上げたハイパントを明大がキャッチできず、慶大が攻め込む。左タッチライン際の佐々木に中楠がロングパスを送ったところを、明大SO齊藤誉哉(2年)がインターセプトし、相手陣へボールを蹴り込む。反応良く追いかけたFL福田陸人(3年)がさらにこれを蹴り、インゴールで齊藤が押さえた。齊藤がゴールも決めて、3-7と逆転する。
以降は互いに好タックルを決め、タックルで倒れた選手からボールを奪うジャッカル合戦。明大SH飯沼蓮(3年)がピンチを救えば、慶大PR大山祥平(4年)が明大の大黒柱・箸本龍雅キャプテン(4年)のボールを奪う。逆転劇の伏線は、前半、山田響がPKからのタッチキックを2度ミスし、インゴールへ蹴り込んでしまったことだ。一度目は笑顔を見せた山田も二度目は頭を抱えた。両方とも明大ゴールラインに間近の位置でラインアウトを得るものだっただけに、蹴った位置で明大のスクラムになるミスはチャレンジャーの慶大には痛恨だった。
【ハイライト】明治大学 vs.慶應義塾大学|ラグビー 関東大学対抗戦2020
「開幕戦で筑波に負けたことで、練習でできたことが試合では上手く行かないのが当たり前だという気持ちで取り組めた」(栗原監督)。慶大はミスが起きてもひたすら低く刺さる決め、キックで相手陣に入る作戦を繰り返した。後半6分、山田のPGが外れても、それは変わらない。17分にはラインアウトからのモールからHO原田衛(3年)がトライを奪い、ついに逆転する(10-7)。なおも攻め込む慶大だが、ここは明大の箸本が連続してジャッカルを決めて立ちはだかる。
慶大のタックルに苦しんでいた明大は2つ目のトライをあげたのは、後半32分のことだった。明大陣10mライン付近のスクラムから左オープンに展開し、サインプレーから交代出場の齊藤大朗(4年)がディフェンスを突破、最後はこちらも交代出場のWTB高比良隼輝(3年)がインゴールへ走り込み、SO齊藤のゴールも決まって、10-12と逆転。ようやく攻勢に出た明大だが、後半37分、慶大でラインオフサイドの反則を犯し、自陣に攻め込まれる。
慶大の攻めをしのぐ明大だが、終了間際、ブレイクダウン(ボール争奪局面)に激しくプレッシャーをかけようとしたところで相手側に倒れ込む反則を犯してしまう。22mラインのやや外側、右中間の位置から山田響がPGを狙う。残り時間はなく、勝敗の帰趨は山田の左足に託された。この日、タッチキックをミスし、後半6分のPGもミスしていた山田だが、相部キャプテンは「彼が一番上手いからキッカーなんです」と揺るがぬ信頼でキックを任せた。これを山田が思い切りよく蹴り込んで成功。直後にノーサイドの笛が鳴る。対照的な両者の表情が印象に残るドラマチックな幕切れだった。
勝った栗原監督は「タックルも素晴らしかったのですが、組織ディフェンスが向上した印象があります」とコメント。相部キャプテンは「フォーカスしていたのはプレシャーをかけてスペースと時間を奪うことです。そして明大はワイドに展開してくるので、スペーシング(防御網の間隔を保つこと)をしっかりして攻撃をシャットアウトすることでした」と冷静に振り返った。
敗れた明大は相手陣に入る戦略もうまく行かず、攻撃に変化をつけることもできず、ブレイクダウンでも圧力を受けた。試合運びに課題は多いが、田中澄憲監督は前向きに語った。「慶應からこの一戦にかける思い、明治に勝つという準備を学ばせてもらいました。我々は若いチームなので、この敗戦を次につなげられるように成長していきたいです」
文:村上晃一
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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