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関東大学対抗戦A 早稲田大学 vs. 青山学院大学
関東大学対抗戦Aは、10月4日(日)、秩父宮ラグビー場で開幕。第2試合に登場した学生王者・早大は青学大の気迫あふれるタックルに苦しみ、後半18分の時点で5点差に迫られる苦しい戦いになった。
コロナ禍での入場制限もあるなか、観客は4,260人。午後2時、三井健太レフリーのホイッスルで試合は始まった。開始3分、早大はラインアウトからのサインプレーでSO吉村紘のタイミングの良いパスを受けたWTB古賀由教が抜け出し、サポートしたFL田中智幸がトライ。吉村がゴールを決めて7-0と先制する。しかし、これ以降は、青学大の激しく前に出るプレッシャーにミス、反則を連発。「一人では止められないのでダブルタックル、2人目の寄りを早くすることを心掛けた」(青学大・大友孝芳監督)という言葉通り、早大の突破役の選手に対し、SO桑田宗一郎、FL中谷玲於のダブルタックルなどで押し返し、早大の連続攻撃を寸断した。
早大の2つ目のトライは前半27分だった。青学大ゴール前の密集からPR小林賢太がインゴール左中間に体をねじ込んだ。直後、自陣22mライン内から攻めた早大は、吉村のフラットなパスに小林が走り込んでディフェンスラインを破ると、一気に相手陣まで突進。SH小西泰聖がつないで、最後は古賀がインゴールに駆け込んだ。スコアは、19-0。昨年の対戦では、92-0で早大が勝っている。青学大の健闘もここまでかと思われたが、この日の青学大は昨年とはまったく違った。
ディフェンスで粘り、35分、WTB衣笠竜世が早大SH小西のパスをインターセプトして約80mを走り切る。このトライは、早大から3シーズンぶりの得点だった。前半終了間際には、正確なプレースキッカーであるSO桑田のPGで、19-10として前半を終了。後半開始早々には、青学大BKのキーマンであるCTB河部周次がディフェンスを突破し、早大のハイタックルを誘う。桑田がこのPGを決めて、19-13と迫った。後半8分、早大FB南徹哉のカウンターアタックでディフェンスを破られ、WTB槇瑛人にトライを奪われたが、それでも青学大はあきらめずにディフェンスで前に出続けた。
ラグビー 関東大学対抗戦2020
【ハイライト】早稲田大学 vs. 青山学院大学
12分には早大のミスをついて、FL肘井洲大がゴールに迫り、桑田がトライをあげる。スコアは26-18。後半18分には桑田のPGで、26-21とついに5点差まで詰め寄った。気迫あふれる青学大のチャレンジは、身長169cmの肘井、168cmの中谷という小さなFLコンビ、SO桑田、CTB西野らが中心で、その体を張ったプレーは、久しぶりに生観戦したラグビーファンの心を確実につかんでいた。
しかし、青学大の奮闘もここまで。早大は21分に吉村がトライして、33-21とすると、34分には、交代出場のWTB今駒有喜がトライして40-21と突き放した。今駒は、1987年度に日本選手権を制した早大日本一メンバー今駒憲二さんを父に持つ。一昨年、82シーズンぶりに全国高校大会出場果たした早稲田実業高校ラグビー部のメンバーでもあった。後半35分に入替えで退出したSH小西に代わってSHでもプレーした。この日、早実OBが5名プレーしたが、後半22分、途中出場で初めての公式戦出場を果たしたPR大平純造は、高校時代のFW第三列から大学で第一列に転向し、卒業を一年ずらしてまで赤黒ジャージーを追いかけた熱血漢。5年をかけて悲願を成就させた。今後も楽しみな選手だ。
最終スコアは、47-21。マンオブザマッチは、早大SO吉村紘。一人で17得点をあげ、正確でタイミングのいいパスでトライを導いた。相良南海男監督は課題が多かったことは認めつつこう語った。「失点はディフェンス組織が崩されたものではなかった。むしろ、PGで多く失点したように規律の乱れ。ブレイクダウン周りの反則を多くとられていた」。丸尾崇真キャプテンは「(タックル後の局面で)2人目が青学大のほうが早く仕掛けていた。分かってはいましたが修正できませんでした」と話したが、「今日の試合の良いところ、悪いところを踏まえて来週の試合に生かしたい」と前を向いた。
最終的に早大の快勝ではあったが、むしろ評価を高めたのは青学大かもしれない。その熱い戦いぶりは、ラグビー観戦の楽しさを呼び覚ましてくれるようでもあった。
文:村上晃一
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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